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柴犬も飼い主もぶっきらぼう--背中に小さな花束

街を歩いていたら、犬を連れた中年の男性とすれ違った。
見ればなんとも愛らしい顔をしている犬だ。思わず私は飼い主のおじさんに声をかけた。

「かわいいワンちゃんですね。秋田犬ですか?」

犬種に明るくない私の、やや見当違いなひと言に、飼い主さんはほとんど表情を変えない。
よく見ると、どうやら柴犬らしい。

「……シバちゃんですか?」

すると、今度は私の顔を見ないまま、ひと言だけ。

「そう。」

実に簡潔。
けれど、ここで引き下がらず、勇気を出して一言。

「写真、撮ってもいいですか?」

「いいよ。」

相変わらず、そっけない。
でも、ちゃんとOKしてくれるあたり、ぶっきらぼうな中にやさしさがある。

そこで一枚。
……ところが主役のワンちゃん、すっと顔をそむける。

飼い主さんは、ワンちゃんの顔をこちらに向けようとしてくれる。
パシャ。
それでもやっぱり、こちらは向いてくれない。

もう少し、と飼い主さんがそっと顔をこちらへ。
そのとき、ハーネスの背中に、かわいらしい花束のアクセサリーがついているのが見えた。

「女の子ですか?」

「そう。」

やはり返事は短い。
けれど、その「そう」の中に、どこか誇らしさのようなものが混じっている気がした。

もう一枚、パシャ。
撮れたのは、なんとも正直な「もう勘弁してね」とでも言いたげな表情だった。

にぎやかな交流、とは言えなかった。
写真撮影会としても、たぶん成功していない。
でも、短いやりとりの中で、ひとつだけよく伝わってきたものがある。

この飼い主さんは、この子をとても大切にしていること。
そしてこの子もまた、少し迷惑そうな顔をしながら、ちゃんと飼い主さんを信頼していること。

愛情というのは、いつも笑顔や愛想のよさで表れるとは限らない。

無口な「そう」の中にも、顔をそむけるしぐさの中にも、長く一緒にいる者どうしの空気がにじんでいる。

別れ際に私は「ありがとうございました」と頭を下げた。
けれど心の中では、もうひとつ、そっとつぶやいていた。
「お散歩の途中に邪魔して、ごめんなさいね。」

こんな少し不器用で、でもどこかあたたかい出会いだった。

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