空に近い職場 | ポトシ (ボリビア)
標高4,000メートルを超える街、ポトシ。その空の青さは、これまで見たどんな空とも違っていた。上にいくほど青が深くなり、天頂では、まるで空の層の先に、宇宙が透けて見えるようだった。
ポトシは、かつて世界最大の銀の産地だったという。街の背後には巨大な鉱山がそびえていて、いまも多くの人がその中で働いている。観光客向けの鉱山見学ツアーがあると聞き、参加してみることにした。
入山前、鉱夫たちへのお土産を買うようにガイドから促された。ダイナマイト、コカの葉、煙草。どれも彼らの仕事を支える必需品だという。僕らツアー客はそれぞれにお土産を買い、いよいよ坑道へ入る。
中は当たり前だが暗かった。ところどころに裸電球がぶら下がっているものの、奥へ進むほど光は弱まり、作業場では鉱夫たちが小さなランプの明かりだけを頼りに、ノミと金槌を使って岩を砕いていた。顔中すすで真っ黒になった鉱夫たちの頬が膨らんでいるのは、口いっぱいにコカの葉を詰めているからだ。疲労や空腹を和らげる効果があるという。
誰かがガイドに作業効率を尋ねると、「2時間で80センチくらい」との答えが返ってきた。電気ドリルを使えば5分で終わる距離だが、人の手で掘った方が安上がりなのだそうだ。
坑道の途中には、エル・ティオと呼ばれる土の像があった。鉱夫たちが供物を捧げる地下の神様のような存在だという。彼らが地下の神を必要とするのは、おそらく地上の神にはこの場所が見えていないと感じているからだろう。
宇宙に手が届きそうなほど空が近いこの街で、空からの光を浴びることなく、暗闇と粉塵の中で人々が働いている。そのギャップに、どうしても疑問を感じずにはいられなかった。
こんなにも過酷な仕事がなければ手に入らないほど、金属って本当に人間に必要なものなのだろうか。
坑道を出ると、強い日差しと冷たい風が一気に肌を打った。
光の中でまず目に入ったのは、眼前に広がる家々のトタン屋根、金属製の看板、そして太陽の光を反射する車のボディ。気づけば自分の身の回りにも金属が溢れていた。ファスナー、時計、キーホルダー。
なんだか情けない気持ちになって、煙草に火をつけようとしたとき、ライターの先端の金属が光り、ただ、手の中のライターがやけに重く感じた。
Potosí, Bolivia, 1998

