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台風が来る前に、ハザードマップを確認しよう。土地を探すときにも要注意

梅雨の季節になると、毎年のように「記録的な大雨」のニュースが流れる。

線状降水帯、特別警報、◯◯川が氾濫——。
数年前まではそんなに聞かなかった言葉が、今では毎年の風物詩のようになってしまった。

これは気のせいではない。数字を見ると、雨は確実に変わっている。

前回「地盤と基礎」の話を書いた。
今日はその続きで、土地の「水のリスク」の話をしたい。
家を建てる人、土地を買う人に、梅雨入り前のこの時期にこそ知っておいてほしいことだ。


豪雨は、確実に増えている

気象庁が全国のアメダスで観測した、1976年から2025年までの雨のデータがある。これがはっきりと「強い雨が増えている」ことを示している。

1時間に50mm以上の「非常に激しい雨」。最近10年(2016〜2025年)の年間発生回数は平均で約340回。統計開始の最初の10年(1976〜1985年)は約226回だった。約1.5倍に増えている。

さらに強い雨ほど、増え方が大きい。

1時間80mm以上の「猛烈な雨」は約14回→約25回で、約1.8倍。
1時間100mm以上の「滝のように降る雨」に至っては、約2.2回→約4.4回で、ちょうど約2倍だ。

弱い雨より、極端な豪雨ほど増えている。気象庁は、この変化に「地球温暖化が影響している可能性がある」としている。

ちなみに1時間50mmというのは、傘がほとんど役に立たず、車のワイパーを速くしても前が見えにくいレベルの雨だ。それが昔の1.5倍の頻度で降るようになった。


危ないのは、梅雨後期から台風シーズン

水害は一年中均等に起きるわけではない。時期が偏っている。

梅雨末期の6月後半から7月は、梅雨前線が活発になり、特に西日本で線状降水帯による豪雨が起きやすい。
九州に梅雨末期の豪雨が多いのはそのためだ。

8月は台風の発生数が一年で最も多い月。
9月は台風が日本付近を通りやすく、秋雨前線も重なる。

つまり6月から9月、とりわけ7〜9月が水害のハイシーズンだ。

だからこそ、梅雨入り前のこの時期に、自分の住む土地や、これから買おうとしている土地のハザードマップを一度見ておくのがちょうどいい。
「何かあってから」では遅い。

ハザードマップは、一種類じゃない

ここで一つ、誤解されがちなことを書いておく。

「ハザードマップ=洪水の地図」だと思っている人が多い。だが実際は、災害の種類ごとに別々のマップが作られている。

・洪水ハザードマップ:河川の氾濫による浸水。
・内水(ないすい)ハザードマップ:下水道や排水路が処理しきれず、街なかに水があふれる「内水氾濫」。河川から離れていても起こる。
・高潮ハザードマップ:台風などで海面が上がり、沿岸部が浸水する。
・津波ハザードマップ:地震による津波の浸水想定。
・土砂災害ハザードマップ:がけ崩れ・土石流・地すべり。

特に見落とされやすいのが「内水」だ。川がない、川から離れている土地でも、周囲よりわずかに低いだけで水が集まって浸水することがある。洪水マップでは真っ白なのに、内水マップでは色がついている、というのはよくある話だ。

確認は、国土交通省・国土地理院の公式サイトでできる。

「重ねるハザードマップ」は、洪水・土砂災害・高潮・津波などを一枚の地図に重ねて表示できる。全国どこでも、住所を入れるだけだ。さらに詳しく見たいときは「わがまちハザードマップ」から各市区町村の詳細なマップに飛べる。どちらも「ハザードマップポータルサイト」からアクセスできる。

見るときのコツは、区域に入っているかどうかだけでなく、「浸水の深さ」と「避難経路」までセットで見ることだ。床上まで浸かるのか、避難する道が水没しないか。色分けされた深さの情報まで読んでほしい。

また、地方自治体に勤めていた身として経験的に知っていることがある。
ハザードマップの浸水区域というのは土地の高低差や排水能力から導き出されている。
すなわち、浸水区域に含まれる地域は、豪雨で浸かる可能がほぼ確実な地域なのである。(もちろん、浸水区域外でも豪雨で浸かる可能は少なからずある。)
私は、西日本豪雨の岡山県倉敷市真備地区の大規模冠水が非常に記憶に残っている。
あの大規模冠水した地区は、もともと浸水区域であり1階部分がすべて浸かるような被害が予測されていた。
地震と違い、水害は土地の高低差と雨量と排水能力で概ね確定できるため、かなりの精度で浸水区域が把握できるのである。

重ねるハザードマップ:倉敷市真備地区の浸水域とハザードマップはほぼ一致している



 土地を買うときにも、見てほしい

ここが今日、一番伝えたいところだ。

実は2020年に法律が変わって、不動産取引のときに「水害ハザードマップの説明」が義務になった。2020年8月28日からだ。

これにより、不動産会社は契約前の重要事項説明で、その物件が水害ハザードマップ上のどこにあるかを、買主・借主に説明しなければならない。

非常に良い改正だと思う。
だが、これに安心しきってはいけない理由が二つだけある。

一つ目。物件が「浸水想定区域の外」にあっても、説明されるのは「マップ上の位置」であって、区域外だから安全という意味ではない。
マップは想定であって、想定を超える雨は現実に降っている。

二つ目。説明義務があるのは主に「水防法に基づく水害ハザードマップ」だ。内水や小さな河川まですべてを網羅しているとは限らない。
つまり、説明を受けるだけでは少し足りない。

不動産屋さんの説明を鵜呑みにせず、買う前に自分でもポータルサイトで複数のマップを確認してほしい。これは数分でできる。
土地の価格や間取りを何時間も検討するのに、足元の水のリスクを数分確認しないのは、もったいない。


まとめ

前回の地盤の記事でも書いたが、土地を買うとき、人は目に見えるものばかり気にする。日当たり、駅からの距離、間取り、価格。

でも本当に怖いのは、見えないリスクのほうだ。
地盤と、水。この二つは、買ってからではどうにもならない。

低地や、もとは水場だった土地(「沼」「池」「江」「州」といった地名が一つのヒントになる)は、地盤が軟弱なだけでなく、水も集まりやすい。
地盤の弱さと水のリスクは、しばしば同じ場所に重なっている。これは偶然ではなく、土地の成り立ちが同じだからだ。

温暖化で雨は強くなり続けている。10年前、20年前の「ここは大丈夫だった」は、これからの安全を保証しない。

家は、一度建てたら何十年もその土地に建ち続ける。その土地が、これからの豪雨に耐えられる場所かどうか。
間取りを考えるより前に、まず足元の地盤と、水を調べてほしい。

梅雨が来る前の、今がちょうどいいタイミングだ。

【著者注】
一級建築士・FP2級。建築行政で確認申請審査・公共工事の設計・工事監理を担当後、独立。建築の実務・法規について発信しています。

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