【看板猫プク日記】看板猫、すり鉢に収まりきらず|猫壱 バリバリボウル
ここは、街はずれの閑古鳥が鳴く雑貨店。
お客様は少ないけれど、看板猫のプクが今日もごきげん。
店主はカウンターでアイスティーをひとくち。
静かな午後に、そっと綴る猫との日々。

はじめてプクが、うちにやって来た日も、
こんなふうに静かな午後でした。
テラスのテーブルの下で、
知らない猫がひとり、まるくなっている。
近づいても逃げるでもなく、
ただ、目だけで「どうも」と言っているようでした。
あの日から、わたしの雑貨店には、
一匹分のあたたかさが加わったのです。

「飼ってるんですか?」とよく聞かれるけれど、
プクは、どこから来て、どこに帰るのか、わかりません。
けれど毎朝、わたしより少し遅れてやってきて、
お昼ごはんの頃には、店先の陽だまりに寝転がっている。
気が向いた日は、棚の上からお客様を見下ろし、
気が向かない日は、テラスのテーブルの下でいびきをかいている。
いつの間にか、
プクはこの店の“顔”になっていました。

そんなプクに、プレゼントをするのは、今回が2回目。
(1回目はコチラ)
「気に入ってくれるかな…」なんて心配していたのに、
バリバリボウルをそっと床に置いたその夜、
プクは当然のように、そこへ腰を下ろしました。
はみ出したお腹が、すこしだけ丸みをこえて、
縁からふわりとこぼれている。
けれど、まるでそれが“正解”みたいに、
どこにも力が入っていなくて、
見ているわたしまで、ふうっと力が抜けるのでした。

毎日は、うまくいかないことの連続です。
お客様がひとりも来ない日もあるし、
仕入れた商品がなかなか売れなかったり、
棚の隅でホコリがふわふわしていたり。
でも、プクは、そんなわたしに
「それでもいいんじゃない?」と
まるくなった背中で語りかけてくるのです。
バリバリボウルから、はみ出したその姿で。
きっちり収まらなくても、だいじょうぶ。
むしろ、はみ出したところにこそ、
やわらかさや、笑いや、物語があるのかもしれません。

プクは今日も、バリバリボウルの中で眠っています。
ときどき、くぅ…と小さく鼻を鳴らしながら。
「また来てくれるといいね」
誰ともなく、そう言ったとき、
風がカランと風鈴を鳴らしました。
わたしはカウンターから立ち上がって、
扉に目をやりながら、そっとつぶやくのです。
「いらっしゃいませ。
うちの猫は、すこしだけはみ出してますけど、
それでもよければ、どうぞごゆっくり」
ご来店、まことにありがとうございました。
プクのおなかの柔らかさ、少しでも伝わっていたらうれしいです。
またお時間ありましたら、ふにゃっと寄ってくださいね。
🐈 これまでの看板猫プクの記録 🐈
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