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芸術の威力。認知症と介護者への効果


📖 文献情報 と 抄録和訳

認知症の人とその介護者のための芸術・文化に基づく介入に関する系統的レビュー

📕Letrondo, Pilar A., et al. "Systematic review of arts and culture-based interventions for people living with dementia and their caregivers." Ageing Research Reviews (2022): 101793. https://doi.org/10.1016/j.arr.2022.101793
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🔑 Key points
🔹34件の研究のうち30件が幸福度の改善を報告した。
🔹17の研究では、博物館やギャラリーを訪問していた。
🔹中等度から重度の認知症患者を対象とした研究は1件のみだった

[背景・目的] 認知症の人とその介護者に対する芸術・文化的介入が、認知症の人の幸福感や認知力、介護者の負担に与える影響を調査した研究を調査し、まとめることである。

[方法] 5つの電子データベース(PubMed, PsychINFO, Embase, CINAHL, Cochrane Library)を用いて系統的な検索を実施した。質的・量的研究を含め、査読付き学術誌に掲載された原著論文を対象とした。コクラン共同計画のRisk of Biasツールを用いて、収録された研究の質を評価した。収録されたすべての研究に対して、ナラティブシンセシスが実施された。

[結果] スクリーニングされた4827件の論文のうち、34件が組み入れ基準を満たした。34の研究すべてが、5つの主要な介入タイプに分類された。

✅ 芸術介入の5つの介入タイプ
①アート制作活動を伴う美術館・博物館での介入(n = 9)
・この介入は、美術館・博物館において芸術を制作することを指す
・美術館やギャラリーの教育者またはコミュニティのアーティストによって行われた
・2つの研究では、これらのファシリテーターは介入前に認知症意識トレーニングを受けていた
②他の活動を伴う美術館・博物館での介入(n = 8)
・この介入は、芸術を鑑賞したりディスカッションしたりすることを指す
・4つの研究は、鑑賞した美術品や工芸品についてのディスカッションを伴う博物館やギャラリーの訪問を含んでいた
・2つの研究は、博物館訪問の一部として没入型回想療法を、そして物語を語る活動と美術館訪問をそれぞれ含んでいた
③アート制作への介入(n = 6)
・この介入は、美術館・博物館以外の場所において芸術を制作することを指す
・アーティストのファシリテーターは、介入前に認知症に関する研修を受けた
・認知症デイケア施設、認知症の人のための長期介護施設、大学の芸術学部、ヘルシー・エイジング・カフェなどで行われた
④音楽に基づく介入(n = 4)
・この介入は、音楽を通じたさまざまな介入を指す
・3つの研究は歌を評価し、もう1つは動きを伴う音楽を評価した
・経験豊富な音楽家によって提供され、1つの研究は音楽療法士によって実施された
⑤4つのカテゴリーに当てはまらないその他の介入(n = 7)
・上記①〜④以外の芸術に関わる介入を指す
・遺産見学とプログラム、遺産に基づく活動、パフォーマンスアート、ドラマチックなパフォーマンスの鑑賞、様々なタイプのパフォーマンスの鑑賞、演劇活動、創造的なストーリーテリングの活動
・訓練を受けたファシリテーター、プロの俳優やアーティスト、研究者による配信などによる提供

5つのRCTがウェルビーイングの成果の改善を示したが、音楽介入におけるいくつかの下位尺度を除いて認知の改善は見られなかった。非ランダム化研究のほとんどは、認知症の人とその介護者の認知機能の改善とウェルビーイングの改善を報告している。研究対象は主に軽度から中等度の認知症の人であった。

[結論] 芸術文化への介入は、認知症の人とその介護者に利益をもたらす可能性がある。しかし、介入方法と結果の測定方法の異質性により、結果の一般化が妨げられた。認知症の人とその介護者のための芸術・文化的介入に関するさらなる研究は、より大規模な対照試験、標準化された結果指標を利用し、中等度から重度の認知症の人を含めるべきである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

まず、以下の文章を読んでもらいたい(※この本、珠玉です。一読あれ)。

人生の意味は三つの主要な方向で実現されることができます。
人生を意味のあるものにできるのは、第一に、なにかを行なうこと、活動したり創造したりすること、自分の仕事を実現することによってです。
第二に、なにかを体験すること、自然、芸術、人間を愛することによっても意味を実現できます。

【VE・フランクル】それでも人生にイエスと言う >>> amazon.

今回の芸術介入(特に制作を含む)は、この両者のどちらをも満たしていることに気づく。
すなわち、『人生における意味を実現する』ことを強力にサポートする介入といえるかもしれない。
そして、人生における意味や目的の感じ方が強くなるほどに、認知症リスクが低減される(📕Sutin, 2023 >>> doi.)。
このあたりが、芸術介入が認知機能を賦活させる仕組みの根幹かと思われた。

一方、介護者のウェルビーイングを改善させるのは、どういうわけか。
上記の『人生における意味を実現する』ことに加え、責任からの解放(休憩)、があると思う。
子どもと休日を過ごすと感じるのだが、そこには、やはり『疲労』がある。
自分が理解しきれない対象を理解しようとしたり、そこに沿うように行動したりすることは大変なことだし、危険がないようにモニタリングし続ける必要があることは、精神力を削る。
だからこそ、以前抄読した文献で報告されていたように、デイサービスは介護者を休ませる。

芸術介入にも、そのような効果があるのだろうと思う。

さて、最初のフランクルの言葉には、続きがある。

第三に、第一の方向でも第二の方向でも人生を価値あるものにする可能性がなくても、まだ生きる意味を見いだすことができます。自分の可能性が制約されているということが、どうしようもない運命であり、避けられず逃れられない事実であっても、その事実に対してどんな態度をとるか、その事実にどう適応し、その事実に対してどうふるまうか、その運命を自分に課せられた「十字架」としてどう引き受けるかに、生きる意味を見いだすことができるのです。

芸術を制作する中で、鑑賞する中で、ディスカッションする中で、認知症という障害に対して、いかに精神的に向き合うか。
そこに、新たな展望が見出せたのなら、その人の人生は価値あるものに近づく。
そこに誘うものは、芸術作品の素晴らしさであり、制作過程での気づきであり、第三者からの言葉、であろう。
理学療法士としての僕に関与するところとしては、その場を用意できる可能性と、「障害と対峙する際、最良の第三者からの言葉」とは何かを考え抜くことだ。
まずは、自分自身がもう少し芸術に触れてみよう、そこから始めよう。

芸術は人々を合一せしめる手段の1つである
トルストイ

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