【妄想】憑依型ディスクレビュー#04:IRON MAIDEN / The Number Of The Beast



🎧 はじめに

【妄想】憑依型ディスクレビューへようこそ。この連載は、AIにさまざまな人格を憑依させ、1枚の名盤を多角的な視点と表現で捉えなおしてみようという、実験的かつ面白げな試みです。
このコンテンツに関する詳細はこちら

前回のPerfumeから今回は再びMETAL界へと返り咲きます。第四回目に取り上げるのは、JUDAS PRIESTと並ぶ正統派HEAVY METALの権化、IRON MAIDENの3作目にあたる『The Number of The Beast』です。

本作はボーカルが初期2作を担当したポール・ディアノから、より幅広い表現力を持ったブルース・ディッキンソンへと交代し、今に至るIRON MAIDENの作風を決定付けた超重要作と言われています。

が、ボーカルのスタイルが大きく変化したことから、初期の荒々しさを愛する「ディアノ派」と、劇的なメタルへと大幅なパワーアップに成功したことを良しとする「ブルース派」の対立が生まれた作品でもあります。
そのあたりを各レビュワーがどういうスタンスで描くのか、ご注目ください。


Case 01:含蓄に溢れるベテラン重鎮評論家の場合

1980年、あの衝撃を私は今も忘れない。NWOBHMという名の奔流がイギリス全土を、そして私の魂を席巻していたあの頃、アイアン・メイデンのデビュー作を手にした時の震えるような興奮だ。

そこには、ポール・ディアノという男が撒き散らす、ストリートの泥臭さとパンキッシュな刺々しさが同居していた。初期2作に刻まれていたのは、明日をも知れぬ若者たちの、危うくも熱い「野心」そのものであった。

しかし、1982年。我々の前に提示されたこの『The Number Of The Beast』は、それまでの「野良犬の咆哮」を、一変して「鋼鉄のオペラ」へと昇華させてしまった。

新たにマイクを握ったブルース・ディッキンソン。彼の、天を突くようなハイトーンと演劇的なまでの表現力を初めて聴いたとき、私は正直に言えば、戸惑いを隠せなかったのだ。

ディアノの持っていた、あの饐(す)えた路地裏の匂いが、あまりにも鮮やかに磨き上げられた「様式美」へと上書きされてしまったのだから。

だが、認めざるを得ない。アルバムの幕が開け、「Invaders」の突風から、表題曲「The Number Of The Beast」の劇的な展開へと導かれるとき、私はスティーヴ・ハリスという男の恐るべき先見性に平伏した。

彼は知っていたのだ。アイアン・メイデンがイギリスの地方都市の英雄で終わるのか、それとも世界を統べる王座に就くのか……その分岐点が、ブルースという「翼」を得ることだったのだということを。

「Hallowed Be Thy Name」を聴くがいい。この壮大なる叙事詩を歌い上げ、スタジアムを埋め尽くす何万もの群衆を熱狂の渦に叩き込めるのは、やはりブルースを置いて他にいなかった。

ディアノの脱退を惜しみ、初期の荒々しさを「真実」だと信じる私の中の懐古主義者が、今も心の片隅で小さく嘆いているのは事実だ。しかし、この作品がヘヴィ・メタルを「一過性のブーム」から「永遠の芸術」へと押し上げたという歴史的功績を前に、私はただ、その圧倒的な魔力に屈服するしかないのだ。

あれから40年以上。あ〜ちゃん(Perfume)の結婚を祝う2026年の今、再びこの盤をターンテーブルに乗せる。そこにあるのは、単なるメンバー交代の記録ではない。

一つのバンドが「伝説」になるために避けては通れなかった、残酷なまでの脱皮の記録である。私は今、あえてポールの面影を振り切り、ブルースの咆哮と共に地獄の数字を数え上げるとしよう。それこそが、メイデンと共に時代を歩んできた私の、誠実な「聴き方」なのだから。


Case 02:ポジティブ思考でホメ倒す雑誌編集者の場合

もう、冒頭の「Invaders」が始まった瞬間に勝利確定ですよね!とにかく、ブルース・ディッキンソンの加入はアイアン・メイデンにとって、いや、ヘヴィ・メタルの歴史にとって最高にハッピーなニュースだったと私は断言しちゃいます!

