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40万年前から続く、火の不思議【今日の余録】

集中したいときに、焚き火の音を流すことがある。メラメラという連続音、たまに入るパチッという破裂音、何かがくすぶっているような低く静かな音。実際に火が目の前にあるわけではない。画面の向こうの映像か、あるいは音だけの存在だ。熱も感じないのに、聴いているだけでなぜか心が落ち着く。

きょうの余録は、火おこしの歴史について紹介していた。英国の遺跡で、40万年前に人類が火をおこしていた証拠が見つかったそうだ。黄鉄鉱を使って火花を散らし、継続的に火を使っていた痕跡だという。筆者は、ネアンデルタール人がたき火を囲む姿に思いを馳せていた。

40万年前、最初に火を使おうと決めた人類は、どんな気持ちだったのか。火は熱く、触れれば火傷をする。最初はただ恐ろしかったはずだ。山火事などで燃え広がる炎を見て、近づこうとは思うまい。だが「使ってみよう」と踏み出した誰かがいた。暖をとれること、獣が来ないこと、食材を焼くこと。科学も理論もない時代、すべては「やってみよう」という発想から始まったのだろう。

火はおもに道具として使われてきた。だが、あの音だけでも不思議な力を持つ。目の前で燃えていなくても、熱や光がなくても、パチパチという音を聴くだけで心が徐々に凪いでいく。なにかを燃やすためだけではなく、心を平穏に保つ機能もある火。なんとも不思議な存在だ。

焚き火の音には「1/fゆらぎ」というリズムがあり、脳をリラックスさせる効果があるらしい。燃えている最中に聞こえてくる、あのパチッという特徴的な音は、薪の中の水分が蒸発して弾ける音。乾燥しきった薪では鳴らない。40万年前のネアンデルタール人も、暖を取りながら、同じ音を聴いていたのだろうか。ひょっとして火の音で落ち着くのは、40万年前から紡いできた遺伝子の仕業なのかもしれない。

今日の余録と参考資料

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