待ち合わせ場所に適さない
結論から言うと、待ち合わせ場所にセブンイレブンは適さない。
昨日の出来事の中で特筆すべきはこの点だ。
都会に暮らす人ならそんな事は百も承知だと笑うだろうが、田舎の人は分かっていない。家の近くの目印といえばセブンイレブンくらいしかないのだと彼らは言うだろうが、ひとたび高速のインターを降りたら、今やどんな田舎でも三歩歩けばセブンイレブンに当たる。どこもかしこもセブンイレブンである。
*
私の計画は完璧なはずだった。
カーナビに目的地を設定したら、あとは何も考えなくていい。その指示に従うのみだ。高速で3時間。トイレ休憩も鑑み、時間に余裕を持って出発した。
それなのに、急に『セブンイレブンで待ち合わせ』とかタスクを増やさないでほしい。一体どこのセブンイレブンなのだ。
「大きな橋を渡って左側のセブンイレブン」
そう言われても橋だって沢山あるしだな。
第一こちとら自他共に認める方向音痴で、グーグル先生に「南に進みます」と言われても、太陽を見上げて佇むだけなのである。少しでもルートを自己アレンジした日には迷子確定なのに、設定した目的地ではなくセブンイレブンと急に言われましても…一体どこのセブンイレブンなのだ(二回目)
せめてそのセブンイレブンの位置情報を送ってくれ。
そうでなければ基本、
待ち合わせ場所にセブンイレブンは禁止だ。
待ち合わせといえば、ハチ公とか時計台のようにオンリーワンの場所ならば話はわかる。百歩譲って何もない田んぼだらけの田舎でも、工夫次第で
「マギー司郎の黄色い看板の角を曲がって」
と目印を見つけ出すことも可能だ。
私の知る限りでは、マギー司郎の黄色い看板は希少で、オンリーワンに近い。希少性という点でセブンイレブンはマギー司郎に遠く及ばない。
さて道案内で「セブンイレブンの角を曲がったとこ」と言われてピンとくる人がいるだろうか。
セブンイレブン?
あった!あれか?いや左側って言ってたよな…
あった!あそこか?それともあっちか?あらあらこっちか?はて、そっちか?
出棺の時間が迫ってくる。そう…我々は今、葬儀に向かっているのだという事を忘れてはならない。目的地はセブンイレブンではないのに、我々は当該セブンイレブンを探して右往左往している。
このままでは出棺に遅刻し、最後のお別れにお顔を見ることができぬままお骨になってしまうではないか。何のために取り急ぎ高速を飛ばしてきたというのか。
もう待ち合わせをすっぽかして直接現地に行こうと、私はカーナビの指示にのみ従うことにした。みんなで一緒に♪とか子どもじゃあるまいし、ひとりでいけるもん!(カーナビさえあれば)
あと8分で着く。なんとか間に合いそうだ。
するとカーナビの指し示す先に大きな橋があった。
その橋を渡ると……
「あ、セブンイレブン!」(またかよ)
いたーーー!!
待ち合わせコンプリート。(たまたまだけどな)
そうでしょうそうでしょう当然です。ここだよな、知ってたし!橋を渡ったセブンイレブンといえばここだ、うんうん。そんな感じの涼しい顔をしてみせた。
「じゃぁ後ろ付いてきて!」
と言われて付いて行くと、葬儀の会場はそこから1分の場所だった。
(後ろ付いていかなくても分かるって)
カーナビが、私の耳元でこっそりそう言った。
(だよね~ごめん)
私はカーナビにこっそり謝った。
*
火葬場に向かう送迎バスの中で年寄りが言った。
「火葬のあと、戻る際には来た道と違う道を通らないといけない」と。
これは、死んだ人が容易に戻って来て誰かを連れて行ったりしないように、ということらしい。
家に帰る時もなるべく来た道とは違う道を通るのがよいと年寄りは言うものだが、そういう配慮設定はカーナビにはない。
私はお清め塩を肩にふりかけると、カーナビの指示に従い、来た道を戻ることにした。
待ち合わせ場所のセブンイレブンをスルーし、大きな橋を渡り、セブンイレブンと、セブンイレブンと、橋と、セブンイレブンを通過して高速に乗った。
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