【写真詩】 追憶の夏
富良野の夏
かすみに浮遊する
曖昧な浮雲 まだら雲
大地の優しさが
零れた時を連れてくる

時のはじまり
狭霧(さぎり)の空の彼方から
彷徨う望みをつれて
こころゆらめく かすみの光
目覚める大地
夜明に染まっていく丘
燃える空から始まる
命の息のよみがえり
丘に差す光と影
山並の霞が影を溶かして
静かに変わり始める
いえぬ傷跡 優しく包んで
夢の渇きをいやしてくれる
光彩によみがえる
遠くに消えた面影
*たそがれ老人のつぶやき*
狭霧立つ 富良野の丘の あけぼのに かすむ光は 夢をよみがえ
山並みの 霞ぞ溶かす 闇の影 癒えぬ傷をも やさしく包みて
二万九千 六百六十五日の 夏重ね 悔いを抱きて 光探さむ
いつの日か 自然に還る この身にて 朱(あけ)の空ゆく 希望(ひかり)を追わむ
私の夏の残像、消えない古いメモリー、走り出した夏に追いつけなくて、霞む記憶が熱い風に追い越されていく。
くたびれた幸せ背負い、古びれた幸せかばって、夏の風に流されていく。
意味のない悲しみぶら下げて、生きる理由探す81回目の夏。
いつものようで、いつもと違う風景、見えなくなった光を探す81才の夏。
長く短い、静かな暑い夏、歩いた日々は29665日。
全部わかっているはずなのに、やり残したことばかりを悔やむ夏たち。
遠い記憶の写真の中に、胸の奥に閉じ込めてた想い、消えそうに美しい、朱色の溶けた光のうすごろも(薄衣)、甘い夢を連れて、せめぎ合う光。
幻想の朝もやの中を漂流する甘い夢。こころゆらめくこの夏の声に共鳴している。
未来がしずかに呼吸を始める、風を感じたらそれは命の音を運んでくる。
静かに動き始めた時、目覚めを待っていたのは空をたゆたう(揺蕩)、哀しい過去と、侘しい現実。
大地の息吹で、自然の中に生かされている、いつかは自然に差し出すこの命。
夜明けに染まっていく、大地の細小波(いさらなみ)の時の流を受け止めて、
光彩によみがえる。
遠く消えた希望を探しに。

