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今日のごはんのCO₂⑤社員食堂は「行動変容を育む場」

第5回 今日のごはんのCO₂ 
ー 食からはじまるカーボンニュートラル ―


― 健康と環境をつなぐ「食の共通言語」 ―

これまで本連載では、
「食事のGHG排出量」をテーマに、
食と環境の関係を見える化する取り組みを紹介してきました。

その最初の事例として取り上げたのが、
フードサービス大手であるエームサービス株式会社です。

同社は、社員食堂という日常の食の場を通じて、
食と環境を結びつける新しい取り組みに挑戦しています。
その中心となっているのが、
食事メニューのカーボンフットプリント(GHG排出量)の算定と可視化です。


レシピデータと環境データの連携

エームサービスとSuMPOの共同プロジェクトでは、
食事メニューのGHG排出量を算定する基盤が構築されました。

エームサービスが保有する87万件以上のレシピデータと、
SuMPOが構築する食品関連データ、
そしてGHG排出量算定ロジックを組み合わせることで、
食事メニューの環境負荷を継続的に算定できる仕組みが実現しました。

これは、社員食堂という日常の食の場において
環境情報を継続的に提供できる国内でも先進的な取り組みと言えます。


社員食堂アプリで広がる「食のCO₂」

今回の取り組みでは、算定された食事メニューのGHG排出量を、
エームサービスの社員食堂向けアプリ 「Let’sgofun(れっつごふぁん)Ⓡ」
を通じて利用者に届ける仕組みが実装されました。

このアプリでは、
利用者が日々の食事に関する環境情報を確認することができます。
具体的には、
・食事メニューごとのGHG排出量
・自分が食べた食事の履歴
・1日あたりの平均排出量
・アプリ内コミュニティの平均値との比較
といった情報が表示されます。

自分の食事がどの程度の環境負荷につながっているのかを、
日常の食事の中で自然に知ることができる仕組みです。

現在、この「Let’sgofun(れっつごふぁん)Ⓡ」は月間約8.3万人が利用しています。

社員食堂というリアルな食の場と、
アプリというデジタルの接点を組み合わせることで、
利用者は日々の食事と環境情報を結びつけて考える機会を得られます。


行動変容は「すぐには起きない」

今回の取り組みを通じて、
すぐに組織全体の行動が変わったわけではありません。
しかし、一部では確実に変化が生まれています。
社内では以前よりも環境の話題が自然に出るようになり、
新しい視点が浸透し始めているといいます。

そもそも、食の分野では行動変容は時間がかかるものです。

『例えば栄養表示も、
 生活者がその価値を理解するまでには長い時間がかかりました。
 食事にCO₂という視点を加えることも、
 同じように時間をかけて浸透していく分野だ』

と舩橋様は語ります。

食は、毎日の生活と切り離せません。
だからこそ、環境行動を自分ごととして考えやすいテーマでもあります。


「GHG」という言葉を初めて知った人も

B社社員食堂での実証イベントでは、
社員食堂でのポスター掲示とアプリを組み合わせて環境情報を提供し、
利用者へのアンケート調査も行われました。

その結果、興味深い傾向が見えてきました。

環境への関心が低いと自己評価した利用者のうち、
約50%が「GHGという言葉を知ったきっかけはアプリだった」と回答したのです。

環境情報は、関心の高い人には届きやすい一方で、
関心が低い層にはなかなか届きません。
しかし社員食堂アプリのように、
日常的に使うツールの中で情報に触れることで、
これまで環境にあまり関心がなかった人にも
新しい視点が届く可能性が示されました。


コミュニティ比較が生む行動のきっかけ

アプリのもう一つの特徴は、
コミュニティ内の平均値と自分の数値を比較できることです。

Let’sgofun(れっつごふぁん)Ⓡ

利用者は、自分の食事によるGHG排出量が、
他の利用者の平均と比べてどうなのかを確認することができます。

これは、「良い・悪い」を評価する仕組みではありません。
むしろ、
「今日は少し排出量が少ない食事だった」
「昨日より少し多いかもしれない」
といった小さな気づきを生み出す仕組みです。

