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異国の地で、私をホッとさせてくれたあの曲 #2 GO CUBS GO (by Steve Goodman)

米加国境を跨いで壮絶な空中戦が繰り広げられたワールドシリーズを、最後の最後に制したのは、やはり天使の街Los ANGELesから遠征して来た神ってるドジャースでした。第三戦の延長18回、6時間39分の激闘の中で、2ホームラン4敬遠を含む9打席連続出塁の神業を見せつけたOHTANI sánの選んだチームは、やはり負けなかった。大谷翔平にフラれたトロント・ブルージェイズは、やはり勝てなかった。正直、カナダにもチャンピオンリングを煌めかせて欲しかったけれど、丸屋根がサックスブルーに輝く宝石のような夜のロジャーセンターは絶景でした。本拠地の大声援に屈せずに、腕がちぎれるまで投げ続けそうな献身ぶりで勝ちを手繰り寄せたMVP YAMAMOTO sánは、あっぱれでした。

ともあれ、ようやく野球の季節が終わりを告げ、寂しいような、私にとっては唯一の宗教のようなベースボールとやらから、やっとこさ解放され、ホッと一息つけるような、どっちつかずの感情が渦巻いています。

2007年の9月は、広島カープ・ドミニカアカデミー出身の出世頭・シカゴカブスの切込隊長、アルフォンゾ・ソリアーノを追っかけて、当時暮らしていたカリフォルニアのサンフェルナンドヴァレーを引き払い、シカゴのダウンタウンに暮らした一か月でした。街外れの小綺麗な安宿から、美しいミッドタウンを抜け、真逆の街外れに在るカブスの本拠地・リグレーフィールドまで片道小一時間ほど掛けて歩いて通った日々でした。

内外野席共に、最上段のお気に入りの席を選んで購入すると、風の街・シカゴらしい涼風が夏の終わりには気持ちよく、下旬の初秋には肌寒く、ナイター観戦時は、カブスキャップの上から更にパーカーのフードを被せて防寒するようなシカゴらしいセプテンバーを体感できました。

ソリアーノの先頭打者ホームランに始まり、元ロッテオリオンズや大洋ホエールズで活躍したレオン・リーの息子、デレク・リーが父親譲りのクラッチヒットで打点を量産したシーズン終盤の九月の戦いは圧巻の強さでした。当時の代打の切り札で、後に阪神タイガースでも大活躍をみせたマット・マートンが天然オレンジヘアを夜風に靡かせ、試合後のパーキングで最後の一人までサインに応じていたジェントルな姿も印象的です。

残念ながら、2007年のカブスはポストシーズン最初のNLDSでスイープされ、あっさり敗れ去りましたが、その後、2016年、名将ジョー・マッドン監督に率いられ、遂に108年振りのワールドチャンピオンに輝きました。
この事実が物語るように、大都市の金満人気球団ながら、さまざまな要因が空回りし続け、熱狂的なカブスファンの不機嫌を煽ったミレニアムな歳月が悶々と流れていました。1945年のワールドシリーズでは、いつも通りにヤギを連れて入場しようとしたファンが、入場を拒否された事に腹を立て「カブスなんて二度とチャンピオンになれん」と言い残して球場を去って呪いを掛けられた、と云うヤギの呪い伝説も有名です。

野球小僧だった私にとっては、子供の時分、外野フェンスに緑の蔦の絡まるリグレーフィールドを週間ベースボール誌上で見て識って以来、いつしか”行かなきゃ死ねない”メジャーリーグの球場になっていました。

大都市の超人気球団ながら、長い低迷期に沈み、加熱気味のファンがフロントと現場の不協和音を野次り続けながらも、歴史と伝統あるツタの絡まる粋なスタジアムを誇り、宗教のように我が身に染みついたシガラミのようなカブス愛を貫く、と云う点では、我が国のあの球団にそっくりです。あきんどの都・大坂で名物球団社長・小津正次郎氏が”小津の魔法使い”と揶揄され、風通しの悪い経営体質と、それに起因する万年弱小振りをファンから野次られ続けた阪神タイガ〜スに例えられることが多い球団です。

