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一つの「うっかりミス」で #ISS が危機。ロシアの #バイコヌール宇宙基地 の発射台の事故で、ロシアからISSまでロケットがしばらく飛べないかもってどういうこと?

えっ? うっかりミスかも?

(銀河のウワサ話・ブログ版)

2025年11月27日。ロシアの宇宙船「ソユーズMS-28」が、コスモノート(ロシアの宇宙飛行士)2名とNASA宇宙飛行士のクリス・ウィリアムズを乗せてバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。宇宙船は無事に国際宇宙ステーション(ISS)へ到着し、誰が見ても「成功したミッション」のように見えました。

しかし。その同じ瞬間、地上ではISSの未来を揺るがす、とんでもない事故が起きていました。

今回のブログでは、この発射台事故の何が危ないのか、ISSにどう影響するのか、そしてロシア・アメリカ・国際パートナーの関係がどう揺れるのかを、一般の方向けにわかりやすくお話します。たとえばロシアの宇宙機などでは、かなり古いシンプルなシステムを使っていたからこそ、「壊れにくい」とも言われていましたが、今回の事故で変わってくることがあるかもしれません。




1. 事故が起きたのはISSの生命線発射台

事故の舞台は、カザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地の「三一地区六番発射台(Site 31/6)」です。

ここはロシアが
・有人宇宙船「ソユーズ」
・無人補給船「プログレス」
をISSへ向けて打ち上げる、ただ1つの発射台です。

旧ソ連が使っていた「ガガーリン発射台(Site 1)」はすでに運用停止で博物館になっています。つまり、ロシアのISS関連ミッションは、このSite 31/6一本で支えられています。

ここがダメージを受けることは、ロシアがISSに関わる能力が丸ごと停止することを意味します。


2. 落下したのは20トンの移動式プラットフォーム

事故の原因として伝えられているのは、20トン級の移動式サービスプラットフォームが、排気路に落下したことです。

⬆️スライド式サービスプラットフォーム(2021年に撮影)

このプラットフォームは、
・ロケットの下部に作業員がアクセスするための台
・打ち上げ前には横にスライドさせて退避させるしくみ
です。

ところが今回は、このプラットフォームが固定されていなかったとみられています。その結果、ロケット点火の強烈な推力で、プラットフォームがそのまま排気路に落下。すごい重さなので、付近の構造物が大きく壊れたと報告されています。

専門家は次のように言っています。「これは設計の問題ではなく、固定しなかったという基本作業のミスだ」、と。もしそうであれば、宇宙開発の最先端技術は、結局のところ最後は人間の地道な作業で安全が決まることになるということ。老朽化からの故障とも考えられるとの意見もありますが、公式発表を待つばかりです。

Intuitive MachinesのNOVA-Cという月面着陸ミッションで着陸前に高さを測るためのレーザー測距装置が動かなかった原因について、CEOが「人の目を守るための安全スイッチを打ち上げ前にオンから解除し忘れていた。いわば 「Remove before Flight」タグを外し忘れたようなものだよ」と説明していましたよね。このスイッチがオフのままだったせいで、レーザー測距装置が使えず、NASAの別の実験機器のデータを急きょ流用して着陸制御を行うことになった、ということがありました。

人間なので間違うこともあるんですよね。誰でもうっかりミスをした経験はあると思います。

そのようなミスが少なくなるように、たとえば、SpaceXのCrew Dragonは完全自動運転(オートパイロット)を前提とし、ドッキングや軌道制御も自律的に行う宇宙船で、標準ミッションでは打ち上げからISSドッキング、分離、再突入・着水まで自動で実行されます。Falcon 9ロケット側も自律飛行安全システム(AFSS)などにより、飛行継続・中止や帰還制御を自動で判断・実行する設計で、人間がリアルタイムに操縦桿を握っているわけではありません。Crew Dragonを完全自動運転だが、乗員は常時モニターし、異常時には介入できる「バックアップ・オペレーター」として訓練しています。

