美しい寄り道
昨日、日経でLINEヤフー川邊さんの記事を読んだ。従業員ゼロでひとり起業する、という話だった。とても面白い実験だし尊敬する。
https://x.com/nikkei_business/status/2051755129985204424?s=46
1人の人間の後ろに何百ものAI社員がいる。ビジネスアイデアさえ思いつけば、あとは全部AI社員でやっていけるかどうか、の興味津々の実験だ。
人間よりもむしろ効率的なのではないか、とか、やるからには、誰にも頼らずに1人でやりきる、という内容が書かれていて、非常に興味深い。
戦国武将とビジネスマンの共通点
最近、大河ドラマの豊臣兄弟を見ている影響なのか、ビジネスマンって戦国武将みたいだと思うことが多くなった。
様々な既存ルールの中で、カドを立てずに上手くくぐり抜け、壊しながら、生きるために戦略を練り続け、家来や家臣がついてきて、自分は大将としてディレクションしていく。
戦国武将って、家来が限りなくたくさんいる。
「あの城を獲る」とか「あの武将を討ち落とす」などと決め、どうすると大義名分が立つか、どうしたら家来たちのモチベーションが上がるか、戦況や軍勢を見極め作戦を練り、見守る。
現場では、家来たちが全部やる。武器を揃え、食料を確保し、攻め込むのも、刀を抜き、戦うのも、時には逃げ、全部家来が判断して現場は進んでいく。
これは、これからの人間とAIの関係そのものじゃないか。そういった意味で川邊さんの未来の戦国武将としての振る舞いや行動に注目したいと思う。
千利休とは何だったのか。
話は少し変わるが、戦国の世の中で、個人的に好きな人物がいる。
千利休だ。
利休は織田信長や豊臣秀吉に仕えていたけど、家来じゃないし、誰のものでもない。
やってたのは、茶室に武将が訪れ、お茶を点てて、武将に飲ませること。これだけなのに、武将はみんな利休のところに通った。なぜだろう、と思う。
ひとつには、家来をたくさん持ってる武将ほど、孤独だったからではないか。一昔前で言えば、社長が銀座のママの店に足繁く通うのに似ている。
大将は、勝った時の喜びも、苦しい戦況も、家来とはまるまるは分かち合えない。それどころか、権力が高まるほど周囲はイエスマンだらけ。逆らったら未来はない。意見を言う方が無茶という状況だっただろう。
だから織田信長や豊臣秀吉ほどの武将でも、利休に会うために刀を外して、頭を下げて、躙口(にじりぐち)と呼ばれる小さい入口をくぐって、たった二畳の中に入っていったのではないか。
きっとフラットに話を聞いてくれて、武装解除できるホッとする唯一の場所だったのではないだろうか。
AI全盛期にも、千利休や茶室が必要になる。
先日、AI全盛時代に新しく生まれる職業をAIに100個、書き出してもらった。
ClaudeにもGeminiにも同じお題を出したから、合わせて200。
例えば、ひたすら黙って話を聞き続ける黙談家、デジタルディバイスや情報をシャットアウトするデジタルデトックスプランナー、失敗できない世の中になるから、あえて失敗の体験をさせてくれる失敗体験プランナーなどなど。なかなか面白いので、自分でGeminiやチャッピーなどに聞いて試してほしい。
その200の中から10個に絞り、さらに絞った時にピンときた職業があった。いちばん惹かれたのがこれ。
寄り道プランナー
最短距離でなんでも到達できる世の中、ビジネス、旅行、日常のなかで、わざと遠回りをさせる人。
どうでしょうか。
たしかに、AIが普及すればするほど、人生から寄り道が消えるだろう。
Googleマップは最短ルートを教えてくれる。Amazonは買うべきものを推薦してくれる。AIエージェントはスケジュールを最適化してくれる。
ありがたい。便利。文句は言えない。
でも、自分の人生で、いちばん印象に残ること、覚えてることって、なんだろうなあ、と。
最短ルートを完璧に通った日のこと、じゃない気がする。テクニックと呼ばれるものは、人生の喜びと最も遠い気がする。
迷子になって再び親に会えた日のこと。
ドリフの髭ダンスを真似したら幼稚園で友達がめちゃくちゃ増えたこと。
初めてできた彼女とのデートが土砂降りの雨で散々だったけど、逃げ込んだお好み焼きやがめちゃくちゃ暖かくて美味しかったこと。
野球の遠征で、帰り道に寄ったかき氷屋のこと。
たまたま訪れたロケ地が気に入って、そこに住むことになったこと。
人生の嬉しい場面は、たしかに寄り道の中にありがちかもなぁと。たまたま、偶然、行き当たりばったりでそれなりにやって来れたし、寄り道からはじまる知識や経験がたくさんあった。
だからAI時代には、より面白い、より美しい寄り道に価値が生まれると思う。目的地に真っ直ぐいくのもいいけど、それはあまりにAI的な生活になりすぎる。仕事すぎる。窮屈だ。
たくさん楽しい寄り道をしながら、モノの見方を広げて、余裕を持ち合わせながら生活や仕事をすることが大切になるし、主流になるだろう。
ちなみに僕の理想は、週休4日の世の中だ。
AIが家来になる日
AIが普及するの、僕はけっこうワクワクしてる。
AIが家来をやってくれるなら、人間はもっと面白いこと、つまり寄り道に時間を使えるようになるからだ。
提案書をまとめる時間、議事録を書く時間、画像を生成する時間。
これが全部AIに移れば、人間に残るのは、雑談する時間、お茶を飲む時間、海に行く時間、山に行く時間、焚き火を見る時間にまわせる。寄り道する時間だ。
これって、人類史の中でも、めちゃくちゃ豊かになる時代になるのではないか。と思う。
戦国武将には、家来と利休がいた。
AI全盛期のビジネスマンには、AIと、寄り道プランナーがいる。
人間は、ブルシットジョブから解放され、おもしろい寄り道を作り続けるだろう。友達と寄り道するのも楽しいし、ひとりで寄り道するのもいいだろう。
寄り道は、おそらくどこまで行ってもAIには絶対にできない。人間だけの特権なのだ。
では、みなさん、くれぐれも良い寄り道を。
(おしまい)
