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なぜ1回目は“狂乱”、2回目は起きなかった?〜石油ショックと“お金の使い方”の違い〜

 1970年代の日本を襲った「狂乱物価」。トイレットペーパーを奪い合う人々の姿は、オイルショックの象徴として語り継がれています。しかし、本当の犯人は「原油高」だけではなかったとしたら? なぜ第2次オイルショックではパニックが起きなかったのか。高橋洋一氏と井川意高氏の対談、そして現代の「NISA世代」が抱く違和感から、インフレの正体と経済のカラクリを今こそ解き明かします。

※当記事は、ポッドキャスト「なぜ1回目は“狂乱”、2回目は起きなかった?〜石油ショックと“お金の使い方”の違い〜」を分かりやすくブログ記事化したものです。

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①第一次オイルショックの真犯人:原油高ではなく「お金の出しすぎ」

 一般的に「原油価格が4倍になったから物価が上がった」と信じられていますが、事実は異なります。実は、中東戦争が始まる前から日本のインフレ率はすでに15%に達していました。
 その原因は、政府・日銀による「過剰流動性」、つまりお金の出しすぎです。当時、急激な円高を抑えるために日銀が大規模なドル買い介入を行い、その代金として大量の円を市場に流してしまいました。この「マネタリーベース」の急増こそが狂乱物価の真の燃料であり、原油高はあくまで最後の一押しに過ぎなかったのです。

②なぜ第二次ではパニックが起きなかったのか?:日銀の学習

 1979年の第二次オイルショックでも原油価格は上昇しましたが、第一次のような「狂乱」は起きませんでした。この違いを分けたのは、日銀の政策転換です。
 第一次の失敗を反省した日銀は、第二次ではマネタリーベースを増やさないよう厳格にコントロールしました。「お金の量」という土台を安定させたため、外部から原油高という火種が来ても、社会全体を焼き尽くすような大火事にはならなかったのです。マクロ経済学的に見れば、物価の安定は「お金の手綱」を握る中央銀行の姿勢で決まることが証明された事例と言えます。

③トイレットペーパー騒動の裏側:主婦とマスコミが作った「偽の品不足」

 ミクロの視点では、当時のパニックは「在庫のカラクリ」を知れば説明がつきます。メーカーや流通の在庫は通常1〜1.5ヶ月分程度しかありません。そこに「なくなる」という不安を煽るマスコミの報道が重なり、消費者が「念のため2個」買っただけで、店頭から在庫は一瞬で消えてしまいます。
 元大王製紙会長の井川氏によれば、トイレットペーパーは装置産業であり、生産量は常に一定です。「トイレに行く回数は変わらない」ため、一時的に買い占めが起きても家庭に在庫が積み上がるだけで、長期的にはメーカーの単価を下げる要因にしかなりませんでした。パニックは「お金の余り」と「集団心理」が合致した時に起きる一時的な現象だったのです。

④現代の「NISA世代」にインフレ理論がピンとこない理由

 失われた30年を経験した現代人にとって、「お金が増えればインフレになる」という理論は理解しにくいものです。なぜなら、現代ではお金が増えても、消費ではなく「貯蓄」や「NISA(投資)」という隔離施設に閉じ込められてしまうからです。

 1970年代は「持っているだけでお金の価値が下がる」時代であり、人々は競ってお金をモノに換えました。しかし、デフレマインドが定着した現代では、お金の「流通速度」が極端に落ちています。インフレとは、単にお金の量が増えることではなく、「お金を持っているよりも、今すぐモノに換えないと損をする」という心理の連鎖が起きた時に初めて暴走するのです。

まとめ:インフレのパラドックスを超えて

 インフレの正体は、マクロの「お金の供給量」とミクロの「企業の値付け・消費者の心理」が接合した時に現れる現象です。第一次オイルショックの教訓は、「不安(心理)」という火種があっても、「お金の出しすぎ(マクロ)」という燃料がなければ、狂乱には至らないということです。
 私たちは今、再びインフレの足音を耳にしています。しかし、過去の「狂乱」の原因を正しく理解していれば、いたずらにパニックに陥る必要はありません。大切なのは、流布されるイメージに惑わされず、その裏側にある「お金の動き」を見極めることなのです。

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○音声読み上げの正誤表
6分07秒辺り 円をはって→円を刷って(すって)
9分41秒、9分43秒辺り つよいられて→強いられて(しいられて)
9分48秒辺り きたなんだ→企んだ(たくらんだ)
10分46秒辺り てづな→手綱(たづな)
13分44秒辺り お金をはった→お金を刷った(すった)

○参考資料


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