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『空白の卒業式と、最後の嘘。』は、リア脱の最高到達点か。

SCRAPによる「リアル脱出ゲーム」が大好きだ。
その中でも特に、きださおりさんが手掛けたものには、毎度 心を震わされる。

『忘れられた実験室からの脱出』、
『沈みゆく豪華客船からの脱出』、
そして今作の #青春脱出 シリーズ。

『君は明日と消えていった。』
『さよなら、僕らのマジックアワー』
『忘れ雪の君をさがして』

どれも藤山高校の映画部と紡ぐ物語。
夏、秋、冬ときて、ついに春。

まずもって、
春が最後ってのが、すてきだ。


以下、作品のネタバレを含みます。
未プレイの方は、ここで脱出を。





彼女のつくる作品は、
どうしてこうもエモーショナルで
心が熱くなるのか。


それはきっと、
自分自身を『憧れの主人公』にしてくれるからだ。

自分が助からなければならない。
それは当たり前として。

その上で、"誰か" を救わなければならない。

そんな物語体験が彼女の作品には詰まっている。



自分が読んできた小説や漫画。
憧れてきた主人公像は、
自分だけが助かりたい人間ではなく、

常に、誰かを救う "ヒーロー" だった。


#卒業式脱出

自分が生き残る方法を見つけるのは、
そこまで難しく無いはず。

むしろ今回はとても丁寧な導線が作られていて、
謎解き初心者でも "脱出成功" に辿り着ける設計だったと思う。

・・・けれど。

それは決して、"自分ひとりの力" ではなく、ずっと、ずっと声をかけ続けてくれた彼女がいてくれたからだ。

彼女に救ってもらった命、
今度は彼女を助けなければならない。


それは世界を救うとかそんな大層なことではない。
だからこそ、もっと具体的で、現実的だ。

ラスト10分。
自分が「主人公に変わる」体験がはじまる—



すき。



「嘘をつくときに髪を触るクセ」とか。

その一文を見逃さなかったぞ!
しっかり視ておかねば!

なんて思っていたら
それは解決法とかじゃなくて
ストーリーの根底だったの、
すき。

最後の「鍵」が、
最初からずっと胸についていたのも、
すき。


そして迎える、エンドロール。

これにはもう、
鳥肌がスタンディングオベーションだ。
まさに全身全霊、起立!させられた。

こんな形のエンドロール、
今までにあっただろうか。


参加者みんなの歌声で流れるスタッフロール。


革命的だし、
仮に思い付いたとしても、実現は難しいはずだ。

特に、日本人に "歌わせる" というハードル。



それを成立させるための仕組みも見事だった。



まず、誰もが歌える楽曲であること。

はじめに一度、少しだけ歌わせて、
乗り気にさせたところでカット。

そしてラストはちゃんと
唄わせてもらえる。


この "もらえる" という感覚。
ここに、感情設計の巧さがある。

私の、後ろの席の人たちは
「え!歌えないの?」とか、
「今度は歌えるの!?」とか
ずっと、ざわめいていた。


そういえば、その感じすらも、
どこかなつかしい。

つづきちゃんが話している時に
チャチャを入れている人もいたりして。

「今は静かに聞きなさいよ。」
なんて思ってしまったが、なんか
それすらも、学生時代に、
あの体育館で経験した気持ちだった。


そんな会場の空気に包まれて。
未知なる経験と、懐かしい思い出とが
ぐちゃぐちゃに混ざり合った1時間ちょっと。

謎解きしに来ただけなのに。
なんだこの感情は。


    *  *  *


従来のホール型とは異なり、
テーブルやチーム分けがない。

友達同士はもちろん、
1人でも楽しめる設計。

これもまた、とても美しい。

[リピートできない]という
謎解き公演の(商業的な)課題に対して、
ひとつの解決にもなっている。



そして、最後に手渡される卒業証書。

その裏に書かれていた、
実際の火災時の行動指針

震えた。


SCRAPは、「謎解き」をゲームにし、
物語を与え、体験へと昇華してきた。

そしてついに今作では体験の外側—
現実世界に生きる人間の生存率までも上げにきた。



モバイルバッテリーの発火。
無炎火災という現象。
呼びかけ続けることの意味。

この作品で感じられる恐怖は、
日常でも平然とやってくる。

だからそこ、
そのとき本当に「脱出」しなければならない。


これは、卒業式の だけではなく、
まさに現実での予行演習でもあった。



まるでタートル・トークのような
リアルタイムでのキャラクターとのやり取りもあり
様々な演出面でも魅力の尽きない今作。

たくさん経験を重ねてきた今でも、
これほど新しいと感じられる。

もしこれが、
人生で初めての参加型エンタメだったなら。
その衝撃はどれほどだろう。

次は、初めての人を連れて行きたい。

これは、
『リアル脱出ゲーム』の、
ひとつの到達点だと思う。








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