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【閑古鳥雑貨店のプク】お客様がいる日に限って、猫砂の音は大きい


春の午後は、音が少しだけ浮きます。

風の音。ドアの鈴。レジで小銭を数える音。
それから、プクが猫砂をかく音。

シャラ、シャラ、シャラ。

今日は、それがやけに大きく聞こえました。

別に、急に大きな音になったわけではないんです。
ただ、店がひまな日の午後は、
こういう小さな音ばかり、妙によく通ります。



開けたままの扉から、やわらかい風が入ってきて、
紙ものの棚がかすかに鳴る。
そういう、いかにも春らしい午後でした。

棚の前でお客様が雑貨を見ていて、私はレジ横で値札を揃えていました。

そのときです。
店の奥から、聞こえてきました。

シャラ、シャラ、シャラ。

あ、と思いました。

猫と暮らしていると、あの音にはいろいろあります。
いつもの感じの日もあれば、
「今日はずいぶん念入りですね」という日もある。

今日はたぶん、後者でした。

プクは何かの仕事を任されたみたいな顔で、
ずいぶん熱心に砂をかいていました。

そんなに丁寧にしなくても。
というか、
どうしてお客様がいらっしゃる日に限って、そうなるんでしょう。



私は心の中だけで小さく慌てて、
顔のほうだけ何でもないふうをしていました。

たぶん、猫と暮らしている人には伝わる気がします。
あの一瞬の、「いまですか」という気持ち。

お客様は一瞬だけ奥のほうを見て、それから、ふっと笑いました。

猫ちゃん、元気ですね

たったそれだけの一言なのに、私はずいぶん救われました。

私ばかりが勝手に慌てていたのかもしれません。





プクは、そんな人間の都合など知るはずもなく、
最後にひときわ大きく、シャラッと砂をかいて、
何事もなかった顔で出てきました。

それから、店の真ん中でひとつ伸びをして、
いちばん陽の当たる場所に、当然みたいな顔で座り込みます。

さっきまで盛大に音を立てていたとは思えない顔です。

「……お疲れさまでした」

思わずそう声をかけたら、プクはしっぽの先だけを動かしました。

たぶん、返事ではありません。
でも、返事だったことにしておきます。



そのあと、私は店の奥へ行って、少し散ったチップを拾いました。

猫砂の粒が大きめだと、こういうとき助かります。
少し散っても見つけやすいし、
細かい砂みたいに、あちこちへ広がっていかない

派手ではないけれど、あとで困りにくい。
暮らしの道具は、そういうところが案外いちばん頼りになります。





春の午後の光の中で、プクはもう半分眠そうでした。

さっきまで、あんなに盛大にシャラシャラしていたのに、
今は「何かありましたかね」という顔をしている。

猫はいいですね。
自分のしたことを、あまり引きずりません。

私はまだ少し引きずります。
でも、プクがこんな顔で座っていると、まあ、いいか、と思います。



そう思って、お湯を沸かして、散った猫砂を拾って、
店の一日がまたそのまま続いていく。
春の午後は、たぶんそのくらいがちょうどいいのだと思います。

よろしければ、あたたかい飲み物でも。
どうぞ、ごゆっくり。






作中に出てきた、プクの猫砂はこちらです。
大きめの粒で散ったあとも見つけやすく、
細かい砂のように広がりにくいところが気に入っています。

気になる方だけ、そっとのぞいてみてください。

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#閑古鳥雑貨店のプク 


※本記事には、Amazonアソシエイトのリンクが含まれています。
※商用利用可能なフリー素材の画像、イラストを使用しています。


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