今日のごはんのCO₂④エームサービスの挑戦―社員食堂から始まるカーボンニュートラルー
第4回 今日のごはんのCO₂
ー 食からはじまるカーボンニュートラル ―

― エームサービスが挑んだ「食×CO₂」の社会実装 ―
「環境配慮の取り組みを進めたい。」
多くの企業がそう考えながらも、
“現場の行動が変わらない”という壁に直面します。
そんな中、社員食堂という日常の場から
CO₂の見える化を通じて行動変容を促す取り組みが始まりました。
今回紹介するのは、
フードサービス企業 エームサービス株式会社 と
SuMPOによる共同プロジェクト
「レシピdeカーボンフットプリント」です。
このプロジェクトでは、食事メニューに
GHG排出量(CO₂換算・カーボンフットプリント)の情報を表示し、
利用者の意識と行動の変化を促す仕組みづくりを進めています。
今回はエームサービスの担当者にインタビューし、
取り組みの背景や実証の成果、そして今後の展望について伺いました。
【エームサービス株式会社】
IDSセンター 部長 宮田 佳泉様
IDSセンター シニアスーパーバイザー(管理栄養士) 舩橋 和美様
「環境施策は後回しになりがちだった」
エームサービスは、
オフィスや工場、病院、学校などグループで全国約3,500カ所の施設で
1日約140万食を提供するフードサービス企業です。
もちろん環境配慮の取り組み自体は以前から行われていました。
しかし、現場にはこんな課題があったといいます。
『食堂の現場では、まず、“おいしい食事を提供すること”が最優先。
環境施策は大切だと分かっていても、
日常業務の中では優先順位が上がりにくかった。』
そこで注目したのが、
「食事メニューのCO₂排出量の見える化」でした。

「食」なら自分たちの強みを活かせる
インタビューで印象的だったのは、この取り組みを選んだ理由です。
『自社の“食・レシピ”という強みを活かせる点が大きかった。』
エームサービスには、
・長年のレシピ開発
・栄養管理のノウハウ
・食堂運営のデータ
といった強みがあります。
つまり、環境施策を“新しい仕事”として追加するのではなく、
今ある強みを拡張する形で取り組める。
これが、このプロジェクトを始める大きなポイントでした。
社員食堂で始まった「CO₂の見える化」
最初の取り組みは、
神奈川県内のA社社員食堂でのトライアルイベントでした。
提供されるメニューに、
食事のライフサイクルで排出されるGHG排出量(CO₂換算)
を表示したのです。
さらに食堂内では、
・GHG排出量とは何か
・食と環境の関係
を説明するポスターも掲示されました。
A社でのイベント後のアンケートでは、興味深い結果が得られました。
・環境配慮メニューに追加料金を払える→ 約65%
・環境配慮に取り組む食堂への評価が上がる→ 約75%

つまり、
食の環境情報は、企業評価にも影響する可能性が見えてきたのです。
行動変容は「数値」より「接触頻度」
今回のインタビューで、もう一つ印象的だった言葉があります。
『数値の厳密さも大切だが、まずは“知る機会”を増やすことが大切。』
これは、カロリー表示と同じ考え方です。
カロリーも最初は参考情報でした。
しかし今では、
健康管理、ダイエットや食品選択の指標として社会に定着しています。
CO₂も同じように
「地球の健康の指標」
として日常に浸透する可能性があります。
次のステップは「アプリ」
この取り組みは、2025年にさらに進化しました。
エームサービスの社員食堂アプリ
「Let’sgofun(れっつごふぁん)Ⓡ」 に、
食事のGHG排出量を確認できる機能が追加されたのです。

アプリでは
・提供予定メニューのGHG排出量
・食事履歴
・1日平均排出量
・コミュニティとの比較
などを確認できます。
現在、月間約8.3万人が利用しています。
さらに興味深い結果もありました。
環境関心が低い利用者のうち、
約50%が「GHG」という言葉をアプリで初めて知った
と回答したのです。
つまり、
行動変容の第一歩は「知ること」。
その接点として、日常的に使うアプリは非常に有効だということが分かってきました。
健康 × 環境という新しい食の価値
エームサービスが目指しているのは、
健康と環境を同時に考える食の仕組みです。
担当の舩橋様はこう語ります。
『健康経営の“栄養に配慮した食事”と
環境経営の“GHGに配慮した食事”が、
当たり前に選べる未来をつくりたい。』
社員食堂は、
・毎日利用する
・同じコミュニティが使う
・行動データが蓄積できる
という意味で、行動変容を設計するための理想的な場でもあります。
次回予告
社員食堂は「行動変容を育む場」
今回紹介したエームサービスの取り組みは、
単なるイベントではありません。
社員食堂という場を使い、人の行動をどう変えるのか
を実証する取り組みでもあります。
実はこのプロジェクトには、
・表示の仕方
・情報の接触頻度
・コミュニティ比較
・アプリの活用
など、
行動変容を設計するための多くの工夫が組み込まれています。
次回は、
「人はなぜ環境配慮メニューを選ぶのか?」
というテーマで、社員食堂を舞台にした、
行動変容の設計について掘り下げていきます。
📖 連載:今日のごはんのCO₂

食事の選択が、環境と社会をどう変えるのか。
社員食堂・大学・企業の事例を通じて、「食×カーボンニュートラル」の可能性を探るシリーズです。
※本マガジンは、SuMPOマーケティング事業室 note編集部が企画・編集しています。
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