Credit:NASA

3. もっと深刻なのはISSの姿勢制御の危機

物資補給が止まるのも大きな問題ですが、それ以上に危険なのがISSの姿勢制御(向きを安定させる仕組み)です。ISSは低軌道にあるため、上層大気による抗力と地球の重力場の非一様性の影響で、何もしないと徐々に軌道高度が下がっていきます。これを補うために、プログレスやロシア区画スラスター(最近はCygnusやDragonなども一部で)で軌道を押し上げる「リブースト」を定期的に実施しています。

Credit: NASA

さらに、ISSの姿勢を安定させるために必要なのが、「アンローディング」と呼ばれる作業です。

●アンローディングとは?

ISSのアメリカ区画には「CMG(Control Moment Gyro)」という大型コマのような装置があり、基本的な姿勢制御を担当します。これは、コマを高速で回すことでISSの向きを保つ仕組みです。

しかし、ISSは
・太陽光の押す力
・大気のわずかな抵抗(高度400kmでもわずかに空気があるんですね!)
などで、少しずつ向きがズレていきます。

補足:太陽の光が押す力って何?
太陽の光には「光の粒(光子)」が含まれています。光子には重さはありませんが、当たるととても小さな押す力を発生させます。これを 太陽光圧 と言います。地球のような場所では空気があるため、この力はほとんど感じません。でも、空気のない宇宙空間では、物に当たった光子の力がそのまま伝わります。とても弱い力ですが、巨大なISSのように広い表面がある物体には、少しずつ姿勢を変える影響が出ます。ISSは太陽電池パドル(Solar Array)が大きく、そこに太陽光が当たると軽く押されます。これは、風が紙を少し押すようなイメージです。目に見えないけれど、ISSの姿勢がゆっくりズレていきます。このズレを補正するために、ISSのCMGが働きます。しかしCMGだけでは限界が来るので、ロシア区画のスラスター(噴射装置)でリセット(アンローディング)する必要があります。

CMGはそのズレを直そうとして働き続けます。すると、CMGの中に「力のかたより(角運動量)」がどんどん溜まっていきます(YouTube動画参照)。これは、手でコマを回しながら無理な位置に持っていくと、手が疲れて限界に近づくのと似ています。この限界を「飽和(サチュレーション)」と言います。CMGが飽和すると、ISSの向きをうまく変えられなくなります。そこで必要なのが「アンローディング」というリセット作業です。これは、ISSの外側から少しだけ力を加えて、CMGの中に溜まった角運動量を外に逃がす作業です。

この外側からの力を出すのは、ISSのロシア区画のスラスター(小さなロケットのような噴射装置)です。Zvezda(ズヴェズダ)モジュールのスラスターや、ドッキング中のプログレス補給船のエンジンが使われます。これが動くことでISS全体に軽く回転がかかり、CMGの負担がゼロに戻ります。モジュールの外部(非与圧の組立区画)には、ステーション全体の姿勢を制御するための16基の小型スラスターが設置されています。さらに、ステーションの高度を上げるために、2基の大型メインエンジン(S5.79スラスター)も備えています。これらのスラスターは、非対称ジメチルヒドラジン(UDMH)を燃料とし、四酸化二窒素を酸化剤とする推進剤を使用していて、他の補給船とは違う燃料です。推進剤は4つのタンクに貯蔵されており、合計で約860 kgを搭載可能です。

●誰がアンローディングを担当しているのか

2025年時点の構造はこうなっています。

CMG(アメリカ)=姿勢維持の主担当
ロシア区画のスラスター=CMGのリセット担当(必須)
ロシア区画のスラスターの推進剤の補給=プログレスだけ(2008年から2014年にかけて推進剤の補給は、ESAが対応していた時期がありましたが、アルテミス計画で使用するオライオン宇宙船のサービスモジュールのプロジェクトを優先するため、欧州補給機(ATV)は2015年に運用終了となりました。)
他国からの推進剤転送=現在は不可 (推進剤の種類が違う!)

