ウッドデッキで会いまSHOW
初夏の風が吹き抜け、スプリンクラーがキラキラと水を躍らせていた。芝生と木の香りが心地よい休日の午後。俺は庭の一角に積み上げられた木材をチェックしていた。これからウッドデッキをDIYするのだ。
最近、妻は友達とのお稽古ごとに忙しい。高校生の娘も外出することが多くなった。だが、思うのだ。もっと、家族団らんの時間があったほうがいいと。ウッドデッキがあれば、バーベキューでもしながら休日の午後をいっしょに過ごせるはずだ。
だが、ひとつ気になることがある。お隣さんも、ウッドデッキを作り出したのだ。そんな偶然があるだろうか。もしかしたら、うちに対抗して……いや、さすがにそれは考えすぎだろう。だが、負ける気はない。
それから俺は休日を利用して、デッキを作り続けた。毎週のように工具が増えた。それを見るたび、妻の眉間の皺が増えた。ひとり作業は大変だったが、完成したときの妻と娘の喜ぶ顔を思えば、どうということはなかった。
お隣のデッキも着々と進んでいる。休日が違うのか、顔を合わせることはなかった。こちらの作業が進めば、あちらも追い越せとばかりに完成に近づいていく。初夏の風が、心地よく火照った体を撫でていくようだった。
一ヶ月後、ウッドデッキは完成した。木目の並びも美しく、組み立ては寸分のズレもない。お隣も完成させたようだが、もちろん、うちのほうが良い出来だ。
俺はさっそく完成記念にと、妻と娘に休日のバーベキューを提案した。
「今日はピラティスだから帰りは遅いよ。牛丼でも買ってくるから」
「美容院で金髪の染め直ししたいからダメ。また、今度ね」
「そうか、二人とも気をつけてな……牛丼は、ねぎ多めで頼む」
ためらう素振りもなく、二人は出かけてしまった。残された俺はウッドデッキに腰掛けてため息をついた。静まりかえった庭を、やがて夕日が庭を赤く染め上げてい。バーベキューコンロとキャンピングチェアが長い影を落としていた。
ふと、視線を感じた。柵の向こうに、お隣さんが独りで立っていた。じっと、こちらのウッドデッキを見ている。手に持ったビールはよく冷えているのか、水滴が流れ落ちていた。
「この人も……」
隣のウッドデッキを改めて見た。なかなかの出来だ。デッキの上に置かれた工具が、誇らしげに微笑んでいる。彼が汗を流している姿が鮮明に浮かんだ。
引き寄せられるように、俺は彼の方へと歩いていった。
◆
「ただいまー。あれ、お父さん、誰と話してるの?」
「お隣さん。お友だちができたみたいね」
その日、男たちのDIY談義を、二つのウッドデッキは夜遅くまで聞いていた。
(了)
ベタなタイトルからしか得られない栄養がありますよね。
こちらの 隕石おじさん も似たテーマです。
こちらの企画に参加させていただきました。
■セリフ
「ねぎ多めで」
■三題
・牛丼
・金髪
・デッキ
▼投稿ルール
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