見出し画像

【コラム】年明けに富嶽を撮る|冬の夜に写真を撮るということ

たまに夜間の撮影をするのだが、夜は想像以上に騒がしい。月があるのか。何月に撮るか。海沿いか。干潮か。風はあるか。気温はどうか。自分が撮影する場所の自然環境をしっかり想定しないと、寒暖差により撮影どころではなくなるし、月明かりで撮りたいものが撮りにくくなったりするからだ。

年明け早々の初日の出は、カメラマンたちがあちらこちらにいることからも想像できるようにどこも混むと判断し、少しずらして1月3日の満月と富士山としぶんぎ座流星群を撮影しに、神奈川県の葉山町にある真名瀬海岸に足を運んだ。

この場所に決めた理由は2つある。1つは、海岸よりにある鳥居が富士山と被り、アクセントになること。もうひとつは、サンサーベイヤーという太陽と月の軌道をチェックできるアプリで確認したところ、朝方に富士山と満月が近づいてアクセントになるからだ。

撮影地は海沿いだ。1月の夜の海沿いはなかなか寒い。震えながら撮影することになるのだろうなと念頭に置いていたが、実際に体感すると朝に近づいていくほど寒くなる。裏起毛付きのコンプレッション・登山用のフード付きフーディー・ライトダウンジャケット・さらにフーディージャケットを着てギリギリ耐え忍んだ、という感じである。

レンタカーを予約しようとしたところ、見事に全車両が出払っていたことから借りることができなかったので、電車で向かうことにした。このレンタカーを借りれなかったことが結構大きいポイントとなる。寒さ対策として車で休憩できるかは体力を残すうえでのコツだからだ。

アプリでは富士山と満月が近づくのは翌日の朝方とのこと。前日入りしたぼくは、防寒対策を施し、満月と富士山が近づくその時まで、しばしの間、真冬の海沿いで孤独に星空と向き合うだけである。

とはいえ、極寒の冬の夜に、じっとただ待つだけというのは酷である。ということで、目的の構図になる時間帯までは、富士山としぶんぎ座流星群のコラボ撮影で時間を稼ぐことにした。

ちなみに、流星の撮影は個人的に苦手である。というのも、500枚撮影して1枚も写らないことがざらである世界だからだ。事前に自分の頭で描いたとおりの構図になるタイプの撮影ではないことから、場数と枚数が命運を分ける。

三脚を立てたポイントは、富士山の中央が鳥居と直線で被るラインだ。このラインから三脚を動かさないことに決めた。あとは富士山の直上あたりに流星が通ることを待つだけである。F値を6.3・ISOを1000にして、1シャッター15秒を100枚にセットすると、1セットを撮りおわるまでが30分程度である。これを5セット繰り返した。500枚中、0枚である。

流星の写真はこれがデフォルトだ。その日はしぶんぎ座流星群の極大だった。肉眼だと、1時間で1・2個ほど。一晩で15個くらい流れたかな、という感じである。全天を見渡せばもっと視界に入る確率は上がるだろうが、三脚を固定し構図を決めてる以上、こればかりはどうしようもない。肉眼で富士山の直上に流星が見えたので、起動中のカメラのほうを向いたら撮影を撮り終えた直後のことだった。これが流星撮影のデフォルトである。

葉山・逗子駅を降りたのが22時ころで、コンビニで暖をとりながら目的地の真名瀬海岸まで歩いて向かった。撮影を始めたのが23時過ぎで、目的の富士山と月の構図になるのは朝の7時前。真夜中の海岸沿いで8時間。流星は500枚撮って0枚。明るくなるまで戦績である。

夜中の3時ごろ、寒さと空腹を解消するために、小休止も兼ねて最寄りのコンビニに向かう。ミニストップまで歩いて20分。食事を20分。戻って20分。1時間を稼ぐことに成功した。夜中でも防寒対策して歩けば軽く暑くなる。ポイントは汗をかかないこと。撮影中は動かないので、汗がトリガーとなり底冷えがマシマシになる。こうなるとやばい。寒すぎて死ねる。

撮影場所まで戻ると、三脚が海につかる程度の水位に戻っていた。撮影を始めたころは海が引いていた。月が自分から遠ざかり太陽が近づいてくると海の水位は戻っていった。三脚をたてた場所を海辺より遠ざけることで、いまいちどピントを合わせなおす必要がでてくる。

そんなこんなで明るくなったのは6時過ぎくらいだろうか。空は赤みを帯びる前に青くなっていく。流星の撮影で電池は残り15%をさしていた。ラストスパートと言いたいところだが、月の軌道が想定よりもズレている。富士山を中心とした現状の構図だと月はフレームアウトする。レンズはタムロンの70-300mm。またピントを合わせなおすのも億劫なため、満月はあきらめることにした。

日の光が富士山にあたり始めると、赤みがかるというよりピンク色に染まっていった。太陽光が青の世界に割り込み、青の層に挟まれたピンクの層が空に展開されている。そのピンクの層が富士山に重なったところを写真に記録して、今回の撮影は体力の限界とともに切り上げた。

いいなと思ったら応援しよう!