【読書記録】未来を考える上での必読書・斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』
斎藤幸平氏の著書『人新世の「資本論」』を読んだ。
衝撃的な内容……
人類や地球環境だけでなく、自分の今後の方向性についても考えさせられた。
備忘も兼ねて、本の内容・学んだこと・考えたことを記しておこうと思う。
ざっくりとした内容
とても簡単にこの本について紹介するなら、以下の通り。
ノーベル化学賞受賞のパウル・クルッツェンは、人間たちの活動の痕跡が地球表面を覆いつくした年代として、地質学的に現代を「人新世(ひとしんせい)」と名付けた。
地球環境は大きく変化し、人類も存続の危機に直面している。気候危機はすでに始まっている。急激で不可逆な変化が起きて、以前の状態に戻れなくなる地点(ポイント・オブ・ノーリターン)はすぐそこだ。
破局を避けるために
「2,100年までの平均気温の上昇を産業革命前の気温と比較して1.5℃未満に抑え込むこと」
を、科学者たちは求めている。
危機の原因として、鍵を握るのが資本主義。産業革命以降に資本主義が本格始動してから、二酸化炭素排出量が大きく増えたからだ。
資本主義について考え抜いたカール・マルクスのまったく新しい面を発掘しながら、より良い社会を作るヒントを紹介する。
特に注目した箇所5つ
① SDGsは「大衆のアヘン」である!
はじめに― で、まず言われているのがこれだ。
「オイオイ、そこまで言わなくても……」と思うのではないだろうか。
エコバッグを買ってレジ袋を減らす行動もペットボトル飲料を買う頻度を減らす工夫も、無意味どころか有害な善意と言い切る。
それは
温暖化対策をしていると思い込むことで、真に必要とされているもっと大胆なアクションを起こさなくなってしまうから
だと言う。
*
確かに一理ある。
要は、いじめをなくすために人権標語を作って安心し、校内で起きているいじめ行為については黙殺するのと同じ……ということだろう。
つまり「やっている感」を醸し出し、人々を自己満足に陥らせるからだ。
SDGsのためにこんなに良いことやっているんですよ、だから二酸化炭素の排出については勘弁してね、というような企業同士の応酬。
そんなことしているうちに地球に住めなくなる、という話。
*
これは
「やらないよりやったほうがマシ」
「消費者一人ひとりが意識を持って」
という議論で終わりがちな無責任な結論への反発でもあると感じた。
自分もよく書きがちだから耳が痛いが、結局のところほとんど解決策には繋がらないのだ。
② 生産性の罠
資本主義は、コストカットのために、労働生産性を上げようとする。労働生産性が上がれば、より少ない人数で今までと同じ量の生産物を作ることができる。その場合、経済規模が同じままなら、失業者が生まれてしまう。だが、資本主義のもとでは、失業者たちは生活していくことができないし、失業率が高いことを政治家たちは嫌う。そのため、雇用を守るために、絶えず、経済規模を拡張していくよう強い圧力がかかる。
これが生産性の罠、というわけだ。
「生産性向上は良いことだ、効率化って大事だよね」
と思っていたが、この考え方こそが現代的、資本主義的だったのである。
原始仏教や漫画など、金儲けより趣味や学びが好きな私でさえそうなのだ……ということに、我ながら驚いてしまった。
③「脱成長資本主義」は存在しえない
このように危機が悪化して苦しむ人々が増えても、資本主義は、最後の最後まで、あらゆる状況に適応する強靭性を発揮しながら、利潤獲得の機会を見出していくだろう。環境危機を前にしても、資本主義は自ら止まりはしないのだ。
だから、このままいけば、資本主義が地球の表面を徹底的に変えてしまい、人類が生きられない環境になってしまう。それが、「人新世」という時代の終着点である。
それゆえ、無限の経済成長を目指す資本主義に、今、ここで本気で対峙しなくてはならない。私たちの手で資本主義を止めなければ、人類の歴史が終わる。
これが、この本の言いたいことの半分くらいを占める意見だと思う。
*
問題は、利潤追求も市場拡大も、外部化も転嫁も、労働者と自然からの収奪も、資本主義の本質だということだ。それを全部やめて、減速しろ、と言うことは、事実上、資本主義をやめろ、と言っているのに等しい。
つまり「資本主義のもとでは脱成長は不可能」という話。
ビジネスの現場に身を置いたことのある人なら、実感できるのではないか?
”豊かな生活の「本当のコスト」”という言い方も、非常に興味深い。
確かにそうだ。
上下水道もガスも電気も何不自由なく使えて、スマホ片手に電車あるいは車に乗る現代人の生活は、張り巡らされたケーブル網や回線など、大勢の労働や資本によって支えられているのである。
でも、それを私たちは普段どれくらい意識しているだろうか?
