見出し画像

要介護認定、調査員の前で「元気に振る舞って」しまう問題の対処法5選

要介護認定の調査当日。実家に到着した調査員を前に、母は背筋を伸ばし、しっかりと受け答えします。「お名前は?」「○○です」。「今日は何月何日ですか?」「4月の……えっと、20日」。歩行テストも、ふらつきながら自力で歩き切ります。

1ヶ月後、届いた通知は「要支援2」。普段は夜中に3回起きて徘徊し、食事もトイレもほぼ全介助なのに。必要なサービスが受けられない現実が、家族を待ち構えていました。

要介護認定の結果に納得できず、区分変更申請で認定調査を受け直すケースは後を絶ちません。原因のひとつが、「本人が調査員の前で普段より元気に振る舞ってしまう」問題です。

要介護度1段階の違いで、月数万円変わります

介護保険法(平成9年法律第123号)に基づく要介護認定は、7段階(要支援1〜2、要介護1〜5)に分かれており、段階ごとに利用できるサービスの区分支給限度基準額が決まっています。

1段階の違いで月数万円の差が生じる。具体的な区分支給限度基準額はこうです。

  • 要支援1: 約5万円

  • 要支援2: 約10万5千円

  • 要介護1: 約16万7千円

  • 要介護2: 約19万7千円

  • 要介護3: 約27万円

  • 要介護4: 約30万9千円

  • 要介護5: 約36万2千円

要支援2と要介護1の差だけで月額約6万円。年間にすれば72万円もの差になります。この限度額を超えた分は全額自己負担になるため、判定が1段階違うだけで家計への影響は非常に大きいのです。

認定調査で失敗しないための、5つのポイント

本人が「大丈夫です」「できます」と答えてしまうのは、認知症の人にも、高齢者にも共通する心理です。「家族に迷惑をかけたくない」「自分はまだしっかりしている」。その思いが、実態より軽い認定につながります。以下の対策で、防げます。

1. 家族が必ず同席する

本人だけだと普段できないことも「できます」と答えてしまうことが多いです。家族が横で補足説明することで、普段の実態が調査員に伝わります。介護保険法施行規則第35条に基づき、認定調査は本人の状態を正確に把握するために行われるもの。家族の補足は正当な行為です。

2. 困りごとを事前にメモにまとめる

「大変です」では調査員に伝わりません。具体的に、数字と頻度で書いてください。

  • 「夜中に3回起きてトイレに付き添っている」

  • 「入浴は全介助で、週3回デイサービスを利用」

  • 「先月2回転倒し、うち1回は救急搬送された」

  • 「同じことを1日に10回以上聞いてくる」

調査票の74項目に対応する形で整理しておくと、さらに効果的です。

3. 主治医に事前に相談する

認定は調査員の報告と主治医意見書の2つで審査会が判定します。主治医にも普段の様子を伝えておけば、意見書の内容が実態に近づきます。

4. 調査日は「良い日」を避ける

体調が良い日に調査を受けると、普段より軽い判定になりがちです。特に認知症の場合、日によって症状の波が大きいため、調査日の選定も重要な要素になります。

5. 普段の介護記録をつけておく

1〜2週間分の介護日誌があると、調査員に日常の実態を客観的に伝えられます。「火曜日の夜中2時、徘徊」「金曜日、失禁を3回」。この記録の重みは、言葉の10倍です。

結果に納得できなければ、区分変更申請ができます

介護保険法第29条に基づき、認定結果に不服がある場合は区分変更申請で新たに認定調査を受け直せます。申請はいつでも可能で、ケアマネジャーに代行してもらえます。

別の調査員が担当するため、前回と結果が変わることは珍しくありません。実際、1回目で要支援2だった方が区分変更申請で要介護1になるケースは多いです。前回伝えきれなかった内容を、メモや日常生活の記録とともに提示してください。

なお、区分変更申請とは別に、都道府県の介護保険審査会に対する審査請求(不服申立て)も可能。こちらは認定結果の通知を受けた日の翌日から3ヶ月以内に行う必要があります。

介護費用の現実と、負担軽減の制度

介護にかかる費用の平均は、総額約542万円(生命保険文化センター2024年度調査)。

  • 一時費用(住宅改造・介護ベッド等): 平均47万円

  • 月額費用(在宅): 平均5.3万円

  • 月額費用(施設): 平均13.8万円

  • 平均介護期間: 4年7ヶ月

費用を抑えるために知っておくべき制度が、2つあります。

高額介護サービス費(介護保険法第51条)は、1ヶ月の自己負担が上限額を超えた分が払い戻される制度。一般的な所得の世帯で自己負担上限は月額44,400円。申請しないと払い戻されないので、ケアマネジャーに確認してください。

特定入所者介護サービス費(介護保険法第61条の2)は、所得が低い方が施設に入所した際の食費・居住費を軽減する制度。住民税非課税世帯であれば対象になる可能性があります。

これから認定調査を受ける方へ

要介護認定は、介護生活の入り口です。その後のサービス内容と費用を大きく左右する、最初の最重要ステップ

ポイントは5つ。家族が同席。具体的なメモ。主治医との事前相談。調査日は「普通の日」を。介護日誌。これらを揃えるのに、そんなに大きな手間はかかりません。でも、その差が月に数万円、年に数十万円の違いになります。

介護は長期戦です。使える制度は全部使って、介護する側もされる側も無理のない体制を整えてください。


介護の手続きの順番や期限を自動で整理してくれるサイトをぜひご利用ください。質問に答えるだけで、あなたに必要な手続きだけをリストアップします。

介護の手続きに関するその他のトラブルはこちら:

いいなと思ったら応援しよう!