請求書を出し忘れるADHDフリーランスが、AI秘書を作った話
フリーランスになって一番きつかったのは、仕事そのものではなく事務作業でした。
僕はガッチガチのADHDです。締切前の集中力だけは謎に高いのに、レシートを「あとで精算する」箱に入れた瞬間、その存在を忘れます。未読メールのバッジが3桁になっても平気なのに、返信を1本忘れていることには夜中の布団の中で気づくし、気づいた後また忘れるし、その癖めっちゃ不安になる。
メールを返して、請求書を出して、入金を確認する。そこにスケジュール調整と見積もりが割り込んでくる。1個ずつなら大した作業ではないはず。厄介なのは、ADHDの頭の中では、この全部が「同じ重さ」に見えるっぽいことです。納品と、レシートの山が、おんなじ重さ。だから手を付ける順番が決まらないし、決めらんないし、全部まとめて後回し。
で、フリーランスを初めて少し経ったある月、請求書を1件出し忘れました。気づいたのはまとまった経費系の購入があって現金が気になったので、ふと入金チェックしよ〜と思った時。金額は伏せますが、その月の家賃くらいです。入金一覧を見ながら、しばらく固まってました。
会社員のころは、経理や事務の人がいて、抜けてたら誰かがリマインドしてくれてました。(特に僕は作ったり納品する系の仕事の人間なので)あれは僕みたいな人間にとっては福祉だったんだな〜と、独立してから気づきました。
でも、人を雇えるわけがないので、AIに秘書をやらせてる人がいるらしいとXでドーパミン垂れ流してる時に何件も見つけてやってみることにしました。
このnoteアカウントはその全体像です。半年経ってないくらいかけて、Claude Codeに事務作業やいろんなデータの整理を任せる仕組みを作ってきました。何を任せて、どこで壊れて、いまどう運用しているか。細かい作り方は長くなるし更新されていくので、このアカウントで少しずつ書いていきます。
僕みたいなフリーランスを救えたらいいな〜と思ってます。
(真似する人は自己責任でお願いします!)
例として最初にやったこと(そして最初の失敗)
最初は、チャット画面のAIに毎回コピペしていました。(Claude CodeとClaudeのチャットの区別がついてなかったので。)
メールをコピーして、AIに貼って、「返信を書いて」と頼む。できた文章をまたメールにコピペして戻す。
……これ、最初はいいじゃん!と思ってやるんですけど、僕みたいな人間はすぐそのドーパミンに適応してやらなくなるんですよねぇ
ADHDの人なら分かってもらえると思うんですが、大体、手順が3つを超える習慣は定着しません。
(それが理由で僕は複雑な料理もできません)
AIの返信は悪くなかったのに、毎回コピーして戻すのが面倒だったり、そもそも返信を書くための情報を集めに行くのがめんどくさくなって、結局使わなくなりました。
転機は、Claude Code(クロードコード)という、ターミナルで動くタイプのClaudeの機能を知ったことです。ターミナルというのは黒い画面に文字を打つあれで、エンジニアの道具というイメージがあって、正直ビビってました。
使ってみると、ユーザーインターフェースがしっかりしていて、チャット版とはできることが違いました。チャット版は、こちらがメールを貼らないと何も始まりません。Claude Codeは、指定したファイルとか場所を自分で開いて読みます。メールを持っていかなくても、ちゃんと場所を教えたらAIの側から見に来てくれるし、その場所を記録しておけば合図したら自動で見てくれるようになる。
情報集めてコピペ〜みたいなことが要らなくなって、AIはようやく道具から秘書になっていきました。
いまAI秘書に任せている仕事
半年くらいかけて、任せる範囲を少しずつ広げてきました。いまは4つです。
ちなみに今は、AIが自由に僕と情報を集めて共有する場所の必要性に気づいて、Obsidianというメモアプリみたいなやつ(厳密には全然違うけど)と組み合わせて運用してます。
1. メールの仕分けと「要対応」の抽出
朝、その日の新着メールをAIが読んで、返信が必要なものだけを締切つきの一覧にしてくれます。(見やすくカードみたいにしてくれます。)読むだけでいいものと、対応不要なものは、その下にまとまります。
