人事評価制度に関心はある。でも約8割が「予定なし」中小企業が足踏みする本当の理由とは
人事評価制度は必要だと思っている。でも進まない
先日、人事制度設計サービス「FirstHR」が公表した中小企業経営者向けの調査結果を拝見しました。
その内容を見て、私は多くの顧問先企業の姿が重なりました。
調査によると、正社員10~50名規模の企業のうち、44.6%が「人事評価制度がない」と回答しています。さらに注目すべきは、人事評価制度に関心を持っている経営者が少なくないにもかかわらず、その約8割が「導入時期は未定・予定なし」と回答していることです。
つまり、
「必要性は感じている」
「興味もある」
それでも前に進めない企業が非常に多いということです。
最大の壁は「評価基準の作り方がわからない」
調査では、人事評価制度導入のハードルとして最も多かった回答が、
「自社に合った評価基準の作り方がわからない」
でした。回答割合は31.0%に上っています。
私は社会保険労務士として多くの中小企業の相談を受けていますが、この悩みは本当によく聞きます。
経営者の皆さんは、
「大企業のような制度は作れない」
「何を評価したら良いかわからない」
「評価すると不満が出そう」
「管理職が評価できるだろうか」
「退職者が出るんじゃないか」
という不安を抱えています。
そして気が付くと、
「忙しいからまた今度」
「もう少し会社が大きくなってから」
となり、何年も手を付けられないままになってしまうのです。
人事評価制度の目的を間違えてはいけない
人事評価制度というと、
・賞与を決めるため
・昇給を決めるため
・社員を比較するため
と思われがちです。
もちろんそれも一つの役割ですが、本来の目的は「人を育てること」にあります。
評価制度があることで、「会社は何を大切にしているのか」が社員に伝わります。
例えば、
・お客様への対応
・チームワーク
・改善提案
・報告連絡相談
・挑戦する姿勢
などを評価項目に入れれば、社員は自然とその行動を意識するようになります。
評価制度は単なる査定制度ではなく、会社と社員が対話しながら人材を育成する仕組みなのです。
中小企業こそ「完璧」を目指さない
人事評価制度が進まない理由の一つは、最初から完璧な制度を作ろうとすることです。
しかし、中小企業に必要なのは分厚い制度集ではありません。
まずは、
・会社が大切にしている行動を整理する
・簡単な評価シートを作る
・年に2回面談する
この程度から始めても十分です。
実際に運用してみると、
「この項目は不要だった」
「ここはもっと具体的にしたい」
という改善点が見えてきます。
制度は作って終わりではなく、育てていくものです。
人を活かす経営の第一歩
私は研修や相談の場で、
「評価制度は社員を管理するためではなく、成長を支援するためにある」
とお伝えしています。
人手不足が続く今の時代、採用だけでなく定着や育成が重要です。
頑張っている社員が認められる。
何を期待されているかが分かる。
成長したことを実感できる。
そんな仕組みがある会社は、働く人にとって魅力的な職場になります。
今回の調査結果は、多くの中小企業が評価制度の必要性を感じながらも、一歩を踏み出せずにいる現状を示しています。
だからこそ大切なのは、「完璧な制度を作ること」ではなく、「まず始めてみること」です。
人事評価制度は、人を選別するための仕組みではありません。
社員の成長を支え、会社の理念や価値観を共有し、「人を活かす経営」を実現するための大切な道具です。
もし導入を検討されているのであれば、難しく考えすぎず、自社らしい評価制度づくりの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
