【小説】Lv22 闇の鍋|先生、冒険の続きを。~31年目のサンスーファンタジー~|第3章 ユーチ覚醒 編
Lv22 闇の鍋
サンスーファンタジーの世界からログアウトして、
少しの時間が経ち、僕の張り詰めていた気持ちも
ようやく落ち着きを取り戻しつつあった。
そんなある日の朝、
僕たちの度肝を抜く大事件が起きる。
いつもはサッカーボールを
追いかけている先生が、
なんと、その大きな体を
小さく丸めるようにして
ある乗り物に乗ってきた。
『ちっちゃなレジャーバイク』
ブブブブブッ
ブブブブブブッ
ブブブブッ…
とエンジン音を響かせながら
当時人気だった、
『小型の原付バイク』で
学校に登場したんだ!
「うわぁ! 先生のバイク、
ちっちゃくて可愛い!」
「先生、カッコいい!」
登校中の小学生たちがスルーするわけがない。
いつも笑顔で、
どこまでも破天荒。
型にはまらない先生のその姿を見るだけで、
僕たちの沈んでいた心は一気に
ワクワクで満たされていく。
そんな先生が、
その日の学活(学級活動)の時間、
教壇に立ってニカッと
笑いながらこう言った。
「次の学活の時間、
好きな食材を
何でもいいから1つだけ
持ってきてくれ!」
「えーっ!? 何をするの〜?」
「学校で料理でもするの?」
教室中がザワザワと騒がしくなる。
すると先生は、いたずらっ子のような
目を輝かせながら、
『 闇 鍋 を す る ぞ ‼ 』
「ヤミナベ――?」
当時の僕たちは、その言葉の正確な意味を
まだ誰も理解できていなかった。
けれど、先生から
「何が入っているか
分からない鍋を、
みんなでスリルを
味わいながら食べるんだ」
という説明を聞いた瞬間、
僕たちの脳内には
一気に楽しそうなイメージが広がった。
「面白そう!」
「イエーーーーーイ!!」
教室のボルテージは最高潮に達した。
そしてついにやってきた、
闇鍋の当日。
先生に言われた通り、
クラスの仲間たちがそれぞれ家から
秘密の食材を持ち寄った。
にんじん、きのこ、きくらげ、油揚げ、
なす、きゅうり、トマト、ピーマン、
こんにゃく……。
パチリ
闇鍋をよりリアルな体験にするための、
雰囲気づくりで、部屋の灯りが消えた。
そこまでは良かったのだが、
誰かが持ってきたしょうゆや、
お酢をいれると、化学反応するかのように、
目の前の大鍋はぐつぐつと煮込まれていく。
僕たちは息を呑んで鍋の中を覗き込んだ。
『闇の鍋』
それは文字通り、
サンスーファンタジーの世界の奥深くにある、
あの不気味な暗闇みたいに、
真っ黒に染まっていた。
「よし、みんな! 食べよう!」
先生の合図で、僕たちは恐る恐る
お椀に取り分け、箸を動かした。
「いっただっきま~す!」
ふぅーーー、
ふぅーーー。
ズルズルッ。
「うわぁ!! おいしくない!!」
「マズい! なにこれ、めっちゃ酸っぱい!」
「誰だよ、きゅうり入れた奴ー!」
あまりの凄まじいマズさに、
4年4組の教室は悲鳴のような大爆笑に包まれ、
お祭り騒ぎの大盛り上がりとなった。
先生も「ガハハ!」と
本当に楽しそうに笑いながら、
口いっぱいに変な味を溜め込んで
悶絶する僕たちの姿を、
パシャパシャとカメラで写真に収めている。
ファインダーの向こうで
弾ける先生のまぶしい笑顔を見つめながら、
僕の胸の奥に、温かいお湯が
じわーっと流れ込んでくるような感覚があった。
闇鍋なんていう、
大人から見たらくだらない、
よく分からないことにも、
みんなで面白がってチャレンジする。
マズくたっていい。
失敗したっていい。
何よりもまず、
そのプロセスを
全力で楽しむこと。
それが、先生が僕たちに
体当たりで教えてくれている
『生き方』なんだ。
目の前でぐつぐつと煮え立つ、
真っ黒な闇の鍋。
この色をじっと見つめているうちに、
僕の脳裏に、あのヨンヨン城の奥に広がる
サンスー族の
不気味な闇が重なった。
あっちの闇は、
あんなに恐ろしかった。
文章題の壁は、
あんなに高くて冷たかった。
でも。 あの世界だって、
この破天荒で優しい先生と、
そして大好きな4年4組の仲間たちと一緒なら、
この闇鍋みたいに「うわ、マズい!」「難しい!」
と言い合いながら、笑って楽しんで
進めるかもしれない。
あの時、『夢中』になって、
時間を忘れて、
勝手に手と頭が動いて、
カクドガニを撃破した
あの最高の瞬間のように。
「もう一度、よしきちと
一緒に戦いたい」
僕の胸の奥で、
小さかった炎が
一気にパッと燃え上がった。
苦手なことから逃げ出して
『ログアウト』しただらしなキングは、
今度こそ、自分の意志で
サンスーファンタジーの世界に
再び飛び込む決意を固めたんだ。
ユーチ、目覚めろ!
Lv22:闇の鍋 完/Lv23へ続く
【💬冒険者の掲示板】
ここまで読んでくださり、
ありがとうございます!
小学生時代の闇鍋は、
本当に印象深く、良き思い出です😆
そこで、
今日のちょっとした質問です!
Q. 「皆さんの学校生活での、
忘れられないイベントを教えてください。」
ぜひ、コメント欄で教えてくださいね〜✨
▼ 第1章・第2章(Lv1〜Lv19)を
一気読みできるマガジンはこちら👇👇👇
