私が50代で再び会社を作った理由/株式会社teamS (チームエス)高嶋晃
こんにちは、高嶋です。
私たちのチームは、世界中の人々がいつも手にしているスマートフォンをもっとわくわく、便利にしたいという願いから、世界初のスマートフォン専用のセカンドディスプレイを実現するためにSSE(Smart Streaming Engine)というソフトウェアを開発し、国内外のメーカーにこのSSEをライセンスしています。
実はこのteamSは、私にとって2社目の起業で、1社目は株式会社イーブックイニシアティブジャパンという電子書籍の会社でした。
この記事では、私がなぜ2社目となるteamSを作ったのか、今までの経緯と想いを書き留めたいと思います。
シャープの経営企画からイーブック創業へ
私はシャープ株式会社に社会人1年生として入社し、栃木の矢板市に配属になりました。世界に向けてテレビとビデオを作りだしていた工場です。
矢板では、後に代表取締役に就任された辻晴雄さんや町田勝彦さんといったシャープの歴史を築いた大先輩と同じ部屋で働くことができ、ものづくりの貴重な経験をさせてもらいました。
その後、私は、矢板でビデオの商品企画、奈良では、LED・レーザーのデバイス企画、幕張でソフトウエアの企画を担当した後、本社の経営企画室へ異動になったことで、シャープにおける様々な企画部門を経験することができました。

イーブックジャパンを起業するきっかけになったのが、経営企画室で手掛けた「次の事業を考える」プロジェクトでした。ちょうどインターネットが世界に誕生したころです。
私は、週刊ポスト(小学館発行)の元編集長だった鈴木雄介さんと通産省の官僚だった村上世彰さんたちと一緒に「電子書籍」の実証実験に取り組み、私はシャープ社員として実装実験の企画運営を当していました。
この実証実験は、国が新たな産業を生み出すために民間企業とタッグを組んで実施したもので、1998年から2000年までの2年間上場企業中心に155社が参画しました。実験の結果、私には、いくつかの課題はあるものの、電子書籍の新たな市場がはっきりイメージできました。ところが155社のうち事業展開に手を挙げる会社がなかったのです。
そこで、私は鈴木雄介さんと「電子書籍」での起業を決意し、シャープを3月に辞めてから2ヶ月間でおよそ1億円の出資金を集め、2000年5月にイーブックジャパンを設立しました。
課題から生まれた新事業のアイデア
その後イーブックジャパンは、紆余曲折を経て順調に伸び、2011年にマザーズ、2013年には東証一部に上場しましたが、当時私の中では「3つの課題」を感じていました。
電子書籍は”ついで買い”がない
みなさんも経験があると思いますが、書店を歩き回っているうちに本をついつい買ってしまう”ついで買い”。
電子書籍のサイトでは、このような”ついで買い”が起きないのです。
そこで、私はVR(仮想空間の本屋)で本を探す楽しみを実現するためにVRの可能性を試みたいと考えるようになりました。
その後teamSで大手通信キャリアと一緒に日本初の「VRを使ったEコマースの実証実験」につながりました。フォーマットが異なる
2つ目の課題は、電子書籍は、それぞれ提供している会社によってフォーマットが異なります。
読者は、イーブックジャパンが仮になくなると今まで購入した電子書籍が読めなくなります。また、他の電子書店で提供している本を読むためには、新たにサービスを登録したりと面倒なことから、このフォーマットが抱える課題は、市場の成長を阻害していました。
この課題については、ライバルだった大手電子書籍の企業との資本提携で、少なくてもイーブックジャパン読者には安心をしてもらえたのではと思います。ハードウエアの問題
3つ目の課題は、人々が手にするハードウエアです。
2007年にiPhoneが誕生したのち、2010年にはiPadが発売されました。
当時電子書籍は、本を読むのに適した大きな画面のiPadやアンドロイドタブレットで読まれることが多かったのですが、ある時読者の方から「なぜ、スマートフォンがあるのに、スマホと同じようなタブレットを持たないといけないのか?」とお叱りを受けました。
「スマートフォンとタブレットは、ばらせば中身はほぼ同じじゃないか」
大きなスマートフォン(=タブレット)も持たなければいけないのは、理不尽だと仰るのです。
このお叱りこそが、私がteamSを起業したきっかけとなりました。
そこで、「スマートフォンの小さな画面を大きく映し出すディスプレイがあったら、それでいいじゃないか!音楽を聴くときには、イヤホンがあるように」と、私は新たな事業をスタートしたわけです。
会議室ではなく酒場でアイデアを練る
ところが、こうしたディスプレイを作るには、新しい技術を一から開発する必要があるとわかり、当時新橋の小さなワインバーにひとつだけあった4人がけテーブル席で、毎晩のように飲み仲間と「どうしたらこのディスプレイが創れるのか?」と語り合い続けました。
