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【読感】楽園とは探偵の不在なり(著:斜線堂有紀)



数多くのミステリランキングに入った注目作

斜線堂有紀さんの作品はずっと気になっていましたがなかなか読む機会がありませんでした。
本作が初めての斜線堂有紀作品で、とても楽しんで読みました。

【あらすじ】

二人以上殺した者は"天使"によって即座に地獄に引きずり込まれるようになった世界。
細々と探偵業を営む青岸焦(あおぎしこがれ)は「天国が存在するか知りたくないか」という大富豪・常木王凱(つねきおうがい)に誘われ、天使が集まる常世島(とこよじま)を訪れる。
そこで青岸を待っていたのは、起きるはずのない連続殺人事件だった。
かつて無慈悲な喪失を経験した青岸は、過去にとらわれつつ調査を始めるが、そんな彼を嘲笑うかのように事件は続く。
犯人はなぜ、そしてどのように地獄に堕ちずに殺人を続けているのか。
最注目の新鋭による、孤島×館の本格ミステリ。

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おすすめポイント(ネタバレ注意)

①独特なルール

まず注目すべきはこの作品の独特な世界のルールでしょう。
あらすじにもありますが、世界に突如として天使が現れ、二人以上を殺した人は強制的に地獄に引きずり込まれることになる、そんな世界です。

このルールによって世界は一人までなら殺してもいい、もしくは二人以上を殺す場合はより多くの人を殺した方がいいという考えも広がります。
逆に言えば連続殺人事件は起こらない世界とも言えます。

そんな中で起きた孤島の連続殺人事件。

犯人はどうやって二人以上の殺人を地獄に落ちることなくやりおおせたのか。
また地獄に落ちるリスクを抱えながらも、なぜ犯人は複数の人を殺さなければならなかったのか。

『二人以上を殺した人は天使によって地獄に落ちる』という絶対のルールによって犯人を絞ったり、それが逆にミスリードになったりして、とても面白い作品でした。

②天使の不気味さ

この作品の天使は、『天使』と呼ばれてはいますが、一般的な天使のイメージは全くありません。
手足が長く、顔には表情も感情もなく、声も何も発しません。
二人以上を殺した人を淡々と地獄に落としますが、死にそうな被害者を助けることはしません。
そして空を無気力に浮遊し、角砂糖に群がるという習性を持っています。
およそ天使と形容できる存在ではありませんが、人々は『天使』と言う他ないという意識で統一されています。

この名前と不気味さのアンバランスさがとてもいい味を出しています。

③王道×特殊設定

物語のメインは孤島で起きる連続殺人事件。
綾辻行人著「十角館の殺人」に代表されるような王道中の王道のミステリです。
そこに『二人以上殺したものは強制的に地獄に落とされる』というルールと、いつも空を浮遊している不気味な天使の存在が、王道でありながら今までにない世界観を作り上げています。
王道が好きな読者も、少し味変したい読者も両方楽しませてくれます。

また天使もトリックの装置の一つに使っているところも、独特の世界の設定を十分に活かしててとても良かったです。


ラストはこの世界の歪さを残したまま、主人公の成長も見られるような感じとなっています。

最後まで読んでいただいてありがとうございます。
次回の【読感】は柚木麻子著「本屋さんのダイアナ」です。

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