こうした緩やかな比較は、強制や義務ではなく、
自然な行動変容のきっかけを生み出します。


食堂が「環境メディア」になる

社員食堂は、毎日多くの人が利用する場所です。

そこにアプリというデジタルの仕組みが加わることで、
社員食堂は単なる食事の場ではなく、
環境情報に日常的に触れる「メディア」
としての役割を持つようになります。

朝の通勤時間や食事の前後など、
利用者がアプリを見るタイミングで
自然と環境情報に触れることになるからです。

こうした小さな接点の積み重ねが、
生活者の意識や行動の変化につながっていく可能性があります。


企業が取り組む意味

このプロジェクトは、単なる環境施策ではありません。
エームサービスでは社内説明の際、
宮田様はこの取り組みを次のように表現したといいます。

『行動変容は短期的な成果が見えにくい。
 しかし長期的には、信頼や選ばれる理由になる投資である。
 環境配慮は、すぐに数字として成果が見えるとは限りません。
 それでも、やる企業とやらない企業の差は確実に広がる。
 そうした認識が、社内の理解を得るうえでも重要だった。』


行動変容の第一歩は「なぜ」

同じような取り組みを検討している企業に対して、

『まずは、「どの行動を、なぜ変えたいのか」を明確にすること。
 そして、経営層の理解と、社内の推進者を明確にすることが重要だ』

と舩橋様はいいます。

『環境の取り組みは、完璧な仕組みを作ってから始める必要はありません。
 測れるところから小さく始め、
実際に動きながら改善していくことが次のステップにつながります。』


健康と環境をつなぐ未来

エームサービスが最終的に目指しているのは、

健康経営における「栄養に配慮された食事」
そして環境経営における「GHGに配慮された食事」

この二つを融合させることです。

そして、それが
生活者にとって当たり前に選べる食事になること。

カロリー表示が健康の指標となったように、
GHG排出量もまた、
地球の健康を示す指標
として、日常の選択の中に
自然に組み込まれていくかもしれません。


食から始まる「共通言語」

今回のSuMPOとの取り組みを一言で表すなら、
それは
『健康と環境をつなぐ共通言語づくり』
だとお二人は語ります。

『食という日常の行動に環境という視点を重ねることで、
 生活者、企業、社会が同じ言葉で未来を考えられるようになる。』

社員食堂から始まったこの挑戦は、その第一歩と言えるでしょう。


■インタビューにご協力いただいた皆さま

本記事の作成にあたり、
以下の皆さまにインタビューおよび取材協力をいただきました。

宮田 佳泉様
 
エームサービス株式会社
 Innovative Dining Solutionsセンター(研究開発部門) 部長
舩橋 和美様
 
エームサービス株式会社
 IDSセンター シニアスーパーバイザー(管理栄養士)

★お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。


■エームサービス株式会社について


https://www.aimservices.co.jp/

エームサービス株式会社は、1976年に設立されたフードサービス企業です。
オフィスや工場、病院・福祉施設、学校、スポーツ施設など幅広い分野で食事提供を行い、グループ全体で全国約3,500カ所、1日約140万食を提供しています。

「『食』から日本の未来を支えます。」をコーポレートスローガンに掲げ、栄養・健康への配慮はもちろん、持続可能性を踏まえた食材選定や環境配慮型の食事提供など、クライアント企業の健康経営・環境経営を支える取り組みを進めています。
今回紹介した、食事メニューのカーボンフットプリント可視化の取り組みも、その一環として進められているものです。

■公式サイト

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次回予告

社員食堂の現場から始まった「食×CO₂見える化」の取り組み。

では、この取り組みは
企業の中でどのように広がっていくのでしょうか。

次回は、
パナソニック グループの取り組みをご紹介します。

企業市民活動の視点から、
従業員の行動変容を生み出す新しいチャレンジ。
社員食堂をきっかけに広がる
「食から始まるサステナビリティ」の可能性に迫ります。


📖 連載:今日のごはんのCO₂

食事の選択が、環境と社会をどう変えるのか。
社員食堂・大学・企業の事例を通じて、「食×カーボンニュートラル」の可能性を探るシリーズです。

※本マガジンは、SuMPOマーケティング事業室 note編集部が企画・編集しています。

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