誰もが無理なんじゃないか?とあきらめはじめた頃、天才と呼ばれていた若者が現れて「SSE」の青写真を描いてくれたのです。
こうした人脈というものは、お金とか、特別な関係から生まれるものではなく、あることをガムシャラに考えていると自然と引き寄せる力のようなものでいつのまにか互いに必要な人が集まってしまう、そんな気がします。
そして、引き寄せの力は、私の場合、酒場で最大化されます。
イーブックジャパンもteamSも小さな飲み屋で生まれたのは紛れもない事実です。
見えてる景色は100%現実化してしまう
この青写真を手に、2016年11月3日、自叙伝を読んで大好きになったシャープを創業した早川徳次氏の誕生日にちなんでteamSを設立しました。
設立直後のころは、先に述べたVRなどにも手を伸ばしていましたが、約4年前から本格的な開発が始まりました。
そのきかっけは、現CTOの大野の登場です。
大野を中心にSSEに必要な通信技術と画像処理技術、コンピュータの知識を持つシャープで活躍していたエンジニアたちによるドリームチームが誕生しました。
開発話はまた別の記事で綴りたいと思いますが、このエンジニアチームが生み出したSSEは、世界で発売中の15.6型「RICOH Portable Monitor」や今年は10型「BelfidaONE」にも搭載され、ラインナップを増やしていきたいと考えています。
ベンチャー立ち上げの際は多くの人に心配をおかけし、反対もされました。
イーブックジャパンを立ち上げる時には、まだスマホやタブレットはなく、通信インフラも黎明期で1冊のマンガをダウンロードするのに一昼夜かかったような時代でした。当然、シャープを辞める時には先輩から「成功するはずがない」と真剣に遺留されました。
でも当時、私には、155社の人たちと電子書籍の実証実験をやっていた時に”ぱあーーっ”と未来の景色がはっきり見えました。
スマートフォンやタブレットで電子書籍を楽しんでいる今ではあたりまえの景色でした。この経験を経て、私は見えた景色、考えていることは必ず現実化すると信じるようになりました。
50代でものづくりの原点に戻る
私は、子供の頃からものづくりが大好きで、それでシャープに入社しましたが、ある出来事がきっかけでシャープを辞めてイーブックジャパンを共同創業しました。そのきっかけは、155社が集まって電子書籍の実証実験をしていたときでした。
それまでゲームボーイに夢中になっていた息子が「巨人の星」の漫画を読んだ途端グローブとバットを手に持って野球をするようになったのです。
当時「巨人の星」は、作品が誕生してすでに50年くらい経ってましたが、人を動かす力は全く衰えないことを目の当たりにして、「物語の世界はすごい!コンテンツの世界は面白い!」と衝撃を受けたのです。
こうして私は30代の後半にコンテンツの世界に魅了されイーブックジャパンを創業しましたが、50代にして再び大好きなものづくりの世界に戻り、teamSの仲間と今に至っています。
ものづくりを次世代に伝えること
私の目下の目標は、世界中の人々が手にしているスマートフォンをもっとわくわく、もっと便利にするディスプレイ(SSEディスプレイ)を世界の人々に届けることです。そして、目標を達成したらやりたいことがあります。私たち日本人は、本来ものづくりが好きな民族だと思っています。
江戸末期の文献を読むと、かんざしや陶器など江戸の道筋に並べて売られているごく普通の日用品も黒船でやってくる海外の人たちから見ると芸術品だと思われるくらいクオリティが高かったと伝えられています。
今でもその技術は大切に受け継がれていますが、今では、世界初のものづくりにわくわくしたり、チャレンジする人たちが私がシャープに入ったころに比べると少なくなってきたと感じます。
そこで私がやりたいと考えていることは、日本におけるものづくりの素晴らしさ、楽しさを感じている人たち、特に若いひとたちに、ものづくりのスタートアップを立ち上げることは一つの選択肢であり、そのハードルは決して高くないということを、teamSの仲間と伝えていきたいと思っています。
高嶋晃プロフィール
大阪市出身。大学卒業後シャープに就職し、約16年の勤務期間の大半が矢板工場だった。退職後、2000年5月にイーブックイニシアティブジャパンを共同創業し、常務取締役などを歴任。16年からteamS社長を務める。千葉市在住。

会社概要
株式会社teamS
https://teams.tokyo/
東京都中央区八丁堀三丁目18番6号 PMO八丁堀Ⅲ2F
03-6275-2282
【お問い合わせ】
広報担当 井関
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