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「空間と会話する」という仕事

2020年、コロナ禍で働き方や暮らし方が大きく揺らいだあの頃。
都会で働いていた一人の男性が、ふとしたきっかけで海辺の町に身を移す。
映画『サンセット・サンライズ』は、そんな「暮らしの再選択」から始まる物語です。

物件の間取りは4LDK。
広さも、家賃も、風景も、何もかもが東京とは違う。けれど、それは単なる引っ越しではなく「自分の居場所」を問い直す旅のはじまりのように感じました。

この作品を通じて、空間とは単に“住む箱”ではなく、人と人の関係を育み、心を映すキャンバスであることを改めて実感しました。

「どこで、誰と、どう暮らすか」
その問いが、静かに胸に響いた作品でした。

暮らしの“気配”をつくるということ

映画『サンセット・サンライズ』のなかで、こんな印象的なセリフがありました。

「人が手をかけると、家は喜ぶんですね」

その言葉を聞いたとき、私はかつて民泊清掃に携わっていた頃のことを思い出しました。

民泊物件には、新築のきれいな部屋だけでなく、長いあいだ人が住んでいなかった、時間が止まったような、ひっそりとした空間も多くありました。
人の気配もなく、空気はどこか重たくて、まるで家そのものが眠っているように感じられるのです。

そんな場所に、私たちは清掃に入ります。
正直、最初は少し怖さもありました。
でも私の中では、ただ掃除をするという感覚ではありませんでした

「この家が、もう一度息を吹き返しますように」

そんな気持ちで、丁寧に丁寧に、まるで話しかけるように手をかけていく。
埃を払い、窓を磨き、水回りをピカピカにして、風を通していくうちに、空間が少しずつ表情を変えていくのがわかります。

滞っていた空気が澄み渡り、壁も床も天井も、まるで「ありがとう」と語りかけてくるような感覚すらありました。
そのとき私は「家も、生きているんだな」と感じました。

空間を丁寧に整えていくこと。
それが私の好きな仕事であり、信じている価値でもあります。
この映画は、そんな想いを静かに、でも力強く肯定してくれたような気がしました。

空間に触れるとき、心も整っていく

いま私が取り組んでいるのは、“空間をデザインする”という仕事です。
バーチャルステージングやCGインテリアといった、画面上に空間を創り出す仕事ですが、本質は「その場所で誰かが過ごす日常を、丁寧に描くこと」にあります。

一見、清掃とはまったく違うことをしているように見えるかもしれません。
けれど私の中では、どちらも根っこは同じです。

空間が、人にとっての「やさしい居場所」になってほしい。
それが、私の願いです。

誰かが「ここで暮らしたい」と感じること。
「この場所、なんか好き」と思えること。
それは、空間が人に寄り添い、応えてくれている証。

図面の上に描かれた間取りでも、デジタルの画面に広がる空間でも、
暮らしの気配を丁寧に織り込んでいけば、そこにはたしかな温度が生まれます。

だから私は、リアルでもバーチャルでも、いつも「空間と会話する」ような気持ちで仕事をしています。
人の手が入ることで、家は再び息をしはじめる。
人の想いが宿ることで、空間もまた、生きていく。

それはきっと、私たち自身にも言えること。
「どんな空間に身を置くか」は、
「どう自分と向き合うか」と深く関わっている。

これからも私は、空間に耳をすませ、目に見えない声に丁寧に応えながら、
暮らしの“余白”を整えていきたいと思っています。

あなたが今、身を置いている空間は、ちゃんと呼吸していますか?

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