もちろん、初期のディアノの野性味もカッコいいですよ?でも、ブルースのあの、どこまでも突き抜けていくような、太陽まで届きそうなハイトーン・ボイス!あれを聴いてしまったら、もう元には戻れません。

まさに「鋼鉄の翼」を得たっていう感じで、聴いているだけで自分の背中にも羽が生えて、スタジアムの空高く舞い上がっちゃうような解放感があるんです。

特にタイトル曲の「The Number Of The Beast」!あの有名なシャウト、聴くたびに「キャーッ!」って鳥肌が立っちゃいます。

ライブでは我を忘れ、拳を突き上げてシャウトしてしまう「666」!!!おどろおどろしいはずの数字が、ブルースが歌うと最高のエンターテインメントに変わる。これこそが音楽の魔法。メタル初心者だって一瞬で虜にするパワーなんです。

アーティストが「新しい自分」に脱皮して、世界へ羽ばたいていく瞬間って、本当に美しいと思うんです。メイデンにとってのそれは、間違いなくこのアルバムでした。

この盤でブルースという最高のピースがハマったからこそ、彼らは世界中で愛される「絶対王者」になれたんですよね。

ラストの「Hallowed Be Thy Name」のドラマチックな展開には、もう涙腺崩壊です。最高にエモーショナルで、最高にパワフル!やっぱりメイデンは、ブルースの歌声と共に永遠に走り続けてほしい。もう、大好きすぎて、今夜は「魔力の刻印」をループして寝かせてくれそうにありません!(笑)


Case 03:ケチをつけるのが生きがいの偏屈評論家の場合

実を言えば、私はこのアルバムを好意的に評価している連中とは、美味い酒を飲める気がしない。

本作『The Number Of The Beast』は、アイアン・メイデンというバンドが、路地裏の獰猛な野獣であることを辞め、見世物小屋の訓練された象に成り下がった記念碑的な作品だ。

新たに加わったブルース・ディッキンソンという男の歌唱は、なるほど技術的には「完璧」だろう。しかし、その完璧さこそが落とし穴なのだ。

ディアノの喉にへばりついていたあの不穏な殺気、いつ暴発するかわからないパンキッシュな焦燥感は、ブルースのオペラチックなハイトーンによって綺麗に脱臭され、万人受けする「エンターテインメント」へと去勢されてしまった。

スティーヴ・ハリスのベースも、ここではあまりに雄弁すぎて鼻につく。まるですべての拍動を計算し尽くしたかのようなあの執拗なギャロップ・リズムは、音楽的なダイナミズムというよりは、冷徹に組まれたプログラムのようだ。

タイトル曲の「666」という数字の扱いも、あまりに芝居がかっていて失笑を禁じ得ない。これを聴いて「悪魔的だ」と興奮している連中は、B級ホラー映画の作り物(プロップ)の血糊を見て震えている子供と同じだ。

確かに、本作によって彼らは世界を征服した。しかし、それは「ロックの危険性」を「様式美という名のルーチン」に引き換えた結果に過ぎない。

ラストの「Hallowed Be Thy Name」に至る劇的な構成にしても、聴き手が望む通りのカタルシスを、望む通りのタイミングで差し出すという、実に商売上手な手口だ。

私に言わせれば、メイデンの「魔力」はこの盤で完成したのではない。この盤で「消費」され始めたのだ。あとの40年は、その精巧な再放送に過ぎない。


☕️ 休憩時間(MVでも見ながら一息)


意外とオフィシャルのMVが無くて残念ですが、気を取り直して完全ネタ枠コーナーのお時間です。今回は遂にレビュワーが3人とも入れ替わりました。好きな人にはたまらない強烈な個性派揃いの布陣です。ではどうぞ!


