【読感】ツミデミック(著:一穂ミチ)
「犯罪」×「パンデミック」を描いた直木賞受賞作
パンデミックを背景に巻き起こる様々な犯罪が描かれていきます。
表紙がとても印象的な本ですね。
全六話のうち、前半三話は少し怖め、後半三話はラストが明るく終わる感じの話です。
【あらすじ】
大学を中退し、夜の街で客引きのバイトをしている優斗。
ある日、バイト中に話しかけてきた大阪弁の女は、中学時代に死んだはずの同級生の名を名乗った。過去の記憶と目の前の女の話に戸惑う優斗は……。
ーー「違う羽の鳥」
調理師の職を失った恭一は家に籠もりがちで、働く妻の態度も心なしか冷たい。
ある日、小一の息子・隼が遊びから帰ってくると、聖徳太子の描かれた旧一万円札を持っていた。近隣の一軒家に住む老人からもらったという。
隼からそれを奪い、たばこを買うのに使ってしまった恭一は、翌日得意の澄まし汁を作って老人宅を訪れるが……。
ーー「特別縁故者」
先の見えない禍にのまれた人生は、思いもよらない場所に辿り着く。 稀代のストーリーテラーによる心揺さぶる全六話。
【おすすめポイント】(ネタバレ注意)
①第二話「ロマンス☆」
主人公の百合は、街でイケメンのフードデリバリーの配達員とすれ違います。
もう一度あの配達員に会いたいと思った百合は、夫に内緒でフードデリバリーを何度も注文します。
ケチな夫にはバレてはなりません。
またパンデミックで家にいることが多くなった夫に対するイライラも、デリバリーを注文することに拍車をかけます。
一度でいいからあの配達員に会いたい。
しかし配達に来るのはいつも別の人。しかもその人から一方的な好意を向けられます。
そしてラストに重大な出来事が生じます。
出来事としては悲惨なものですが、自分勝手で百合を蔑ろにし家事に非協力的な夫や、ストーカーと化した配達員にイライラして読んでいたこともあり、私としてはある種のカタルシスを感じる結末でした。
②第四話「特別縁故者」
飲食店に勤めていた恭一は、コロナの影響で仕事を失い無職となります。新しい職も見つからず、自堕落な日々を送っていました。
そんなとき、七歳の息子が近所の老人から聖徳太子が描かれた旧一万円札をもらってきます。
恭一は、息子のお礼という名目で老人の家を探りに行くことにします。
あわよくばさらにお金をもらえないだろうか、さらに言えば「特別縁故者」となって財産をもらえないだろうか、と考えます。
そのために恭一は老人の家に通い、得意の料理を差し入れて関係性を作る努力をしていきます。
しかし老人と一緒の時間を過ごし、他愛のない会話や悩み事を相談しているうちに、お金は関係なく老人との関係に温かいものを恭一は感じていきます。
そんな時に妻の病気が発覚し、恭一は老人にお金を無心します。
しかし恭一のことを認め始めた老人もやっぱりお金が目当てなのかと、怒って恭一を追い出します。
妻の治療費を始め、今後の生活に不安を抱える恭一。
そんなある日の夜、老人の家に強盗が入ります。
老人に追い出された恭一。
もうお金を期待することはできないし、助ける義理はありません。
そこで恭一がとった行動は。
ラストはとても温かくなるお話です。
③第六話「さざなみドライブ」
コロナ禍によって人生を壊されてしまった人が集まって車に乗っています。
向かっているのは人目のつかない山奥。
そこに向かう道中、なぜ自分の命を絶つことにしたのかを一人ずつ話していくことになります。
しかし主人公の理由は、他の人達に納得してもらえるものかどうか分かりません。
そんな中、目的地に到着すると、先に別の車が停まっています。
今回の集団自殺の発起人の男が確認しにいくと、中で人が死んでいました。
あまりに酷い有り様を見たという男は、自殺することを躊躇し、先客もいたことだしとりあえず今日の自殺はやめておこうという流れになります。
ここで皆の気持ちが少し落ち着いて、とりあえずもう少し生きてみようとなったところで……。
今作は少しSFテイストもありながら、人間の怖い部分も描かれていてとても面白いです。
こちらもラストは希望のある形で終わっています。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
次回の【読感】は東野圭吾著「架空犯」です。

