#052 文は人なり、文は文なり、文は情報なり
昨日、主宰している学習コミュニティの受講者さんから、個別にメッセージをもらった。どうやら『そろそろ論語』に関する批判的な感想が某所であがっていたようなのだが、「私は本を読んで感動したので、どうか気にしないでください」という励まし的な意味合いでくれたメッセージだった。
実際にその感想を僕も確認してみたが、ヒトコトでいえば「対象読者ではないのに、こうして買って読んでもらってしまい、なんだか申し訳ありませんでした」と感じるような内容だった。
実際、これは読書という営みの宿命で、本を買って読んでみないことには、その読者にとって刺さる内容なのかどうかなんてわからない。当然ながら、「合わなかった」「思ってた内容と違った」「自分の能力では理解できなかった」「私には不要だった」といった感想はいくらでもありうる。したがって、そのことを表明されたからといって、読書という行為の性質上、これはもう致し方のないことだ。なので、強がりでもやせ我慢でもなく、全く気にするような内容ではなかった。
批判的な感想について想うことは以上なのだが、このやりとりをしていて、以前、別の受講者さんに話した「感想やレビューには3種類ある」という捉え方を思い出した。せっかくなので、この機会に明記しておきたい。
ベースとなる考え方は、4年前に上梓した上記の本でも引用した、小林秀雄のメッセージだ。
「文は人なり」ぐらいの事は誰にでも解っていると言うが、実は犬は文を作らぬ、という事が解っているに過ぎない人が多い。
書物が書物には見えず、それを書いた人間に見えて来るのには、相当な時間と努力とを必要とする。人間から出て来て文章となったものを、再び元の人間に返す事、読書の技術というものも、其処以外にはない。
この言葉を踏まえつつ、というよりも相当に超訳してしまいつつ、「読書の感想やレビューには3種類ある」といった話をしたことがある。
1.文は情報なり: 「内容」しか見えない感想・レビュー
2.文は文なり: 「本という作品」が見える感想・レビュー
3.文は人なり: 「人となり」が垣間見える感想・レビュー
1つ目は、「文は情報なり」レベルの感想で、要するに「この本にはこんなことが書かれていました」というダウンロード的なレビューだ。特にビジネス書の場合、8割がこのタイプになってしまう。
一方、2つ目は「文は文なり」レベルで、本の内容だけでなく、構成や文体、装幀など、本を1つの作品として捉えて感想を書いてくれるケースが該当する。ビジネス書だって本なので、なかには相当にこだわって、つくりこんで本を世に投じている人たちもいる。僕がまさにその一人だ。
これに対して最後の3つ目が「文は人なり」レベルのもので、著者がどういう意図や想いで書いたのかまでを汲んで感想を書いてくれるような場合だ。ビジネス書の感想やレビューでここまで言及してくれるケースはまれだが、著者も人間である以上、意図や背景、願いは当然ながらある。そして、こうした部分が読者に届いたかは、もちろん気になる。
とはいえ、本は読者が好き勝手に読むものである以上、上記3つの良し悪しを言いたいわけではない。ただ、本を書く側として感じていることを素直に書けば、1よりも2、2よりも3のレベルの感想のほうが、やはり嬉しい。
正直、「文は情報なり」レベルの感想を読むと、テイカーにかすめとられてしまったような感覚になり、読むだけで疲れてしまうことがある。
一方、「文は文なり」レベルの感想は、一所懸命に考えた本の構成やこだわりにまで想いを配ってくれていることが伝わり、やはり嬉しい。
加えて、これが「文は人なり」レベルで、僕の意図や想いまで汲み取ってくれていると感じられると、本当に救われるような気持ちになる。
何より、「文は人なり」レベルの感想やレビューを読んでいて嬉しいのは、その感想やレビューを書いてくれている人の「人となり」もまた、垣間見えてくることが多いからだ。お互いに面識がなくとも、時空を超えた情緒的な交流ができているように感じられる。このような感想に触れられることが、本を出す最大の醍醐味だといっても過言ではないくらい、貴重な体験だ。
『そろそろ論語』を読んでくれた人はこれでピンときたと思うが、「文は人なり」レベルとは、要するに「仁を感じられるかどうか」ということだ。もちろん、小林秀雄も書いている通り、こうした読書力を身につけることは「相当な時間と努力とを必要とする」とは思う。
ただ、『そろそろ論語』の第2部をコツコツ実践していく先に待っているご利益の1つとして、今日紹介したような「文は人なり」レベルの読書力が身につけられる。このことは本では書けなかったので、強調しておきたいと思う。このnoteの読者は読書力に興味がある人も多いと思うので、今回の内容が良いきっかけになれば嬉しい。
Amazonレビューがまだのかたは、以下から早速、そろそろ、ぜひ。
それでは、また次回。
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