見出し画像

Starcloud — 宇宙初のBTCマイニング衛星

NVIDIAが支援するスタートアップStarcloudが、ビットコインマイニング用ASICチップを搭載した衛星を2026年10月に打ち上げると発表した。実現すれば、宇宙空間でのBTCマイニングは世界初になる。

1. NVIDIA支援のStarcloud、BTC用ASIC衛星を10月に打ち上げ

ワシントン州レドモンドのStarcloud(旧Lumen Orbit、2024年設立)は、すでに初号機Starcloud-1を2025年11月にSpaceXロケットでLEOに投入済み。搭載したNVIDIA H100 GPUで、2025年12月に宇宙空間でのAIモデルトレーニングに成功している。従来の宇宙用コンピュータと比べて100倍強力なGPUが軌道上で動いた、という実証だ。

Starcloud-1の軌道上映像——太陽パネルを展開した状態(Credit: Starcloud / NVIDIA)

次号機Starcloud-2では、H100に加えてNVIDIAのBlackwellプラットフォームとBTCマイニング用ASICチップを積む。初号機の10倍以上の太陽光発電能力を持たせる計画で、AIクラウド企業Crusoeとの提携も発表済み。2027年初頭から宇宙経由のGPU容量を限定提供する予定だという。

累計調達額は$2,100万。Y Combinator支援スタートアップとして過去最高水準のシードラウンドのひとつで、NFX、FUSE、a16z・Sequoiaのスカウトファンドなどが参加している。

2. なぜ宇宙でマイニングなのか

発想自体はシンプルだ。軌道上なら太陽光が年間99%使える。大気も天候も昼夜サイクルもない。太陽パネル1枚あたりの発電量は地上の約8倍。さらに真空環境での放射冷却により、冷却コストがゼロになる。地上のBTCマイニングが消費する電力は約20GW。その一部でも軌道に移せれば、地上のエネルギー負荷は軽くなる。

ASICチップは1kWあたり約$1,000と、GPUの約30分の1のコスト。軽量で打上げにも向いている。

ただし、課題も見える。ASICチップの世代交代は速く、新型が出れば軌道上の旧型は一気に非効率になる。打上げコストもまだ安くはない。収益性の実証はこれからだ。「テスト段階」であって「産業革命」ではない、という見方が現時点では妥当だろう。

3. 軌道データセンター競争が動いている

Starcloudだけの話ではない。2026年に入って、軌道上にコンピューティング能力を置く動きが一気に加速している。

地球軌道上のStarcloud衛星(Credit: Starcloud / NVIDIA)

SpaceXはFCCに100万機規模の衛星申請を出しており、2026年2月にはxAIとの合併も完了した。Axiom Spaceは2026年1月に軌道データセンター(ODC)ノードを2基展開。Kepler Communicationsも同月に光学中継衛星10機を打ち上げ、計算ペイロードを軌道に投入した。月面にデータセンターを置いたLonestarは、2026年Q4にLEOでの商用サービス開始を予定している。

Starcloud自身も88,000機規模の太陽光駆動衛星コンステレーションをFCCに申請済み(2026年2月)。AIモデルのトレーニングとクラウドコンピューティングを軌道上で完結させる構想だ。

地上のデータセンターが電力と冷却の壁にぶつかるなか、「計算を宇宙に上げる」というアイデアが複数の企業で同時に動き始めている。BTCマイニングはその入り口のひとつに過ぎないのかもしれない。

参考

いいなと思ったら応援しよう!