ロシア区画へのラインが物理的につながっていないため、ロシア区画に燃料を「移す」ことができません。つまり、アンローディングで使う燃料は100%ロシア依存という状態です。このため、プログレスの打ち上げが長期停止すると、推進剤が枯渇し、ISSは姿勢制御が安全に維持できなくなるという構造的な弱点があります。プログレスの打ち上げが止まる= 長期的に推進剤が枯渇していき、最終的にはISSの姿勢制御が崩れていき、維持不能になり得るということです。

これは物資不足よりはるかに深刻です。ただ、ロシア区画には今すぐ尽きるわけではない量の推進剤が貯蔵されており、Dragon用の「リブースト・キット」を2025年秋から試験中で、軌道維持の一部をDragonで担う計画をしています。なので、「ISSが数週間でどうにもならない」という状況ではなく、時間を稼ぎつつ代替手段をどこまで拡充できるか、というフェーズです。


4. ロスコスモスは「すぐ修復にとりかかる」と発表。 しかし現実は…

ロスコスモスは「近く修復する」と言っていますが、専門家の推定は厳しいです。

・最短で6カ月
・長ければ2〜3年
・状況次第ではそれ以上
という予測も出ています。

ロシアは現在、宇宙ではなく軍事方面への投資を優先しているため、宇宙インフラの修復が後回しになりやすい構造があります。この事故は、ロシアがISSにどれほど本気で関わる意思があるのかが試されそうです。


5. NASAやSpaceXはどうする?

Crew Dragonで宇宙飛行士を運ぶことはできますし、Cargo Dragonで物資も運べます。しかし、プログレスの姿勢制御機能を完全に代替する術はありません。運用上の主担当はロシア側・プログレスであり、Cygnusなど他船の能力は限定的です。NASAはCargo Dragonで部分的な再ブースト(軌道上げ)を試していますが、ロシア側の推進剤補給の代わりにはなりません。ISSは多国間で役割が固定されているため、一国の機能が止まると、他がすぐに肩代わりすることは難しいのです。

そのため、プログレスが長期間飛ばなくなると、「姿勢制御・軌道維持に必要な推進剤が補給されない→やがてロシア側推進剤が尽きる→姿勢制御やリブーストができなくなる」という構図がみえてきます。

ISSでは通常、米国区画のCMGで姿勢を保ちつつ、ロシア区画(RS)のスラスターやドッキング中のプログレスのエンジンで「CMGアンローディング(デサチュレーション)」を行う運用が前提になっています。

ロシアサービスモジュール(Zvezda)などISS本体に付いているRSスラスター自体もアンローディングには使えるので、「プログレス以外」としてはまずこれが直接の代替ですが、その推進剤の元はやはりプログレス補給に依存します。

CygnusはNG-17やNG-20ミッションでISSリブーストを実施した実績があり、所定の姿勢にしてCygnusのスラスターを長時間噴射することで、軌道上げと同時に一定のモーメント調整を行うことは理論上可能です。 ただし実際の運用では、その前後の姿勢保持・安定化にロシアセグメントのスラスターが併用されており、「完全にロシア抜きで独立したアンローディング手段」とは位置づけられていません。


6. 今回の事故が示したもの

・ISSの運用は、派手な宇宙技術だけでなく、地上の一つの発射台に依存している
・「うっかりミス」が全体の運用を揺るがす
・国際協力の強みと弱みが同時に露呈した
という点です。

Credit: JAXA/NASA

ただし、これをきっかけに民間宇宙ステーション(Axiom Station、Vast、Starlabなど)への移行が早まる可能性もあり、宇宙開発の次のステージが近づいています。今回の発射台事故は、ISSという巨大な研究施設がいかに繊細な仕組みで成り立っているかを示しました。

宇宙は壮大でも、システムは意外なほど人間の基本作業に依存しています。
そのギャップこそが、宇宙開発の面白さであり、難しさなのかもしれません。


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参考:

https://www.nasaspaceflight.com/2025/11/site-31-accident/

 




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