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『脳温』 測ってみた。脳温リズムと死亡率

📖 文献情報 と 抄録和訳

ヒトの脳の1日の温度リズムは、脳損傷後の生存率を予測する

📕Rzechorzek, Nina M., et al. "A daily temperature rhythm in the human brain predicts survival after brain injury." Brain 145.6 (2022): 2031-2048. https://doi.org/10.1093/brain/awab466
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[背景・目的] 患者は、「正常な」脳温を達成するために介入を受ける。神経細胞の機能は温度に対して非常に敏感であるため、脳は等温であるべきであるが、患者や霊長類からの観察から、時空間的に大きな変動があることが示唆されている。我々は、健常成人の脳温がどの程度変化しているかを明らかにすることで、患者における脳温の臨床的妥当性を判断することを目的とした。

[方法] Collaborative European NeuroTrauma Effectiveness Research in Traumatic Brain Injury (CENTER-TBI) High Resolution Intensive Care Unit Sub-Studyに採用された全患者のデータをレトロスペクティブにスクリーニングした。脳温の直接測定が行われ,標的体温管理が行われていない患者のみを対象とした.患者の解析を解釈するために、40人の健康な成人(男性20人、女性20人、20~40歳)を前向きに募集し、磁気共鳴分光法を用いた脳温測定を実施した。参加者は、1日の午前、午後、深夜にスキャンされた。

✅ 脳温の測定方法
■ 外傷性脳損傷患者

・脳から直接収集されたデータ(後方視的)
・スクリーニングされた 134 人の適格な患者のうち 109 人で構成
・集中治療室に直接入院するか、または腫瘤性病変に対する外科的介入の後に入院
・バリ穴(Integra Neurosciences)を介して配置された専用のボルトを介して脳実質に挿入された計測器を介して脳温を直接測定
■ 健常者
・MRIからの計算式を用いて推測されたデータ(前向き募集)
・スキャンのために40人の適格な参加者(女性20人)を募集
・仕組みは本文参照(難解・・・)

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[結果]
■ 脳温には概日リズムがある
患者(n = 114)の脳温は32.6〜42.3℃で、平均脳温(38.5±0.8℃)は体温(37.5±0.5℃、P < 0.0001)を上回った。脳温リズム解析の対象となった100名の患者のうち、25名が日内リズムを示し、高齢者では脳温の幅が小さくなった(P = 0.018)。

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■ 部位別、時間帯別の脳温
健康な被験者の脳温は36.1〜40.9℃で、平均脳温(38.5±0.4℃)は口腔温(36.0±0.5℃)を超え、卵胞期の女性および男性に比べ黄体期の女性で0.36℃高かった(それぞれP = 0.0006およびP < 0.0001)。脳温は年齢とともに上昇し、特に脳の深部領域で顕著であった(20年間で0.6℃、P = 0.0002)。また、視床で最も温度が高く、2.41±0.46℃の空間的なばらつきがみられた。脳温は時間帯によって変化し、特に深部領域で0.86℃、P = 0.0001)、夜間に最も低くなった。

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■ 脳温リズムと外傷性脳損傷者の死亡率
健康なデータから、我々はHEATWAVE-ヒトの脳温の4Dマップ-を構築した。HEATWAVEの臨床的妥当性を患者さんで検証したところ、毎日の脳温リズムがない場合、集中治療室での死亡確率が21倍高くなることがわかりました(P = 0.016)。しかし、平均脳温が高いほど生存率が高く(P = 0.035)、10歳以上老化すると死亡の確率が11倍高くなる(P = 0.0002)ことがわかった。

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[結論] ヒトの脳温は、年齢、性別、月経周期、脳部位、時間帯によって、これまで考えられていたよりも高く、かつ大きく変動していることがわかった。このことは、体温のモニタリングと管理にとって大きな意味を持ち、毎日の脳温のリズムは、脳損傷後の生存の最も強い単一の予測因子の一つとして浮上している。我々は、絶対的な脳温ではなく、日々のリズミカルな脳温変動が、ヒトの脳生理学と病態生理学を区別する一つの方法であると結論づけた。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

この研究のインパクト、やばいと感じた。
脳の回復や死が脳温の変化によって違う、というのはとても直接的に近いモニタリング方法だと思ったし、MRIで推測可能な方法を考案していることから、非侵襲的な方法で誰でも計測可能な数値となった。
リハ視点から、大きく2つの応用可能性があるように感じた。

■ 死亡だけでなくてリハ効果に影響がありそう
・例えば、脳血流量やfMRIによる脳活動度が脳卒中後の機能回復と関係するように、脳温の高低やリズム状態が機能回復と関係する仮説が立つ
・通常の臨床で撮影されるMRIから自動算出されるようなアルゴリズムを組んでおけば、予後予測の重要なバイオマーカの1つになりうる

■ 脳温はなんだか介入しやすそう
・馬鹿なことを言うが、アイスノン(氷枕)で脳温は下がるだろうか
・そこでコントロールが可能なら、例えば脳損傷後の脳温リズムを人工的に作り出したら、どうなるのだろう(さながら心臓マッサージのような感じで)
・それにより脳損傷後の死亡率に変化が及んだり、リハ効果に変化が及ぶなら超重大事項だ!

頭を冷やし、足元を温める「頭寒足熱」。
足はとかく冷えがちなので、温める、頭は熱くなりやすいので冷やした方がいい。
今回の研究は、我々に問うている。
「果たして、そうだろうか・・・?」
大事なことは、ただ冷やす一辺倒ではなく、リズムを作ることかもしれない。

下り坂に向かう兆しは最盛期に現れ、
新しいものの胎動は衰退の極に生じる。

洪自誠『菜根譚』

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