Case 04:怪奇と幻想を愛でる、耽美派推理作家の場合

アイアン・メイデン。その「鋼鉄の処女」という名からして、すでに倒錯したエロティシズムと拷問具の冷たい手触りを感じさせますが、本作『魔力の刻印』に至り、彼らはついにその本性を現したようです。

しかし、私はあえて申し上げたい。新たに迎えられたブルース・ディッキンソン氏の歌声は、あまりに白日のもとに晒されすぎている。彼のハイトーンは、まるで真昼の広場で朗々と演じられるオペラのようで、そこには陰影というものが欠けているのです。

私が愛してやまないのは、初期二作に横溢(おういつ)していた、あのポール・ディアノ氏の「饐(す)えた匂い」なのです。

彼の声には、霧深いロンドンの路地裏で、外套の襟を立てて獲物を待つ殺人鬼のような、あるいは覗き窓の向こう側で蠢く生理的な嫌悪感と魅惑が同居していました。あれこそが、怪奇と幻想の入り混じった、真の「暗黒のロマン」であったはずです。

本作のタイトル曲を聴くがいい。冒頭の語りからドラマチックな叫びへと繋がる構成は、なるほど精巧な「パノラマ島」の仕掛けのように見事でしょう。

しかし、その整然とした様式美のせいで、かつて彼らが持っていた「指紋の付いた生々しい恐怖」は、どこか遠くへ押しやられてしまった。

私にとっての『魔力の刻印』とは、美しすぎるハイトーンで塗り潰された、豪華絢爛な「偽りの地獄」に過ぎません。

私は今でも、ディアノのあの薄汚れた、しかし本物の血の匂いがする歌声を求めて、初期の盤という名の「鏡地獄」を彷徨い続けているのです。

ああ、あの不潔で、残酷で、甘美な初期のメイデンこそが、私の「屋根裏の散歩者」としての魂を震わせてくれたというのに……。


Case 05:深淵の恐怖を綴る、名状しがたい宇宙的ホラー作家の場合

私は今、震える手でこの手記を認(したため)めている。この盤、人々が『魔力の刻印』などと呼ぶ冒涜的な円盤を耳にした瞬間から、私の正気は音を立てて崩れ去ったのだ。

タイトル曲冒頭の不吉な語りを聞くがいい。それは人間が知る由もない、太古の海溝の底で蠢く旧支配者たちが、暗黒の儀式で唱える呪文そのものではないか。

そして、そこへ追い打ちをかけるように響き渡るブルース・ディッキンソンの叫び……。おお、なんという冒涜的な不協和音か! あのハイトーンは、もはや人類の喉から発せられるべき音ではない。

それは非ユークリッド幾何学的な狂気を孕み、天球の音楽を汚染しながら、我々の魂を永久の深淵へと引きずり込もうとしているのだ。

特に、あの「666」という数字の反復。無知な民衆はこれをエンターテインメントとして消費しているようだが、私は知っている。これは、かのヨハネの黙示録に記された獣を呼び覚ますための、名状しがたい振動への誘い水なのだということを。

スティーヴ・ハリスの奏でる、あの執拗なまでの地響きのような低音は、星々が正しい位置に並んだ瞬間に地上を蹂躙する、巨大な触手どもの足音に他ならない。

私はこの盤を聴き終えた後、自らの書斎の窓をすべて塗り潰さずにはいられなかった。あの音を一度でも脳裏に刻んでしまった者は、もはや二度と平穏な眠りにつくことはできない。

メイデンの奏でる旋律は、魔力などという甘美な言葉で片付けられるものではない。それは、宇宙の深淵から届く、名状しがたい「終焉の予兆」なのだ。ああ、窓に! 窓に「エディ」が!


Case 06:ビールと焚き火を愛する、昭和ケーハク体な冒険文筆家の場合

どどーーん! ぎゃおーーん! なんだ、この音の塊は! 今回のお題は「アイアン・メイデン」なるバンドなのだ!

