忘れていたのは、私だけだったらしい
いつものように、何気ない夜だった。
その“何気なさ”に、
私だけが置いていかれていたなんて、
この時はまだ気づいていない。
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忘れた。またやってしまった。
今回で3回目?
なんてこった。
いつものように、夫から「帰ります」のLINEが届く。
「気をつけて」と返信して、お風呂をために一階へ降りる。
しばらくして、「ただいま」と夫の声。
ダイニングに来た夫が、右手の箱を少し持ち上げた。
「これ、買ってきたよ」
「何?」
「ケーキ。今日でしょ?」
へ?
なんだっけ。
「また?」
少し笑いながら夫が言う。
「今日、結婚記念日でしょ」
「あ、そうだった、そうだった」
「僕だけですね。ちゃんと覚えてるのは」
危ないところだった。
ダイエットを本気で考えているのに、
なんでケーキ買ってくるの、
と言ってしまうところだった。
「何で乾杯しようか?」
「ビールあるよ、ビール」
すかさず私が言う。
「それにする」
その一言で、夫の機嫌はすっと戻る。
今日は、冷蔵庫のあるもので済ませるつもりだった。
冷奴と、アボカドと、八宝菜。
しかもその八宝菜、
夫の苦手な煮野菜もどき。
ま、大好きなビールがあるから、よしとするか。
私たち夫婦と娘夫婦は、同じ結婚記念日。
忘れないため、らしい。
さも気づいていたように「おめでとう」と
LINE送ったのは、私です。
追伸
ダイエット?
まだ始めていません。
ケーキ、ぺろっといただきました。
明日から頑張ろう。
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