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北海道発、日本の宇宙輸送を変える挑戦者「インターステラテクノロジズ」の今

北海道大樹町。十勝平野の南端にあるこの小さな町から、日本の宇宙ビジネスに新しい風を吹き込もうとしている企業があります。インターステラテクノロジズ(IST)です。

民間単独で初めて宇宙に到達した実績

ISTは2019年5月4日、観測ロケット「MOMO」3号機で日本の民間企業単独として初めて、高度100kmの宇宙空間到達を達成しました。その後も2021年7月には1ヶ月の間に2機連続で宇宙空間到達に成功し、民間企業としての技術力と信頼性を証明してきました。

MOMOは全長10.1m、直径50cmの観測ロケットで、高度100kmまで約20〜30kgのペイロードを運ぶことができます。これまでに計3回、宇宙空間到達を達成しています。

次世代ロケット「ZERO」が描く未来

そして今、ISTが本格的に開発を進めているのが小型人工衛星打上げロケット「ZERO」です。ZEROは全長約32m、地球低軌道に最大800kgの衛星を打ち上げる能力を持つロケットです。日本の基幹ロケットH3が全長約63mで打上げコストが約50億円であるのに対し、ZEROは量産時に8億円以下を目指しており、より手軽な宇宙輸送サービスの実現を目指しています。

初号機に世界から衛星が集結

2025年11月、ISTは初号機の顧客として新たに日米の3衛星が決定したことを発表しました。

東京大学宇宙資源連携研究機構(CSRI)、米国の私立学校Fulton Science Academy、米国企業Lothan Spaceの3者が加わり、これで初号機には計7機の衛星が搭載されることになりました。既に発表されていた顧客と合わせて、計8企業・団体・大学との打上げ契約を締結しています。

通常、ロケットの初号機は技術実証が主目的となることが多く、民間顧客の衛星を獲得することは世界的にも珍しい事例です。これは、参画企業や大学がISTの技術力を信頼し、自社の衛星を託す価値があると判断したことを示しています。

環境に配慮した燃料選択

ZEROの特徴の一つは、燃料に液化バイオメタン(LBM)を採用している点です。これは地元の家畜ふん尿由来のバイオガスから製造されたもので、民間ロケットとして世界で初めての試みです。

地域の資源を活用しながら、環境に配慮した宇宙輸送を実現するという、ISTならではのアプローチといえます。

トヨタとの提携で量産体制へ

2025年1月、ISTは大きな転換点を迎えました。トヨタ自動車の子会社であるウーブン・バイ・トヨタとの資本業務提携を発表し、リード投資家として約70億円の出資を受けることが決定したのです。

この提携により、トヨタ生産方式など自動車業界のノウハウをロケット製造に取り入れ、低コスト・高品質・量産可能なものづくりへの転換を目指します。宇宙業界はこれまで研究者が中心のアカデミックな業界でしたが、自動車メーカーの参入により、数倍のスピードアップが期待されています。


量産化に向けた拠点拡大

ISTは本社のある北海道大樹町を中心に、東京支社、室蘭技術研究所、そして福島支社の4拠点で開発を進めています。

2024年11月には、福島県南相馬市に東北支社の建設を開始しました。この新拠点では、ZEROの電気・機構系部品を中心とした生産機能を集約・強化し、アビオニクス(電子機器)統合試験などの各種試験機能も包括する予定です。2025年12月の稼働開始を目指しています。

発射場は北海道スペースポート

ZEROの打上げは、北海道大樹町の北海道スペースポート(HOSPO)のLaunch Complex-1から行われる予定です。東と南に打上げ可能なこの発射場は、世界的に見てもロケット打上げに適した立地条件を備えています。

ISTはHOSPOの優先事業者に選定されており、2026年度の初号機打上げを目指して開発を進めています。

日本の小型ロケット市場の課題

世界的に小型衛星の打上げ需要は急増しており、2014年には221機だった小型衛星の打上げ数は、2023年には2860機にまで増加しています。しかし、日本国内では小型ロケットの供給が不足しており、多くの日本企業や研究機関が海外のサービスに頼らざるを得ない状況が続いています。

ISTのZEROは、この課題を解決する重要な選択肢として期待されています。国内から手軽に、低コストで衛星を打ち上げられる環境が整えば、日本の宇宙ビジネスはさらに活性化することでしょう。

垂直統合モデルで宇宙インフラを構築

ISTはロケット事業だけでなく、人工衛星開発事業「Our Stars」も手がけており、国内初のロケット×人工衛星の垂直統合サービスを目指しています。特に通信分野への参入を計画しており、ロケット会社が衛星事業を手がけることでシナジーを最大化できると考えています。

まとめ:「誰もが宇宙に手が届く未来」へ

ISTが掲げるビジョンは「誰もが宇宙に手が届く未来」です。北海道の小さな町から始まった挑戦は、トヨタとの提携、国内外からの顧客獲得、生産拠点の拡大と、着実に次のステージへと進んでいます。

2026年度に予定されているZERO初号機の打上げは、日本の小型ロケット市場にとって大きな一歩となるでしょう。宇宙が「特別な場所」から「ビジネスの舞台」へと変わりゆく今、ISTの挑戦から目が離せません。


参考記事

〇ロケットZERO、初号機の顧客として新たに日米の3衛星が決定(2025年11月20日)

〇小型人工衛星打上げロケット「ZERO」を開発する「インターステラテクノロジズ」が「ウーブン・バイ・トヨタ」と資本業務提携(2025年1月7日)

〇インターステラ、トヨタ流で8億円ロケット開発へ 車部品の供給網も活用(2025年3月5日)

〇IST、ZEROロケット量産化に向け東北支社開設へ。電気・機構系部品の生産・試験拠点(2024年11月26日)

〇ZERO | インターステラテクノロジズ株式会社

〇MOMO | インターステラテクノロジズ株式会社


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