【絶望の中で見つけた光〜スグル奇跡の物語〜】 最終話
新時代へ手渡される、静かなバトン
この物語は、過去を懐かしむための記録ではない。
ましてや、ひとつの職業を美化するための物語でもない。
これは、
「新時代を迎え、役割が終わること」と「生き方が終わらないこと」
その境目に立った、一人の人間の静かな記録である。
学校という場所で、俺は多くの時間を過ごした。
目立つ役割ではない。評価される仕事でもない。
壊れたものを直し、危ない場所を先に見つけ、誰も見ていないところで、
子どもたちの日常を支える。
それが、俺の役目だった。
子どもたちは、俺がどんな肩書きを持っているかなんて知らない。
でも、困ったときに「そこに居る」存在だということは、
感じ取っていたと思う。
問題を起こす子もいた。荒れる教室もあった。
大人たちが余裕を失う瞬間も、何度もあった。
それでも俺は、逃げなかった。
正しい言葉を選ぶより、先に体が動いた。
危ないと思えば前に出た。
必要だと思えば、黙って手を差し出した。
それが正解だったかどうかは、今でも分からない。
でも、あの場所で、あの瞬間に、そうするしかなかったのだと思う。
やがて、制度は変わった。
以前は、どの学校にもそれぞれ用務員が配置され校舎の修理や安全確認、日々の細かな営繕を、
各学校ごとに担当していた。
しかし、その仕組みは大きく変わり
およそ十校前後をひとつのエリアとしてまとめ、用務員は各学校に常駐せず、拠点に集められることになった。
そして、必要に応じて、
「今日はこの学校へ」「次はあの学校へ」と、エリア内の学校へ派遣される形に変わったのだ!
つまり
一人の用務員が、複数の学校を担当し、日替わりで巡回する制度になった。
そのとき直感した
「俺の役目は終わったのかもしれない」と。
学校には、それぞれの文化や歴史がある。時間をかけて生まれる信頼や
愛着があってこそ、子どもたちに寄り添った仕事ができる。
そう思うと、この改革はどこか切なく感じられた。
そして四年後、俺は学校現場を去った。
寂しさがなかったと言えば嘘になる。悔しさも、なかったとは言えない。
それでも、不思議と心の奥は静かだった。
終わった、という感覚よりも、「次へ渡す時が来た」
そんな感覚のほうが強かった。
守る場所が学校という建物から、もっと広いものへ変わっていく気がした。
人が、自分の役割に気づく瞬間。
誰かが、
「新しい自分になろう」と立ち上がる瞬間。
そこに立ち会うこと。
それが、次の時代で俺に託された役目なんじゃないかと、自然に思えた。
だから、静かに現場を離れた。
逃げたわけでも、諦めたわけでもない。
ただ、バトンを次の時代へ手渡そうと!
今も現場で踏ん張っている仲間たちがいる。
その姿を、俺は心から尊敬している。
そして今
「自分が幸せ、周りが幸せ、そして世界に広がるように」そのモットーとともに、新しい道を歩んでいる。
場所も、形も変わった。
けれど、やっていることは同じだ。
人が、自分の光に気づくこと。
比べるのをやめ、自分の場所で立つこと。
