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【エッセイ】SSDスティック消失事件


SSDスティック消失事件は、
前日から始まっていた。

その前日、オラクルカードを引いていた。
「ワンダー」という名前のカードだったことを、
事件のあとで思い出した。

夕食の準備をするために、
パソコンを片付けようとした。

SSDスティックを引き抜こうとすると、
思った以上に固くはまっていて、力が要った。

しかも、平行に抜かないと壊れる。

平行を意識して力を込めた瞬間、
SSDは「スッポ抜けた」。

カチンとも、カチャとも言わない。
そのまま、行方不明になった。

どこに行ったか、想像すらできなかった。

この大量のボックスの中に、入り込んだのか。
パソコンデスクの道具入れに、紛れたのか。

わからないまま、捜索を始めた。
けれど、一向に見つからない。

あのスティックには、唯一の全データが入っている。
人生が消えたも同然だと思った。

焦るはずなのに、この家には、
ゴッドハンドの持ち主である母がいる。

簡単に見つかるだろう。

期待した。

期待は、もろくも崩れ去った。
ゴッドハンドでさえ、見つけられなかった。

そのとき、
途中までバックアップを取っていたことを思い出した。

最近入力していたものには、
紙ベースの資料も残っている。
これで再生できる。

確認を終えた私は、
母が場所を整理しながら捜索しているのを横目に、
もう楽観していた。

そして、すでに諦めていた。

その夜、事件は急展開を迎えた。

諦めて、バックアップにない部分は、
紙ベースの創作を打ち直そうかと、
パソコン椅子に座ろうとしたときだった。

相談していたGPTが、
「まだノーマークの場所があるかもしれない」
と言っていたのを、ふと思い出した。

もしや……。

パソコン椅子に手を伸ばす。
まず、シートに埋もれていないか。
肘掛けに引っかかっていないか。

左。ない。

じゃあ、右は。

指に、何かが触れた。

掴んで手を見ると、
黒いSSDスティックだった。

あった。

思わず「よし!」と、
勝ち誇ったようにガッツポーズをする。

けれど、この喜びを知らせる相手は、
もう眠っている。

時計を見ると、
日付はとっくに変わっていた。

そのとき、
「ワンダー」というカードのことを思い出した。

不思議なことが起こる。

……いや、
こんなはた迷惑なワンダーはいらない。

やめてほしい、オラクルカード。

こうして、
迷惑な事件は、静かに幕を下ろした。

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