農地に建築したい。農地転用許可について
「農地を持っているから、そこに家を建てようと思って」
「知り合いの農地を買って、家を建てたい」
この相談を受けるとき、最初に確認することがある。「その農地は転用許可が可能ですか?」という質問だ。
農地の種類によって、転用が原則OKのものもあれば、ほぼ不可能なものまである。
また、登記簿の地目が「田」「畑」などの農地である場合は、原則として売買が不可能である。
そしてこの「農地の種類」を知らないまま建築しようとして途中で頓挫するケースが、今も後を絶たない。
まず「届出」と「許可」を分ける
農地転用の手続きは、農地が所在するエリアによって大きく変わる。
市街化区域内の農地
市街化を進めることが決まっているエリアのため、農地転用は原則として歓迎される。農業委員会に「届出」を提出するだけで転用が可能だ。
許可申請は不要で、受理通知書が届けば転用できる(通常数週間程度)。
それ以外の農地(市街化調整区域・非線引き都市計画区域・都市計画区域外)
一部では届出でもOKな地域もあるが、原則として「許可制」になる。
農業委員会を通じて都道府県知事の許可が必要となるのだ。
ここでよく誤解される点がある。「非線引きだけど用途地域内だから届出でいいんじゃないか」という判断だ。
だが、届出で済む(許可不要)地域も少数ではあるようだが、原則として届出は市街化区域のみである。
非線引き区域には用途地域が指定されていても、原則許可申請が必要になる。
ただし用途地域内の農地は「第3種農地」と判定されやすく、許可は通りやすい傾向がある。
手続きが変わるだけで、どちらが簡単かはまた別の話だ。
農地は5つに区分される。転用可否の分かれ目
許可が必要な農地の場合、次に「立地基準」の判定がある。農地を5つの区分に分類し、その区分によって転用の可否が決まる。
【農振農用地(青地)】
市町村が農業振興地域整備計画で「農用地区域」に指定した農地。通称「青地」。
→ 原則不許可。農地転用を行うには、まず「農振除外(農用地区域からの除外)」手続きが必要。これが非常に困難(後述)。
【甲種農地】
土地改良事業等の対象となった農地(事業完了後8年以内)など、特に条件のよい農地。
→ 原則不許可。土地収用法上の公益事業のみ例外的に許可。
【第1種農地】
おおむね10ヘクタール以上の集団農地など、良好な営農条件を備えた農地。
→ 原則不許可。公益性の高い事業のみ例外。
【第2種農地】
駅からおおむね500メートル以内など、市街地化が見込まれる農地。または生産性の低い小集団農地。
→ 代替地がない場合は許可される可能性がある。代替地があれば不許可になることも少なからずある。
【第3種農地】
おおむね300メートル以内に鉄道の駅があるなど、市街地または市街地化傾向が著しいエリアにある農地。
→ 原則許可ではあるが、転用がもっとも認められやすい区分。

「自分の土地がどの区分か」は、農業委員会に相談しないと確定しない。
農振農用地かどうかは市区町村の農用地区域図で確認できる場合もあるが、第1〜3種の判定は個別に審査される。
まず相談に行くことが先決だ。

「農振除外」農地では最大のハードルとなる
農地区分の中でも、最も難易度が高いのが「農振農用地(青地)」の扱いだ。
農振農用地の農地転用を行うには、転用許可申請の前に「農振除外」手続きが必要になる。これが認められなければ、農地転用の申請自体ができない。
農振除外には以下6つの要件をすべて満たす必要がある。
①代替性:他に活用できる土地がなく、この農地でなければならない理由があること
②必要性・緊急性:不要不急の用途でないこと
③最小限面積:申請面積が必要最小限であること
④農業振興計画との整合:市町村の農業振興地域整備計画の達成に支障がないこと
⑤周辺農地への影響がないこと
⑥担い手への農地集積への支障がないこと(令和7年改正で明確化)
特に①の「代替性」が厳しい。周辺に宅地や山林があれば「そちらを使えばいい」と判断される。
さらに手続きの問題がある。多くの市区町村で農振除外の受付は年2〜3回しかない(年1回のところもある)。受付を逃すと次まで半年以上待つことになる。申請から除外決定まで6ヶ月〜1年、県との協議次第では1年以上かかるケースも珍しくない。
農振除外 → 農地転用許可申請 → (必要なら)開発許可・盛り土規制法の許可
この流れだと、スムーズにいったとしても着工まで最短でも1年ほどはかかる計算になる。

