「学んだことの98%は使わない」世界1位のYouTuberが語る学校教育への違和感
筆者紹介
所属/肩書:スプリックス教育財団 研究員 H
学位:博士(理学)
経歴:理系の研究職 → スプリックス教育財団
はじめに
YouTubeの登録者数が4億人を超え、世界で最も影響力のあるクリエイターであるミスタービースト(MrBeast)ことジミー・ドナルドソン。
大規模なチャレンジ動画や多額の寄付で知られる彼ですが、ポッドキャスト『The Good Guys』に出演した際、現代の教育システムに対する強い違和感を爆発させました。
本noteでは、彼が考える「教育のバグ」と、あるべき未来の学習スタイルについて、その発言を深掘りします。
※ 動画が2つあり、教育についてミスタービーストが語ったのは、後半の動画(下動画)になります。前半は動画制作などについての話となっています。興味がある方はそちらもご覧ください。
時代遅れの教え方への非難
ミスタービーストがまず指摘したのは、テクノロジーがこれほど進化した現代において、教え方だけが数十年前から変わっていないという点です。
「なぜ親が教わったのと全く同じ方法で、今の子どもたちが教えられているんだ?」
彼は、教師がただ黒板の前に立ち、教科書を読み上げるだけの授業に疑問を呈しています。その一方で、YouTube上にはMark Rober、Veritasium、Kurzgesagtといった、複雑な科学やトピックをわずか20分で、かつ面白く解説するクリエイターたちが存在します。
彼らの動画を使えば、子どもたちは楽しみながら、かつ効率的に知識を吸収できるはずです。そう信じるミスタービーストにとって、黒板を使った退屈な講義を強いる教え方は、理解しがたい状況なのです。
"悪い"教材が学習意欲を殺している
ミスタービーストは自身の経験を振り返り、「学校は『自分は学習が嫌いだ』と思い込ませる訓練の場になっていた」と語っています。
「学校を卒業した時、僕は『本は退屈で最低なものだ』と思っていた。でも実際は違った。単に学校が僕に与えた本がひどかっただけなんだ」
社会に出てから、彼はスティーブ・ジョブズやイーロン・マスクの伝記、さらには、経営の古典『ザ・ゴール― 企業の究極の目的とは何か』などのオーディオブックに夢中になりました。適切な教材さえあれば、彼はもともと学ぶことが大好きな人間だったのです。
また、彼は自分を「視覚優位の学習者」だと自己分析しています。 「ただ聞くだけ」よりも「視覚的な情報」がある方が、自分にとっては、情報の定着率は3倍も高いと断言しています。個々の学習スタイルを無視して、全員に一律の「読む・聞く」だけのスタイルを強いる現在の教材のあり方に、彼は強い拒否感を示しています。
無意味で長い授業への不満
「時間は人生で最も貴重な資源だ」と考えるミスタービーストにとって、学校の拘束時間の長さ(約8時間)も大きな問題です。
「現代のテクノロジーを使って最適化すれば、5時間でより多くの知識を学べるはずだ。そうすれば、残りの時間を若者らしく自由に使える」
彼は、学校で学んだことの98%は人生で一度も使っていないと振り返ります。興味のないことを、不健康なほど早い時間に起きて、8時間もかけて学ぶ。このプロセスそのものが、子どものポテンシャルを奪っていると考えているのです。
未来への懸念
ミスタービーストにはまだ子どもがいませんが、将来のことを考えると、彼にとって、この問題はさらに切実な問題となっています。
「いつか自分に子どもができた時、どこかの教師がただ本を読み上げるだけの退屈な授業を受けさせなければならないと思うと、ぞっとするよ」
彼が求めるのは、単なる知識の詰め込みではなく、テクノロジーを駆使した没入型・体験型の教育です。誰かが教育を劇的に改革しなければならない、と彼は強く主張しています。
まとめ
ミスタービーストの教育観は、一見すると過激な「学校不要論」のように聞こえるかもしれません。しかし、その本質は「学習は本来もっと楽しいものであるべきだ」という極めてポジティブな信念に基づいています。
世界最高峰のエンターテインメントを作っている彼だからこそ、教育がいかに「つまらなさ」というバグを抱えているかが明確に見えているのでしょう。
しかし、正直なところ私自身は、これまで自分が受けてきた日本の教育に対して、一定の満足感を持っています。そのため、彼の主張の多くに関しては「彼自身の成功体験に基づいたポジショントークではないか」という、どこか懐疑的な意見も持っています。(この私の意見もポジショントークかもしれません。)
すべてをYouTubeなどを使って効率的に置き換えることが、本当に正しい教育の姿なのでしょうか。学びを「苦行」から「エンターテインメント」に変えるという彼の極端な視点は、皆様の目にはどう映りましたか?ぜひ、皆様の意見も聞かせてください。
補足:海外教育ニュースの解説について
スプリックス教育財団のnoteでは、海外の教育ニュースを厳選し、その要点を解説しております。著作権の関係で全訳はできませんが、記事の要点や背景を丁寧に紐解き、日本の教育現場にも役立つヒントをお届けします。