“輝く我が名ぞ阪神タイガース♪”の”六甲おろし”同様に、ファンのハートを熱く萌え上がらせる応援歌が、今回ご紹介する”GO CUBS GO”です。カブスが勝利を収めると、すぐさまリグレーフィールドは”GO CUBS GO”!!の大合唱に包まれ、その後、球場の外に場を移してまた、酔いどれカービーどもの熱唱は夜ふけまで続きます。

この曲は、1984年、地元出身のフォークandカントリーミュージシャンで、やはり狂信的カブスファンだったSteve Goodman(1948-1984)によって作詞作曲されました。
奇しくも、そのシーズンの佳境を迎えていた9月20日に、36歳の若さで白血病の為に亡くなってしまいますが、”GO CUBS GO”に背中を押されたカブスは、10月のナショナルリーグチャンピオンシップまで駒を進める奮闘をみせました。

シンプルな応援歌の裏には、負けても負けても染みついた愛着を振り払えずに、今夜の勝ちを願わずにはいられない「結局ヤメられまへんがな」的コテコテなカブス愛が弾けまくっているのです。

私自身も、この曲が流れ始めた途端に、根っからのカープ馬鹿で野球狂の自身を許し、最新カープ坊やグッズに惹かれては球団に要らんお布施ばかり繰り返してはヤメられない止まらないアホな自分を肯定し「まぁイイや...」と溜息混じりに開き直る自我を感じました、笑。

Steve Goodmanのオリジナルは、もちろんのこと、あの108年振りの歓喜の秋に酔いしれるシカゴ市民を前に、球史に選ばれしカブスナインが口ずさむ”GO CUBS GO”もMLBマニア的には実に感慨深いワンシーンでした。


一方で、春木美波さんが投稿してくれたタイガース優勝を祝すnote内に添付された”六甲おろし”も大根おろしのようにあっさり聴けて最高でした。コテコテなおっちゃんの渋い歌声ではなく、女性シンガー達(水樹奈々・山本彩・矢井田瞳)の力強くも颯爽たる歌いっぷりには、カープの赤を一瞬脱ぎ捨て、虎の縦縞を纏って歌詞のごとく”獣王の意気高らかに”甲子園で歌って吠えたくなる雄々しい哺乳類の情動を覚えました、むふふ。

レギュラーシーズン終盤戦のリグレーフィールドのナイトゲームは、厚手のパーカー無しでは凍えるように冷たく、調子こいてビールなんて呑んだ暁には、狭い通路を”excuse me”連呼しながら、トイレに駆け込み、昔ながらの豪快な厠スタイルの便器と悪臭に尻込みしながら2分くらいオシッコが止まらない自業自得の苦難に陥ったものです。

それでも、ソリアーノが打って走って、カブスが勝って、そして今夜も”GO CUBS GO”とカブスマニアの真ん中から声を張り上げて、スカッと恐いもん無しでシカゴの夜道を闊歩してミッドタウンを抜け、また寝床に帰って爽やかな眠りに落ちる。宿が満杯の日には、メガバスやグレイハウンズ、アムトラックに乗って、ミルウォーキー、シンシナティ、セントルイス、そしてデトロイトと野球観戦一人旅に出掛け、雄大な米中西部を思う存分に満喫したひと月は至極でした。

外野フェンスの蔦にボールが絡まるとツーベース

毒されるほど好きで生活の一部になってしまった野球と自分自身を野次りながらも、そんなどうしようもない自分にGOサインを出す。そんな酔っぱらいのような時分の自分さえも太っ腹に受け容れてくれるような”GO CUBS GO”は、みんなに優しい名曲だと思います。

STARLETさんの《私を”笑顔にしてくれる”音楽》最新号も、やはり、夜な夜な疲れて帰宅した私を、ホッとさせ、元気を注入して快眠に誘ってくれた珠玉の一曲でした♪

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