「容量がいっぱいです」が、地味に一番こわい
「容量がいっぱいです」
最近この人、毎日会いに来る。
朝も来る。夜も来る。
断っているのに、全然帰らない。
しかも、ちょっと腹立つ。
原因は分かっている。
孫。孫。孫。ご飯。孫。孫。ご飯。空。孫。
同じような写真が、微妙に違う角度で並んでいる。
消そうとする。
でも手が止まる。
孫は消せない。
「これ、あの日のやつだ」
思い出が一瞬でよみがえる。
そのせいで、指が止まる。
今度はスクショフォルダ。
使い方の分からない情報ばかり。
「あとで見る予定」の山。
その“あとで”は、まだ一度も来ていない。
最後にそっと閉じる。
……今日はやめよう。
とは言ったものの気になって仕方ない。
ストレージはいっぱいのまま。
だからパソコンにバックアップした。
これでスマホは軽くなるはずだった。
なのに、スマホの中の写真が消せない。
何のためのバックアップなんだろう。
……いや、たぶん違う。
消せないのは、そっちじゃなかった。
何やってるんだ、わたし。
もはや「ストレージがいっぱいです」は、helloと同じテンションで出てくる。
夏の雑草くらい生命力がある。
最近は、家族並みに顔を合わせている。
……はぁ。
梅雨に入ったことだし、
とうもろこしの髭茶に陳皮でも浮かべて一服。
味?
それは保証できない。
