今日のごはんのCO₂⑦一冨士フードサービスが挑む、理想を実現するということ‐食×CO₂を“実装する”-
第7回 今日のごはんのCO₂
ー 食からはじまるカーボンニュートラル ―
「SDGsで売上が上がるのか」
創業100年を超える一冨士フードサービス株式会社(以下、一冨士)で、環境への取り組みを進めようとしたとき、社内からはそんな率直な声も上がっていたといいます。
環境の取り組みが、日々の業務や売上にどうつながるのか。
今回、一冨士の担当者にインタビューし、取り組みの背景や社内での課題、そして実装に至るまでの工夫について伺いました。
掲げるだけでは、変わらない

当初、社内ではSDGs自体の認知も高くなく、「掲げるだけでは意味がない」という課題感がありました。
そこで一冨士では、SDGsを単なるスローガンではなく、
経営の中でどう位置づけるかを検討するようになりました。
その中で、自社の強みである「食」を起点に、
CO₂削減を目的としたカーボンフットプリント(CFP)の見える化が、
新たな取り組みとしてスタートしました。
なぜ「食×CO₂」だったのか
『給食会社として、食で貢献できることがいいと思った』
食は、誰もが毎日関わる行動です。
そしてお客様と企業が同じ体験を共有できる領域でもあります。
環境への取り組みを「自分ごと」にするための入口として、
これ以上に適したテーマはありませんでした。
「できるの?」から始まった挑戦
最初の印象は、とてもシンプルでした。
「できるの?」
それは新しさへの期待であると同時に、不安でもありました。
一つ一つの食堂で実行するという壁
実際に検討を始めてみると、最大の壁はCFPの見える化を、
一つ一つの食堂で実行できるかどうかでした。
例えば調理工程ひとつをとっても、
・火力
・調理時間
・食材の扱い
これらのCO₂排出量をすべて正確に数値化しようとすると、
食事提供のオペレーションは難しくなります。
そこで一冨士では、
・算定に必要な工程の整理・標準化
・共通ルールの設計
・オペレーションの検証
を重ね、「説明できるCO₂排出量の精度」と「食堂でのオペレーションの仕組み」の両立を実現していきました。
さらに、この取り組みを支えているのが、
レシピデータとCO₂排出量を連携させる算定の仕組みです。
メニューごとに環境負荷を算出し、継続的に更新していくためには、
単発の計算ではなく、日々の運用に組み込めるシステムが必要になります。
一冨士では、こうしたデータの扱いについても試行錯誤を重ねながら、
「一つ一つの食堂で使える形での可視化」を実現することができました。
サステナブルな食材を導入すること
サステナブルな食材として導入したソイミートでは、
・味への不安
・調理の慣れ
・お客様の反応
といった課題もありました。
しかし、メニューの選択肢を増やしていくことで、
調理ノウハウが蓄積され、お客様の心理的ハードルが下がり、
やがて“選ばれるメニュー”へと変化していきました。
実際のメニューはどう見えるのか
社員食堂では、イベントメニューとして、こうした形でCO₂排出量(CFP)が表示されています。

例えばソイミートを活用したメニューでは、
従来の肉メニューと比較してCO₂排出量が低減されていることが示されています。
日々のメニューの中で、環境負荷が“見える形”で提示されることで、お客様が自然に選択できる仕組みがつくられているのです。
可視化された成果
一冨士が強くこだわったのは、「見える化」のあり方です。

単に数字を出すのではなく、説明できる数値であること。
これが重要でした。
環境負荷が感覚ではなく、数値として他のメニューと比較できる形で示すことで、行動することの必要性が伝わります。
そしてそれは、
・社内での納得感
・お客様の理解
・継続するための手応え
につながっていきます。
CFPは「目的」ではない
一冨士の取り組みが示しているのは、明確です。
CFPは「表示すること」が目的ではない。
説明できる数値として積み上げた実績こそが価値になる。
環境対応を、別枠の活動としてではなく、
経営の中に組み込む。
その姿勢こそが、この取り組みの本質です。
社内から変わる意識
取り組みを通じて、社内にも変化が生まれています。
最初は「CFPって何?」という状態だった担当者も、約1年半の取り組みを経て、より具体的で現実的な議論ができるようになってきました。
また、お客様側にも変化が見られました。
環境よりも価格やボリュームを重視するのではないかという予想に反し、
ソイミートメニューを選ぶお客様も多くいました。
目指す未来
目指しているのは、
健康メニューを選ぶのと同じように、環境も意識して食を選べる社会です。
環境配慮を特別なものとしてではなく、
日々の食事の中で自然に選択できる状態にすること。
そのためには、単に情報を示すだけではなく、
無理なく続けられる形で提供されることが重要になります。
一冨士の取り組みは、
そうした“日常の中に組み込まれる環境行動”の実現を目指したものです。
理想を実現するということ
一冨士の取り組みから見えてきたのは、
理想だけでは行動は続かないという現実です。
環境に配慮することは大切だと、多くの人が分かっています。
しかし、それを日々の業務や選択の中で続けていくためには、
「仕組み」として成立している必要があります。
レシピデータとCO₂排出量を連携させる算定の仕組み、
一つ一つの食堂で無理なく実行できるルール設計、
そして説明できる数値としての可視化。
こうした積み重ねによって初めて、
環境への取り組みは“特別な活動”ではなく、
日常の中で機能し始めます。
理想を掲げることは簡単です。
しかし、それを実際に実行し続けることは簡単ではありません。
だからこそ、理想を仕組みに変えること。
それこそが「食×CO₂」を社会に広げていくための鍵なのかもしれません。
最後に
環境に取り組みたいが、何から始めればいいか分からない。
そんな企業に向けて、一冨士のメンバーは笑顔でこう語ります。
『成せばなる』
取り組み方を工夫しながら、地道に丁寧に積み重ねていくこと。
その一歩は、すでに一部の食堂から始まっています。
そして、それは確実に広がり始めています。
■インタビューにご協力いただいた皆さま
本記事の作成にあたり、インタビューおよび取材協力をいただきました。

★お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
■一冨士フードサービス株式会社について
1901年創業。
一冨士フードサービス株式会社は、給食事業を中心に全国でフードサービスを展開する企業です。
企業・学校・医療・福祉施設など幅広い分野で食事提供を行い、「食」を通じて人々の健康と生活を支えています。
近年では、SDGsや環境配慮の視点を取り入れたメニュー開発や運営にも取り組み、持続可能な食の提供に向けた挑戦を続けています。
■公式サイト

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次回予告
学食・企業・社会へ広がる「食×CO₂」
社員食堂で始まったこの取り組みは、
いま新しい段階に進みつつあります。
・企業の社員食堂
・学校の食堂
・外食
・食品企業
など、さまざまな分野への展開が期待されています。
次回は、
大学の学食で行われている取り組みとして、
筑波大学の事例を紹介します。
📖 連載:今日のごはんのCO₂

食事の選択が、環境と社会をどう変えるのか。
社員食堂・大学・企業の事例を通じて、「食×カーボンニュートラル」の可能性を探るシリーズです。
※本マガジンは、SuMPOマーケティング事業室 note編集部が企画・編集しています。
【問い合わせ先】
一般社団法人サステナブル経営推進機構
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