初夏の魔女になる週末
今、夏のドリンク作りが盛況を迎えている。
夏を楽しくおいしく過ごすために、必要なのだ。
そのために私は、初夏の魔女になる。
先日は梅シロップを仕込んだ。
暴風警報が出た日に1人で作った。

去年までは、子どもも一緒に作ってくれたけど、今年は「氷砂糖を食べたい」と言っただけ。子どもの成長に少し寂しくなった。一緒に作りたかったな。
とは言いつつ、飲む時はガブガブ飲むので、やはり仕込むしかない。ひたすら梅のヘタを竹串で取り除いて、水分をキレイに拭き取った。内部を消毒した瓶に、梅と氷砂糖を交互に入れる。この時の様子が一番写真映えする。梅の緑と氷砂糖がキレイに映る気がする。
最後にお酢を入れて、梅に行き渡るように振る。瓶を振るのは3週間続ける。そうすることで美味しい梅シロップになるから。
今日現在の梅シロップはこんな感じ。

4日目にもなると、エキスがかなり出てきて、梅の実が一回り小さくなっている。実にシワが寄っているのが、エキスが抽出されている証。氷砂糖の粒も小さくなって、角が取れている。3週間後が楽しみ。じっくりおいしくなあれ。
夏のドリンクといえばもうひとつ。
赤紫蘇ジュースである。
酒飲みの夫からすると、バイスサワーの素でもある。梅仕事と同じ短い時期に赤紫蘇も出回るから、チャンスを逃してはならない。先週ぐらいから赤紫蘇を見かけるようになり、夫が「いつ仕込むの」とずっと言っている。子どもも楽しみにしてくれているようだけど、子ども以上に楽しみにしているのが夫だ。家族の期待を一身に背負って仕込むのが、我が家の初夏の風物詩である。
スーパーで材料を買い求めてきた。

赤紫蘇、2リットルの水、クエン酸、白砂糖。
水は別に水道水でもいい。私の住んでいる名古屋は水質も悪くない。でも、後から出来上がったシロップを収納するのにペットボトルを使いたいので、面倒だけど水を買う。
クエン酸は食品にも使えるものを買う。薬局で買うのもアリ。今回は、スーパーに食品として使えるクエン酸があったので、それにした。お酢でも代用できる。
砂糖は絶対白い砂糖を使う。色が命の赤紫蘇ジュース。黒砂糖やきび糖だと色が濁る。普段わが家ではきび糖を料理に使っているが、赤紫蘇ジュースのためにわざわざ白砂糖を買う。
さて、下ごしらえ。
まずは赤紫蘇を葉と茎に分ける。ジュースには葉だけ使う。この葉と茎に分ける作業が地味に辛い。

茎がついていないものもあるけど、茎がついているものは大体こんな感じ。これを葉と茎に分ける。


赤紫蘇300gを地道に仕分ける作業は、時間がかかる。集中力のある人にはうってつけかもしれない。私は途中で飽きてしまうから、「夜の踊り子」を歌いながらやっていた。子どもから訝しげな顔をされたけど、負けない。
このあと、葉をしっかり洗う。たまに砂埃がたくさんついている赤紫蘇もあるので、手を抜けない作業だ。鍋に2リットルの水をあけて沸かしながら葉を洗うと、段取りがいい。洗った葉は、ザルにあける。
沸騰したら、鍋に葉を入れる。

熱が入ると、葉の赤黒さがなくなり、緑色になる。煮汁に色が移った証だ。このまま5分間ぐつぐつ煮てから、葉だけザルにあける。私は違う鍋に煮汁を移しながらザルにあけた。


ここに砂糖を500g入れ、砂糖を煮溶かす。煮汁が熱いから火にかけなくても砂糖が溶けると思うかもしれないけど、かなりの量の砂糖を入れるので煮溶かした方が早い。
砂糖が溶けたら火を止め、クエン酸20gを入れる。

この赤黒い汁を鮮やかな色に変える作業が、まるで魔女みたいだ。魔法の粉を振りかけたら、綺麗で美味しいジュースになるのだから。私は今、キッチンを司る魔女だ。そんなことを考えながら、クエン酸を入れる。ワクワクするので、子どもを呼び寄せて見せながら入れる。

赤黒い色から、鮮やかなマゼンダ色に変わる。この瞬間が、毎年ウキウキする。理科の実験のような気持ちになる。考えてみれば、料理は科学だという。掛け合わせて大変身するものって、他にもあるかもしれない。
あとは冷まして、水が入っていたペットボトルに移す。保管は冷蔵庫で。飲む時は、3〜4倍に希釈して飲む。さっそく味見してみよう。

炭酸水でサイダー割りにしてみた。色が鮮やかに仕上がっていて、嬉しくなる。味も言うことなし。今年もこの味を味わうことができた。子どもたちにも好評である。休日出勤から帰ってきた夫も、ごくごく喉を鳴らしながら飲んでいる。
家族が望むなら、私は魔女にだってなれる。季節を味わって、みんなで美味しいと笑い合えるなら、私は何回でも変身する。手間暇かかって面倒だけど、「美味しい」の言葉がご褒美だ。家族の笑顔を増やすために、私は初夏の魔女になる。