④ 資本の「包摂」によって無力になる私たち
政治エリートと技術の専門家に、未来を任せっぱなしという道は楽だからだ。バスターニが正しければ、SNSで仲間たちとつながって、Netflixで映画を見ながら、あとは投票するだけで、高い学費のローンも、雇用の不安定さも、気候変動の影響も心配しなくていい社会になる。
※ バスターニ……イギリスの若手ジャーナリストのアーロン・バスターニのこと。新技術利用によって環境問題が一挙に解決できるとする楽観論を提示する人物。
そうなんだよなぁ……
SNSで選挙の度に盛り上がる「選挙に行こう」運動も確かに正しいのだが、「選挙に行きさえすれば解決」ではないわけで。
人類はかつてないほどの自然支配のための技術を獲得し、惑星全体に大きな影響力を及ぼしている。だが、同時に私たちはかつてないほどに、自然の力を前にして無力になっているのだ。
このことは、環境意識の高い人であっても、同じである。自然や健康を大事にしようとオーガニックなものを選択していても、おそらく多くの人は鮭も鶏肉も、食品売り場に並ぶ、綺麗に梱包された「商品」しか食べられないのではないか。
これはマジで真理。
さらに言えば、例えば食べ物を全て自給自足していたとしても、上下水道・電力・ガス・ネットワークなど、インフラ全部を自分で整えることは不可能ではないか?
仙人のように生きている人(がいるとすれば)を除いて、経済・文明・都市の影響から完全に自由にはなれない。
*
そして人類の扱う分野は既に専門に分かれすぎていて、広い意味では何も知らない・何もできない。いわゆる「専門馬鹿」の状態になってしまっていて、自分の専門以外はてんでダメ。
専門ではない多くの分野についての「分からない」をそのまま放置することが、より気候変動の問題を深刻化させているのではないか?
私が専門家になりたくないのは。これが理由かもしれない。(尊敬する社会学の先生が「何かの専門家と言いたくない」と主張していたせいもあるが)
あくまで広く、一部を深く、Tという字のように知識を掘り進めていきたいと思っている。
⑤ コモンズは潤沢であった
コモンズとは「コモン(共)」とほぼ同義で、斎藤氏は「社会的に人々に共有され、管理されるべき富」としている。
本格的蓄積が始まる前には、土地や水といったコモンズは潤沢であったという点である。共同体の構成員であれば、誰でも無償で、必要に応じて利用できるものであったからだ。
コモンズの考え方自体に反対はしないが、この事実を根拠とするなら「資本の蓄積」だけでなく「人口の増加」ももっと加味すべき項目ではないか?と思った。
現代は昔と比べて圧倒的に人間の数が多い。ただ、地球の面積は有限である。
ならば、持続可能な社会を考える上で人類の総数を一定数までに抑えることも必要なのでは?
もちろん、それが人種差別や国力の競争による決め方であってはならないと思うけれど……
私はこれからどう生きるか?
10~15歳前後の頃、私は環境問題に大いに関心を持っていた。
映画『もののけ姫』・『千と千尋の神隠し』の影響も多きかったと思うが、社会に興味を持つ年齢になって
「え、このままだと未来の人類はやばいんじゃない?なんで大人は皆で協力して行動しないの?」
と気づいたのだと思う。
でも大人になって現実を捉えた時に、
「結局みんな変わりたくないし自分だけ損したくないんだ。たいして危機感を感じていないんだな。別に私が1人で頑張る必要もない、そのままに任せたらいいんだ」
と思い、いつの間にか諦めてしまっていた。
だが、昔よりも自由に好きなことができるようになった今、今後どう生きていこうかと考えた時に
「死ぬのは心底嫌だ、だが不老不死は正直無理だろう。なら自分ではなく後の人間が少しでも長く幸せに生きて、この世の真理を追究するための手助けをするのも悪くないのかもなぁ」
という思いが出てきたのも確か。
子どもを産んだことも多少関係あるのかもしれない。
彼らや彼らの子世代は、今以上に気候変動や地球環境の悪化に悩まされるだろうから。
*
とは言え、簡単なことではないし道のりは厳しい。
今だけでなくずっと先を見越して行動できるか?
自分だけで利益を貪るのではなく、他者に分け与える覚悟があるか?
……が問われる。
ハーヴァード大学の政治学者・エリカ・チェノウェスらの研究によると、「三・五%」の人々が非暴力的な方法で、本気で立ち上がると、社会が大きく変わるというのである。 ~中略~ 資本主義と気候変動の問題に本気で関心をもち、熱心なコミットメントをしてくれる人々を三・五%集めるのは、なんだかできそうな気がしてこないだろうか。
とあるが、「道のりは遠いなぁ」というのが正直な感想だ。
政治家任せでも専門家任せでもなく、1人1人が意思を表明して連帯・協力する。
人間関係で悩んだことのある人なら、それがいかに困難なのか想像がつくのではないだろうか。
ただ気候変動や環境問題は、ごくわずかな富裕層には影響が少ないかもしれないが、私達庶民には「関係ない」では済まない話だ。必ず、今以上に影響が出てくる。
まずは知ることから始め、今後色々と動いてみようかと。
興味がある方がいたら是非この本を読んでほしいし、一緒に何かできればと思う。
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