イスラーム法は聖典から論理的に導出されたもの―『イスラーム文化』を読む(12)
はじめに
井筒俊彦『イスラーム文化 ― その根底にあるもの ―』(岩波文庫、1991年)を読む。本書の内容は、昭和56年の石坂記念講演会シリーズにおいて井筒が行った3回の講演に基づいている。岩波文庫版の底本は、1981年(昭和56年)に岩波書店から出版された同タイトルの書籍である。オイルショックが1970年代にあったのだが、社会的にもイスラーム圏の社会が意識されるようになった時代なのだろう。
井筒俊彦(1914–1993)は東洋思想の学者であるが、多くの言語を操り、イスラーム文化・宗教に関する業績によって人文領域で広く知られるようになった人物である。『コーラン』の翻訳者でもある。著作『意識と本質』においては、深い禅思想を普遍的・客観的に、宗教臭くも哲学臭くもなく提示しているが、これは中国思想やイスラーム思想も含め、広く深い視野を持っていたからであろう。
『イスラーム文化』は、「はじめに」「I 宗教」「II 法と倫理」「III 内面への道」という章立てになっている。今回は「II 法と倫理」、p.152からを読んでいく。
イスラーム法ができるには「ハディース」が必要であった
イスラームは聖俗が分離されない宗教であり、それゆえイスラームに基づく現世構築的な姿勢を持ち、必然的に政治にも関与する。そしてイスラームの行動を決める法とは、五段階の範疇を持つ善悪の倫理観に基づく、神の意思による決定なのであった。
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