AIには真似できない"taste"。磨くには、作り続けるしかない
こんにちは、Steveです。
先日、Daniel Pinkというアメリカの作家が、コロンバス美術デザイン大学の卒業式で話したスピーチの動画を見ました。
内容が面白かったので、記事の中にもその動画を貼っておきます。英語が苦手な方のために、簡単になぞっておきます。
Pinkは卒業生を前に、マッシュポテトの話から始めます。子供の頃、家で出てくるマッシュポテトは、いつも同じインスタントブランドのものだったそうです。お湯を注いで、粉を混ぜて、マーガリンを少し。それだけで出来上がる、あの箱入りの味。
9歳のとき、親戚の家に行く機会がありました。そこで出されたマッシュポテトを食べて、衝撃を受けたそうです。なめらかで、コクがあって、それまで食べていたものとは全然違う。どのブランドのものか気になって、こっそりキッチンに忍び込みました。
そこにあったのは、箱ではありませんでした。本物のジャガイモを茹でて、マッシャーでつぶして、バターとクリームと塩を混ぜていた。ただそれだけ。
そのときPinkは気づいたそうです。自分には「taste」があると。
tasteというのは、味覚のことではありません。審美眼、と言った方が近い気がします。何が良くて、何がそうでもないか。その違いが分かる感覚のことです。
ここでPinkは、AIの話につなげます。ChatGPTやClaudeのようなAIは、選択肢を無限に出してくれます。デザインでも、文章でも、コードでも。でも、どれが本当に良いのか、どれがその場にふさわしいのかを判断するのは、人間の仕事のまま残る。AIには taste がないからです。
これを聞いて、なるほどと思いました。北高で探究学習のサポートをしていても、似たようなことをよく感じます。生徒たちは調べもの自体はすぐにできてしまう。検索すれば情報は出てくるし、AIに聞けば要約までしてくれる。でも、その情報のどれが面白くて、どれが薄っぺらいかを見極める力は、また別のところにある気がします。
AIによって失われる仕事があるのは、たぶん本当だと思います。ただ、同時に新しく生まれる仕事もあるはずです。というより、その新しい仕事自体を、誰かがcreativityを使って作っていくことになる気がします。
新しい仕事を作るには、表面的なスキルよりも、物事の仕組みや構造を理解していることが土台になる気がしています。
仕組みが分かっていれば、今はまだない仕事でも、自分で作り出せる可能性が広がる気がします。
北高の生徒たちにも、この部分を持って帰ってほしいと思っています。目の前の知識を覚えることより、なぜそうなっているのか、どういう構造でそれが成り立っているのかを考える癖。それがあれば、今は存在しない仕事も、自分で見つけられるようになるかもしれません。
Pinkはさらに、tasteは座学だけでは身につかないと話していました。tasteは作ることでしか育たない。見るだけ、聞くだけでは足りない。手を動かして、失敗して、恥をかいて、そこから初めて分かってくる感覚がある。
これは、僕が学生によく話すこととも重なります。打席に立つことの大事さです。
大谷翔平は、打率にすると3割前後です。裏を返せば、7割は打てていません。それでも打席に立ち続けています。むしろ、打席に立つ回数が多いから、あの打率が成り立っている。
tasteも同じような気がします。何かを作って、外に出して、うまくいかなかったことに気づいて、また作る。その繰り返しの中でしか、自分のtasteは磨かれていかない。逆に言えば、打席に立たない限り、tasteを鍛える機会そのものが訪れません。
構造を理解する力も、きっと同じです。実際に手を動かし、うまくいかない理由を考える。その繰り返しの中でしか、物事の仕組みは本当の意味では見えてこない気がします。
AIが選択肢をいくらでも出してくれる時代だからこそ、何を選ぶかの感覚と、その裏にある構造を理解する力が、これまで以上に価値を持つのかもしれません。
だから僕も、考えるだけで満足せず、できるだけ打席に立ち続けたいと思います。
あなたは最近、どれくらい打席に立っていますか。
この記事が誰かのヒントになれば嬉しいです。