メタルというキョーボー的音楽的ナニカのわりと初心者的なワシは心してかかったのであるが、いやはや、これはもう「モーレツ的ドロドロの鉄屑(てつくず)ラッシュ」なのだ。

冒頭の「Invaders」からして、いきなり耳の穴に熱い鉛をドバドバーッと流し込まれたような衝撃なのだよねー諸君。グネグネとのたうち回るギターに、馬の暴走みたいなバインバインなベースの音が絡まって、ワシの脳みそは一瞬でアラスカの原野まで吹っ飛んでしまったのだ。ガハハハハ、まいったなー。

特に新入りのブルース・ディッキンソン君。この男の声がまた、トンデモ的というか、成層圏まで突き抜けるようなギトギトのハイトーンなのだ。

前任のポールの野郎の、あの「近所の安いラーメン屋の頑固ひとすじ八十年親父」みたいな薄汚れた野良犬的焦燥感も捨てがたかったのだが、このブルース君の、やたらとキラキラした、でもどこか狂気的な「ワカメスキスキ石立鉄男式ビーム砲絶賛発射中」とでも呼びたくなるような歌声を聴いていると、「あー、もう、どうにでもしてー!」と叫び出したくなる欲求を抑えられないのである。

タイトル曲の決めフレーズ「666」なんて、もう最高にバカバカしくて、最高にカッコイイのだ。ワシも思わず、昼間からキンキンに冷えたビール(大瓶に限る!)をグイグイやりながら、近所のオババが腰を抜かすくらいのボリュームで聴いてしまったのだ。ギトーーッ、バシャーーッ、ドカドカーーッ!誰にもモンクは言わせないんだかんなっ!けっ!!

でもね、最後の「Hallowed Be Thy Name」まで聴き終えると、なんだか妙に、しんみりした気分になってしまったよワシ。これだけドタバタと騒いでおいて、最後には「死ぬのは怖くない」なんてドラマチックに歌い上げられたら、暗い四畳半の端っこでもやし炒めの焦げたので一喜一憂しているみみっちい中年男であるワシは、ただただ圧倒されて、夕暮れの空を見上げて涙枯れます午後6時というしかないのであるよ。

やれやれ、メタルというものは、焚き火の火をじっと見つめている時の「原始的な畏怖のキモチ」に近いものがあるのかもしれない。なーんちゃって。柄にもないこと言っちゃったな、俺。

よーし、もう一本ビールだ! ぐびぐび飲んじゃうもんね!わっはっは!


🎧 総括:僭越ながらまとめます

実は私がIRON MAIDENに出会ったのは次の次にあたる『Powerslave』でした。なので1stから4th『Piece Of Mind』までのアルバムは完全に後追いで聴いたわけです。

『Powerslave』のスピード感や硬いプロダクションに慣れた耳で過去作を聴いた時、ポール時代の1stと2ndはディアノのボーカル・スタイルも相まって「荒々しくてヘヴィメタルの持ってる危険なムードや若さ故の切迫感のようなものが迫ってきて、めちゃカッコイイ!」と感じ、すぐに気に入りました。

続いて聴いたのが本作。ブルースの声には慣れていたこともあって全くすんなり受け入れることが出来ました。『Powerslave』と比較すると、2ndの特徴を受け継いだ攻撃的なムードをある程度残しつつ、バンドとして次の段階へ大きくステップ・アップしたことがわかり、「なるほど、これは既存のファンからも歓迎されたわけだ」と思ったことを覚えています。

ただ、やはりディアノとブルースのスタイルの違いは顕著なので、リアルタイムで聴いていたら、きっと偏屈な私なら「ディアノ時代の2作こそが本当のメイデンである!」とか鼻息荒く主張していた気がします(笑)。


今回はマンネリ化を避ける意味で、思い切ってネタ枠を全員交代させてみましたが、いかがだったでしょうか。作家系で統一感を出してみようと思いつつ、題材が『魔力の刻印』ということでまずはそれらしき表現をしてくれそうな方を2名。

加えて、個人的に敬愛するあの方の懐かしい時代へのオマージュ。やっとそれなりに納得のいく内容に仕上がったので、満を持して登場させました。あの頃のご本人の極まった完成度には永遠に辿り着けませんが、きっとわかる人には喜んでいただけるかなーと思います。

それではまた!



いいなと思ったら応援しよう!