ひとつの音が、私を私へ戻してくれた。ドイツ音楽療法で見つけた心の居場所
「私は本当は何がしたいのだろう」
私は人生の中で、何度もそんな問いを
自分自身に投げかけてきました。
興味を持ったことには挑戦する。
やってみたいと思ったことは学んでみる。
でも、なぜかいつも、
「これが私の本当にやりたいことだ」
という感覚にはたどり着けない。
ずっと、どこか心の奥に、
まだ見つかっていない何かが
あるような気がしていました。
そんな私が、ドイツの音楽療法の体験を通して、
自分でも気づいていなかった
心の奥の声に出会う経験をし、
その経験がきっかけで、
私は心理療法的な音楽療法の奥深さに惹かれ、
さらに学びを深めていくことになりました。
今回は、その忘れられない体験について、
書き綴っていこうと思います。
音楽療法には、心への入り口がある
日本で行われている音楽療法は、
音楽を意図的・計画的に活用しながら、
心身の機能の維持や回復、
生活の質の向上を目指すものが中心です。
例えば、代表的なものとしては、
歌を歌うことによる発声や記憶への刺激、
楽器演奏による身体機能への働きかけ、
音楽を通したコミュニケーションの促進
などがあります。
一方で、ドイツでは音楽療法が
心理療法の一つとして発展してきた背景があり、
「精神分析」と深く結びついたアプローチがあります。
そこでは「音楽を使って何かを改善する」
という視点だけではなく、
音楽を通して、自分の内側にある感情や
無意識の世界に触れていくことを
主体としています。
言葉になる前の感情。
自分でも気づいていなかった思い・・・
音楽という媒体を通して、
自分自身を理解していくという点が
ドイツの心理療法的音楽療法の特徴です。
私が楽器を選べなかった時間
あるグループセッションで、
「好きな楽器を自由に選んで、
好きなように音を出す」
という時間がありました。
目の前には、たくさんの楽器が並んでいました。
私は一つ手に取ってみて、
音を鳴らしてみました。
でも、
「なんだか違う」
また別の楽器を手に取っては、
「これでもない気がする・・・」
そんなことを繰り返していました。
周りの人たちは自然に音を奏でているのに、
私はどこか落ち着かない。
何を選べばいいのか分からない・・・
その時、不思議と
あることに気づいたのです。
それは、今までの自分の状態と
同じだということです。
私は昔から、本当に迷うことが
多い人生でした。
やってみたいことはたくさんある。
興味を持つものもたくさんある。
でも、
「本当に自分が大切にしたいもの」
を見つけるまでに時間がかかり、
自分の気持ちに自信が持てない・・・
ずっとそんな思いを抱えていました。
セッションでの時間は、まさに、
楽器を選べずにいる自分の姿に、
人生で迷い続けていた自分が
重なった瞬間だったのです。
一つの音が、私を導いてくれた
そんな時でした。
ある参加者が鳴らした音が、静かに響きました。
その音は、とても澄んでいて、
透明で、やわらかくて、
どこか心の奥に届くような音でした。
その瞬間、心の中に小さな感覚が生まれました。
「私も、こんな音を鳴らしたい」
頭で考えたわけではありません。
理由もありません。
ただ、心が自然に反応したのです。
私はその音に近い楽器を探しました。
そして、その楽器で、
一音一音を大切にするように音を鳴らしました。
急がずに。
丁寧に。
そして、今、この瞬間の音を味わうように。
すると、さっきまで感じていた
そわそわした感覚が少しずつ消えていきました。
心の中に静かな場所ができたような感覚。
「ここにいていい」
そんな安心感が広がっていきました。
音が教えてくれた、自分の大切なもの
この経験を通して、
私はあることに気づきました。
私はずっと、
「自分が何をしたいのか」
を探していたのかもしれません。
でも本当は、答えを頭で探すのではなく、
自分の内側にある小さな声を聴くことが
必要だったのだと思います。
私にはもともと、
「自分の気持ちに正直でありたい」という
強い思いがあります。
そして、子どもの頃から、
何事にも丁寧に向き合いたいという
思いがありました。
一音一音を大切に鳴らしたいと思った瞬間、
「ああ、これが私が大切にしたいことなんだ」
と、自分の人生の軸を思い出したような気がしました。
他者の存在が、自分を知るきっかけになる
そしてもう一つ、大切なことに気づきました。
この気づきは、
私一人では生まれませんでした。
もし、あの参加者があの音を
鳴らしていなかったら・・・
私は、自分が求めている音に
出会えていなかったかもしれません。
人は一人で自分を知るだけではなく、
誰かとの出会いや関わりの中で、
自分自身を発見していくことがあります。
誰かの存在そのものが、
自分の内側にあるものを照らしてくれる。
この音楽療法の体験で、
「他者とつながる豊かさ」を静かに
感じた瞬間でした。
音楽は、心の奥の声を聴くための扉
この体験を通して、
私はドイツの心理療法的な音楽療法に強く惹かれ、
心理学の視点から、日々、
音楽療法の世界を探求しています。
音楽は、
ただ楽しむものではなく、
自分でも気づいていない感情や、
心の奥にある願いに出会うための扉になる。
もちろん、日本で行われている音楽療法にも、
人を支える大切な役割があります。
その上で私は、
その人の内側にあるものを一緒に見つめていくような、
心理療法としての音楽療法の世界を
これからも探求し続けていきたいと思っています。
あの日、私が探していたものは、
ひとつの楽器ではありませんでした。
探していたのは、
ずっと自分の中にあった、
「私はこうありたい」
という小さな声だったのだと思います。
本日も最後までお読みいただき、
誠にありがとうございました!