農地転用許可の手続きの流れ(一般的な例)
許可が必要な農地転用の場合、おおむね以下のような流れになる。
農業委員会への事前相談(農地区分の確認・必要書類の確認)
申請書類の準備(土地の登記事項証明書・位置図・公図・現況測量図・転用計画図・設計書等)
農業委員会の締め切りに合わせて申請書提出(多くは毎月1回締め切り)
農業委員会総会で審議・意見書を知事に送付(役場が対応)
都道府県知事(または指定市町村長)による許可(意見書受理後2〜3週間)
締め切りから許可まで、おおむね6週間程度が標準的な処理期間だ。ただし、農業会議への意見聴取が必要なケース(大面積の場合等)や地域によってはさらに長くなる。
手続きの詳細は市区町村によって異なるため、まず農地の所在地の農業委員会に相談することが最初のステップになる。
農地を売買する場合の障壁
農地地目「田」や「畑」は、原則として売買できない。
原則としたのは、農家資格者については売買できるためである。
農地法とは、農業を推進し、農地を守るための法律なのだ。
そのため、農地を農家資格のない一般の人には売買できない。
もちろん、所有権移転登記もできないのである。
そのため農地を売買する場合には、農地転用許可を取得し、農地以外にする計画とともに売主(譲受人)を設定し申請することとなる。
この農地転用許可証を添付することで、造成工事の着工が可能となり後の地目変更登記や、譲受人への所有権移転登記が可能となる。
売る前、建築行為や造成行為を行う前に必ず農地転用許可を取得する必要があるため注意が必要だ。
非農地証明「現況が農地じゃない」という事実の確認
登記地目が田・畑のままでも、実態として農地でなくなっている土地がある。
長年の耕作放棄で樹木が繁茂し、農地に戻すことが物理的に困難な状態になっているケースだ。
このような土地については、農業委員会が「農地法上の農地ではない」と証明する「非農地証明」を発行する場合がある。
非農地証明が発行されると
農地法の手続きなしに所有権移転・転用ができる
地目変更登記(田→山林・雑種地等)ができる
発行の目安は「20年以上の耕作放棄」「農地への復元が物理的に困難(樹木の繁茂・森林化等)」とされる。
ただし、意図的な放置・無断転用については発行されない。
ただし注意が必要だ。非農地証明を受けても、都市計画法・農振法の規制は変わらない。
市街化調整区域の建築制限も、農用地区域の開発制限も、そのまま継続して適用される。「農地法から外れた」ことと「何でも建てていい」は別の話だ。
また、非農地証明を基に地目変更登記を行う場合は、現況地目が農地以外に変更された事実も必要となる。
例えば、農地に草が生い茂った状態は、草を刈れば農地に戻るため原則地目が変わったとは言えない。
住宅を建築した。駐車場として整備した。このような場合のみ地目変更登記が可能となる。
また、農地の場合は所有権移転登記も制限されることを前述したが、非農地証明書を添付することで所有権移転登記が可能となる。
「複数の許可が絡み合う構造」その他の規制
農地転用に造成工事が伴う場合、農地転用の許可だけでは終わらない。
・開発許可(都市計画法):面積・区域によって必要
・盛り土規制法の許可:崖の高さ・面積の要件を満たす場合に必要(2023年5月施行)
・砂防法の許可:砂防指定地内の場合
これらがすべて揃わないと、農地転用も許可されない構造になっている。「農地転用の許可見込みが立っていること」「他法令の許可見込みがあること」が農地転用の一般基準になっているからだ。
たとえば、宅地や駐車場として田んぼを埋め立てて整備するとしよう。
「農地転用の許可が必要」「盛り土規制法の許可が必要」という土地の場合、盛り土規制法の申請書類が整わない状態では農業委員会の審査が進まず、農業委員会が動かないと盛り土規制法の申請が確定しない。
特に盛り土規制法や開発許可では、土地の造成計画や擁壁設置、排水計画も求められるため、進めてみたが費用増加で頓挫するということも肌感としてかなりの割合を占める。
事前に両方の窓口に相談して段取りを決めることが重要だ。

筆者の本音は
農地転用制度は、農地保護という目的において合理的にできている。
原則は農地を守るための法律なのだ。
特に第1種農地・農振農用地が厳しく守られているのだ。
私の元に相談が来ても役所調査を済ませるまで具体的な回答はできない。
「許可がいるか・いらないかが、農業委員会に行くまでわからない」という問題なのだ。
農地区分の地図を市区町村HPで公開している自治体はあるが、農振農用地かどうか、第1〜3種のどれかは、ほとんどの自治体で「窓口に来て確認してください」になる。事前に判断できる情報が少ない。
加えて、農振除外の受付回数が少ない。
年2〜3回しかないため、タイミングを逃すだけで計画が半年単位でずれる。農振農用地だとわかった段階で「次の受付はいつか」を真っ先に確認することをお勧めする。
実際に筆者の元に、建築できると勝手に判断して相談に来られるケースも割合多い。
だが、事前に役所へ伺い調査すると、規制の厳しい地域で全く見込みがないこともよくある。
この場合は違う土地を1から探さなければならない。
農地を転用して家を建てる計画がある場合、土地の購入や設計を始める前に農業委員会へ相談することはもちろんだが、我々農地にも詳しい建築士に相談してほしい。
あまり農地法に詳しくない建築士に依頼して設計をスタートしてしまって、かなり設計が進んだ後に農振農用地や転用できない農地区分だったとわかるケースもあると聞く。
その場合は諦めるか長期戦・費用の大幅増加を覚悟するかしかなくなる。
【著者注】
一級建築士・FP2級。建築行政で確認申請審査・公共工事の設計・工事監理を担当後、独立。建築の実務・法規について発信しています。
