なにか
「なにかで使うかも」と、しまってある、袋、箱、包み紙。
たいていの場合、使われることなく、押し入れの肥しとなってしまうのだが、安心してほしい。それはあなたのせいではない。「なにか」という、妖怪の仕業だ。
なにかは、袋や箱を集めさせるほか、これといった悪さをするわけではない。手のひらに納まるくらいの大きさしかなく、力もとても弱い。押し入れに、使われることない袋や箱がたまってくると、それをなにかが使って住処にする。非常に子だくさんで、すぐに袋や箱が足りなくなる。そこで、実際に袋や箱を使えそうなときになると、なにかが人間にその存在を忘れさせる。こうやって、押し入れのなかは、空き箱が積み重なっていく。
なにかは、女性に憑くことが多いようだ。そのため、台所もなにかで溢れている。空瓶やタッパーウェア、お中元やお歳暮。最近では、なにかの愛好家も増えてきているようで、わざわざおびき寄せている節さえある。結婚式の引き出物のカタログで、絶対に使うはずのないものを奥さんが選びだすのは、このためでもある。
もし奥さんのことをなんとなく見ていただけで「なにか」と、もの凄い目つきで見返されることがあったら、安心してほしい。それは妖怪の仕業ではない。きっとあなたのせいだから、胸に手を当てることを、おすすめする。
(終)
