萩旅と、小さなコンポート
今、ひそかに始まっていることがある。
思い返せば、
この旅行もその伏線だったのかもしれない。
「伏線回収」なんて、物語の中の話だと
思っていたけれど、
案外、日常にも起こりうる。
何がどこにつながるかなんて、
誰にもわからない。
パリに行く前に、
友人と高校時代の修学旅行の
ふりかえり旅をした。
行先は、山口県萩市。
当時のレンタサイクル回りから、
大人旅行はレンタカーにグレードアップ。
私たちが訪れたときは、
ちょうど萩焼まつりが開催されていて、
天気も良くてとても賑わっていた。
萩焼巡りをするにあたり、
友人は欲しいものを予め明確に思い描いていた。
こんな形の、この用途で使用するお皿が欲しい、と。
私の方はぼんやりと、お茶碗か湯飲みかその他かと
持ち前の優柔不断さを存分に発揮しながら
何度かお店や商店街を回った。
見て回るうちに友人は品を決め、
お店に戻り購入した。
私は決めきることができず、行きつ戻りつして、
ようやくこれだと決めたときには、
その品は売り切れましたと言われてしまった。
大切なことを決めるときは、
悔いがないように、間違えないように、
うまくいくように、吟味して熟考して決める。
癖なのかもしれない。
それでもうまくいかないことは多々ある。
今回のように。
「縁がなかっただけ」そう言われれば、
その通りだと思う。
でもつい、
自分の上手くいかなさ加減ばかり
数えてしまう。
買おうと決めた器とは
縁がなかったが、
別の出会いがあった。
それは運よく私を待ってくれていた。
悩んだけれど、あまりない形だったのと、
静謐な土を思わせるような
色合いが気に入って
購入した。
手にしっくりとなじむこの器を、
オブジェのように
そのまま部屋に飾ってみた。
これがなぜだか驚くほど私の部屋に
しっくりと馴染んでいて、
とてもいい存在になっている。
これを見るたびに、
萩の旅を思い出す。
またその向こうの修学旅行と、
ずっと寄り添ってくれた
友人のことも。
悩んだ末の答えを完遂できなくとも、
その次に見つけた別の答えが、
すうっと、
自分の心を救ってくれることがある。
そしてその体験は、
いつか自分の背中を押す
ちいさな手助けになるんだと
そっと自分に
言い聞かせたりしている。
思い出を紡ぐ陶器。
それが今、ひそかに始まっていることと
ほんの少しだけ、
繋がっているのかもしれない。
人生って不思議だ。
でもそれが本当に動き出すのは、
もう少し先のお話。
