決算ビート率81%、利益成長25%——今の米国株市場で投資家が本当に押さえるべきこと
2026年第1四半期の決算シーズンが、あらためて市場の予測能力の限界を示した。S&P500構成銘柄のうち市場時価総額の約70%が開示を終えた時点で、利益成長率は前年同期比25.8%に達し、シーズン開始時の予想を実に1,344ベーシスポイント上回った。これは2021年第4四半期以来、最速ペースの利益拡大だ。
「こんな数字を予測していた人を3人挙げられるか? 私には1人も思い浮かばない」——ポッドキャスト「What Are Your Thoughts?」でジョシュ・ブラウンが語ったこの言葉は、今の市場の異常さを端的に表している。
本稿ではこの決算シーズンの概観から、半導体・AI投資の構造変化、バークシャー・ハサウェイの新体制、そして、Uberが直面する市場の評価ギャップまでを整理する。
1. 記録的な決算シーズン:数字が示す現実
1-1. 利益成長の規模感
今シーズンの主要指標をまとめると、その異例さが浮き彫りになる。S&P500の利益成長見通しは25.8%で、既報告分だけで24%を達成している。ビート率は81.7%と、5年平均の77%を大きく上回る。売上高成長率も10.8%と、シーズン開始時比で138ベーシスポイントの上方修正が入っている。11セクターのうち9セクターが増益となっており、特に通信サービスが+54%、テクノロジーが+46.4%、一般消費財が+38.3%と突出している。
1-2. MAG7の「あってはならない象限」
特筆すべきはいわゆる「Magnificent 7」の動向だ。4月下旬の開示前後でMAG7の利益予想は、+57%もの上方修正を受けた。投資メディアで紹介されたサブスタック「The Leverage」の分析によれば、Meta・Apple・Microsoft・Amazonといった企業群は「本来存在し得ない象限」——最大規模かつ最高成長率——に位置している。
「AWSは、今の半分の規模だったときから、ずっと最高の成長率を維持している」という指摘は、このダイナミクスを的確に表している。これは単純な市場独占の問題ではなく、ネットワーク効果という概念が広く理解されるようになった現代ならではの現象でもある。
1-3. 「もう天井だ」という言葉の無意味さ
ブラウンは、6〜7四半期連続で二桁利益成長が続いているにもかかわらず、毎回のように「これ以上良くはならない」という声が出ることを指摘した。「毎回そう言うたびに、市場は笑い飛ばしてきた」という観察は、予測バイアスに対する自戒として投資家が持つべき視点だ。
ただし、次の12カ月に向けてテクノロジーセクターの利益成長率に38%の期待値が積まれている現在、仮にそれを200ベーシスポイント下回れば市場の反応は厳しくなるリスクも現実として存在する。
2. AIは経済全体になった
2-1. 設備投資が消費を上回る
2026年第1四半期のGDP構成を見ると、個人消費の実質成長率は1.6%にとどまった一方、非住宅投資(実質的にはAI・データセンター関連)は、10.4%増と、2023年第2四半期以来の最高を記録した。これは半導体工場の建設ラッシュが盛んだった時期と同水準だ。
「これはもうAI経済だ」という分析は誇張ではなく、GDPの構成比として現れている実態だ。
2-2. 半導体市場の構造変化
SanDisk(旧Western Digital傘下、現在は独立上場)の直近決算では、売上高が前年同期比ほぼ100%増、データセンター向け収益は4億ドルから15億ドルへと急伸した。ChatGPT登場前後での半導体主要4社(Western Digital、Micron、Intel、AMD)の時価総額合計は3,240億ドルから約2兆ドルへと拡大した。
「スイッチが入ったように、一夜にして需要がケタ違いに増えた。これほど急激な変化は千年に一度かもしれない」——この表現は誇張に聞こえるが、3年間という短期間でのスケール変化を見れば、数字としては裏付けられている。
2-3. 半導体株の調整リスク
一方で、こうした急騰には相応のリスクが伴う。「今後12カ月以内にこのグループが40%下落する確率は75%」という見立ても示された。その潜在的なトリガーとして挙げられたのは「大手LLMが次世代モデルでメモリ使用量を20%削減できると発表した場合」というシナリオだ。
DeepSeekのような効率化の突破口が、いつでも出てくる可能性がある。「トリガーがなくても調整は起きる」という指摘もあり、バリュエーションそのものが上昇した際のリスクファクターになりうる。
3. バークシャー・ハサウェイの新章
3-1. グレッグ・アベルの登壇
ウォーレン・バフェット引退後、初めてグレッグ・アベルが議長として株主総会を率いた。出席者は通常より少なかったものの、ロウアーボウルは埋まり、中国からの参加者も目立ったという。
アベルの印象について「Berkshireらしさと全く矛盾しない、一貫したメッセージだった」という評価がある一方、バフェット特有のウィットや格言の類はほぼなく、実務的な内容が中心だったとされる。
3-2. 株価は「バフェット・プレミアム」を剥落中?