30分かかっていた朝のメールチェックが5分になりました。……と書くと少し語弊があって、本文にはちゃんと目を通しています。短くなったのは「多量のメールに圧倒されてなんか読んでんだか読んでないんだかわからん時間」と「どれから返すか迷っている時間」です。ADHDの事務でいちばん重いのは作業そのものではなく着手で、「とりあえず一番上から」と決めてくれる存在がいるだけで、だいぶ動き始めます。
2. タスクボードの管理
要対応の案件を、AIがObsidianのボードに書き出して管理します。「今日締切」「今週中」「待ち」みたいな感じに
実はかっこよく書いてるけど、ここは一度、盛大にブッ壊れました。
全部AIに任せたら、終わったタスクが消えずに溜まり続けて、ボードがスクロールしないと読めない長さになるとか。(もちろんAIに終わったやつ消してってみたいな指示してなかったからです。)
長いリストは、ADHDの脳内では「存在しないもの」になるんですよねえ。
僕は読めなくなって、1週間、ボードを開きもしませんでした。いまは、書き出すのはAI、消していいかの基準を設定して、バックアップ取ってもらって消えるような形になってます(消すか迷って欲しい基準も教えてます)。この実装や失敗は別の記事で詳しく書きます。
3. 請求書まわりの下ごしらえ
請求書のPDFが届いたら、AIが金額と支払期日を読み取って規定の台帳に記録します。(僕の場合はエクセル)自分が出す側の請求書も、記録に基づいて、出し忘れがないかをAIが照合します。
冒頭の出し忘れ事件は、この仕組みを作ってからゼロです。ゼロと言い切りたくないんですが、いまのところゼロになってます。
4. 返信の下書き
要対応メールには、AIが分類の時点で返信の下書きを付けてきます。そのまま送ることは、あんまりないし、7割くらい直すこともあるけど、宛名から書き始めるよりずっと楽です。白紙には着手できないけど、直すだけなら手が動きません?ADHDの人はこの感覚、分かってもらえるんじゃないでしょうか。
任せていないこと
送信ボタンとかカレンダーへの直接の書き込みはさせていません。AIに作らせるのは下書きまでで、送信前には必ず自分で確認します。こんなに適当な自分の作ったシステムなのでそこまで信頼できてないってのが一番の原因です。
向いていない人
事務が月に数時間で片づくし、ちゃんと仕事に立ち向かえる人には、多分向いてないと思います。仕組みを作る時間のほうが長くなるんで。
僕は仕組み作るのにドーパミンが出たので仕事より一時期仕組み作る方が楽しくて時間が溶けるといういかにもADHD感のある事態に陥りましたが。
あと、最初の1〜2週間は設定との格闘です。それでも、事務に週の丸1日を食われている人や、返信の遅さを謝ってばかりの人なら、作る価値はあると思います。僕は後者でした。
おまけ:一回むずいこと考えずにAIと仲良くなりがてら今日から使えるプロンプト
Claude Codeの仕組みは次回以降に書くとして、チャット版のClaudeでも今日から使える仕分けプロンプトを置いておきます。
(一番最初にやってたようなやつです。)
メールを何通かまとめてコピーして、この指示と一緒に貼るだけです。
あなたは私の秘書です。以下のメールを読んで、次の3つに分けてください。
1. 返信/対応が必要(締切順に並べる。1行で「誰に・何を・いつまでに」)
2. 読むだけでいい
3. 対応不要
判断に迷ったり、情報のないものは「迷った」と正直に書いてください。
迷ったものは勝手に「対応不要」に入れないでください。最後の2行が大事です。これを入れないと、AIは迷ったメールを勝手に「対応不要」へ入れます。当初これで、仕事の相談を見逃しかけてました。
このアカウントについて
ADHDのフリーランスが、Claude Codeで業務を立て直していく過程を、実際に使っているプロンプトや設定ごと公開していくアカウントです。これから書く予定なのは、
AI秘書が起こした事故と、その後始末
メールから「要対応」だけを拾う仕組みの作り方
実際に使っているAIへの指示書
タスク管理を全部任せたら破綻した話
請求書処理で任せるところ、任せないところ
最初は事故集を無料で出す予定です。先に失敗を見てもらったほうが、自分がやるかどうか判断しやすいと思うんで。
最後に。この仕組みを作っても、本業は暇になりませんでした。忙しさは前とあまり変わらないというか、むしろ忙しい気がしてます。変わったのは、何かやってないことや抜けてることがある気がするっていう漠然とした不安です。いまは、AIっていうチームがいるので、不安がまじで減っています。ほんとおすすめ。
