【第二章オートバックス編第六話】
第二章|オートバックス編
第六話|初めてピットの中に入った日
タイヤ担当として働き始めて少し経った頃。
少しずつタイヤのサイズも見慣れてきた。
そんなある日だった。
タイヤ担当の先輩に言われた。
「このタイヤ、ピットまでお願い。」
タイヤキャリーに積んで、
初めてピットへ向かった。
普段は売り場から見えるだけ。
中に入るのは初めてだった。
ピットへ入ると、
ちょうどタイヤ交換をしていた。
ジャッキで車が持ち上がる。
インパクトレンチの音が響く。
ダダダダダッ!
ホイールナットが一瞬で外れていく。
「おぉ…。」
思わず見入ってしまった。
車屋さんっぽい。
そんな単純な感想だった。
タイヤを外し、
新しいタイヤを取り付ける。
最後はトルクレンチで
カチッ。
教科書で見るより、
実際に見る方が何倍もかっこよかった。
当時の自分は、
「やっぱりピットっていいな。」
そう思っていた。
でも、その時の自分はまだタイヤ担当。
交換することも、
工具を触ることもなかった。
ただタイヤを届けて、
作業を少し見ていただけ。
それでも十分新鮮だった。
「すみません。」
先輩に呼ばれて我に返る。
「そこに置いといて。」
「あ、はい!」
タイヤを置いて売り場へ戻る。
たった数分だった。
でも初めて見たピットの景色は、
今でも何となく覚えている。
次回予告
「空気圧見といて。」
タイヤ交換だけじゃない。
タイヤ担当の仕事は、
まだまだたくさんあった。