直近1年のBerkshire株は、約14%下落した一方、S&P500は約27%上昇している。営業利益は引き続き堅調だが、株価パフォーマンスの乖離が続いている。
「コングロマリットは一般的に割引評価される。バフェットがその割引をある程度相殺していたのかもしれない」という解釈は一つの見方として示されており、確定的な評価ではないが、長期投資家として注目に値する論点だ。
3-3. AIとの関係
Berkshireが直接データセンターを建設するわけではないが、各事業会社レベルでAI活用を進めているとされる。BNSFの利益率が競合に劣後しているという批判に対しても、テクノロジー活用による改善が議論されたという。
4. Uber:恐怖と期待の間に挟まれた株価
4-1. 決算後に株価が下落するパターン
Uberは決算発表のたびに株価が売られる傾向があることで知られる。直近Q4 2025の決算では売上高でビートしたにもかかわらず、その後1週間で4%下落した。決算数字の良し悪しよりも、自動運転(ロボタクシー)への懸念が常に上値を抑えている。
アナリスト目標株価の中央値は約100ドルとされるが、実際の株価は73ドル台で推移している。この乖離は「ウェイモやテスラ・サイバータクシーに市場を奪われるリスク」という懸念を織り込んでいると見られる。
4-2. 「自律型モビリティで最大プレーヤーになる」という逆張りの根拠
ブラウン自身は、Uberの株主として保有継続の立場をとる。その根拠は「ライドシェアの最大コストは車内の人間である」という点にある。自律走行が普及した際、最も多くの自動運転車をプラットフォームに擁しているのがUberであれば、収益構造が大きく改善する可能性がある。
「それが明らかになった瞬間、株価は15倍のバリュエーションに急速にリレーティングされる」という見立てであり、その前に売ってしまうと取り返しのつかない機会損失になるリスクがある、という論理だ。
4-3. 株価リレーティングの速度という問題
「市場の変化とリレーティングのスピードは、テクニカル分析で乗り込む余裕がないほど速い」という指摘は、Uberに限らず現代の投資環境全体への示唆でもある。Amazon株が2週間で40%上昇した事例がその典型だ。「待っていたらもう乗れない」という現実は、長期でのポジション構築を重視する投資戦略の合理性を支持する。
5. ミステリーチャート:ZoomとAnthropicの意外なつながり
今回のエピソードで取り上げられたミステリーチャートの答えは、Zoom Video Communicationsだった。注目すべきは、この株価がZoom自体の業績ではなく、Anthropicへの投資価値によって動いているという点だ。
Zoomは、AI企業Anthropicの初期段階(約5年前)に投資を行っており、その持ち分が現在の企業価値の相当部分を占めるようになっているとされる。直接的なAIプロダクトを持たなくても、戦略的投資を通じてAI成長の恩恵を受けるルートが存在することを示す事例だ。韓国のSK TelecomもAnthropicへの投資で注目されており、「Anthropic株」として機能する上場株が複数存在している。

