見出し画像

(旅行記)台湾でトラベラーズノートとすれ違い

雨の台北も、悪くない。
チェックインを済ませたホテルの部屋で、淹れたての温かなジャスミンティーをすすりながら、窓の外を見下ろしていた。あいにくの梅雨空ではあるけれど、おかげで肌に触れる風はひんやりと心地よい。雨に濡れる中山北路は、街路樹の緑がいつも以上にしっとりと、ハッとするほど鮮やかできれいだった。

雨の中山北路と宿泊先

ここに辿り着くまでの五日間を思えば、この雨音さえ静かな音楽のようだった。出発のわずか五日前、お客様先でのトラブルへの対応が決まり、降って湧いたように台湾行きが決まった。そこからはもう、時間との追いかけっこである。決まっていた予定をこなしつつ、サンプルの回収と打合せに工場へ飛び、気がつけば連日、新幹線の座席に身を預けていた。

そんな強行軍の真ん中に、息子の誕生日という大切な約束が待っていた。週末は、何事もなかったかのような顔をして関西の自宅でケーキを囲み、月曜にはまた、何食わぬ顔で仕事の場へと引き返す。大移動の隙間で慌ただしく書類を整え、ようやく羽田を飛び立った。

羽田からのフライトは、あいにくの梅雨空。台北までの三時間は、ただひたすらに広がる白い雲海を眺める旅となった。あの殺気立った五日間を思えば、この退屈なまでの白の世界こそが、ようやく訪れた束の間の休息だったのかもしれない。

曇天の羽田と雨空の台北松山

目的地は桃園の工業地帯だったが、いくつか台北市内での打合せも必要になり、宿は台北にとることになった。これは有難い、と思った。久しぶりの台北。私には密かな楽しみにしていることがあったのだ。かねてより訪ねてみたかった、トラベラーズノートのパートナーショップが二軒、この街にある。あの怒涛の数日間を乗り切ったのだから、それくらいの寄り道は許されるだろう。

しかし、現実はそう思い通りにはいかない。

空港へ迎えに来てくれた現地スタッフのスマホでマップを覗き込んだとき、私は自分の間の悪さに、ただただ脱力した。二軒とも、まさかの休業日。しかも私の滞在スケジュールと定休日、営業時間が絶妙に噛み合わない。がっくり、と肩が落ちた。

Plain Stationery & Homeware
※画像は公式から借りてきました
TOOLS to LIVEBY
※こちらも公式から画像を頂きました

思えば数ヶ月前、仕事で倉敷を訪れた際もそうだった。楽しみにしていた店は、やはり鍵が閉まり、お客さんの姿もなく静まり返っていたのだ。どうやら私とトラベラーズノートの旅先での相性はあまり良くないらしい。

T.S.L Kurashiki


しかし、いつまでもがっかりしていても仕方がない。ホテルで一息ついてから、少し台北の街を歩き回ってみることにした。
あちこちのショップを巡るほどの時間の余裕はなかったけれど、のんびり歩きながら景色を見る。移動の途中で見つけたスタンプをぽんと押す。私はこういう、目的のない街歩きも好きだし、こうやってノートに自分だけの思い出が残っていく時間も、やはり好きだった。

雨の台北駅
台湾にもたくさんスタンプがあります

その日の夜には、台湾に駐在している同期と合流して食事をした。そこへ、数年来一緒に仕事をしている商社勤めの台湾人の友人も駆けつけてくれた。実は今回のトラブル、まさに彼が売り込んだ先で起きたものだったのだ。お互いに大変な渦中にいるわけだけれど、席を囲めば不思議とそんな気配は見せず、久しぶりの再会に話を弾ませた。彼の案内で台湾のプチプラのお店を覗いてみたり、誠品生活や中山地下書街を歩く。家族へのお土産をあれこれと選ぶ時間も、良い気分転換になった。

新光三越のチャイニーズレストランにて
どれもとても美味しい。
お酒は飲めないけど、このフレッシュビールはとても美味しかった。
喋りながら歩いてたので全然写真なし…


翌日は、本来の目的地である桃園のお客さんのところへ向かった。現地へは、新幹線とタクシーで1時間半ほど。日本国内であれだけ連日揺られた新幹線に、台湾でもまたお世話になる。どこか既視感のあるその空間は、見知らぬ土地のなかで不思議な安心感を与えてくれる。

訪問した会社では、先週のWEB会議で営業に向けて激怒していた社長が、驚くほど笑顔で迎えてくれた。こういう時、技術という職種は得だと思う。面倒なお金や契約の話はある程度営業に任せて、こちらは同じ技術者としてお互いに向き合えるから、関係も構築しやすい。うまく話がまとまると、「今度は一緒にご飯を食べに行こう」とそう言って別れた。

その日は台北に戻り、台湾人の彼と地下街でお土産物を見て、フードコートでご飯を食べて別れた。昨日までの緊張が嘘のように、肩の力が抜けていくのが分かった。

フードコートで魯肉飯と排骨

翌日、すべての用事を終えた帰路は、台北駅からMRTに乗って桃園空港へと向かった。MRTの広い車窓から流れていく、見慣れない外国の街並みを眺めるのは、理屈抜きに楽しい。日本とは少し違う建物の色や、飛び交う看板の文字。それを目で追っているうちに、あっという間に空港に着いてしまった。

台北駅 
MRTの車窓
都会を抜けて、山間部を走り、空港に着く、
車窓の移り変わりが楽しい


桃園空港から飛び立ち、たどり着いたのは関西国際空港。飛行機を降りると、そこには台湾の雨空が嘘のような晴天が広がっていた。そして、台湾よりもずっと暑かった。

出発の五日前から始まった、あの目の回るようなバタバタを思い返す。あんな急な強行軍で行くのはもう嫌だ。けれど、悪いことって驚くほどすぐ忘れるもので、またすぐ行きたいなと思ってしまうのだ。

次は家族とゆっくりパートナーショップ巡りと観光に出掛けようかな。

着陸間際、神戸空港と明石海峡大橋を望む
長い雨が夢だったみたいな気分


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。今回はいつものように詳しく何かを紹介する内容がなかったので、少しゆるめの紀行文として、旅の空気感をそのまま書いてみました。またいつか、パートナーショップのお話を書けたらと思います。
もし気に入っていただけましたら、「スキ」を押してもらえると励みになります。


これまでの記事をまとめています。



いいなと思ったら応援しよう!

もちピロー 記事を読んでいただきありがとうございます!頂いたサポートは、新しい文房具との出会いや、より深く文具の魅力を伝えるための執筆活動(リフィルやインク代など)に大切に活用させて頂きます。 頂いたサポートはしっかりと記事に変換し皆様にお届け致します。応援よろしくお願いいたします。