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轢かれたたぬき。

峠の向こうの町に住む
友達の家からの帰り道でした。

峠のトンネルに差し掛かる手前、
小さな橋がいくつも連続しているところ。

そのうちの一本の橋の上。
ちょうどセンターラインのあたりに、
一匹のたぬきが倒れていました。

もう、死んでいました。

あのまま、
車がビュンビュン行き交う道路の真ん中にいるのは、
かわいそうだと思いました。

それに。

何人もの人が、
「見たくないものを見てしまった」と思うたびに、
あの子が傷ついてしまうような気がしました。

車を止められる場所ではなかったので、
とっさに橋の名前を覚え、
だいぶ走った後、峠を下りてから、
道路緊急ダイヤルに電話をかけました。

電話がつながった瞬間、
安堵したせいか、
せっかくここまで復唱しながら覚えていた橋の名前が、
頭の中から消えてしまいました。

電話口のおじさんは、いくつも橋の名前を挙げてくれましたが、
どれも違うような気がして…

いちど電話を切って、
地図で調べて、また電話をかけ直しました。

なんとか場所を伝え終わって、
電話を切る前に言いました。

「できれば、どうか明るいうちに、
 助けに行ってあげてください。あっ、死んでますけど。」

なに言ってんだか、です。

もう死んでいるのに、
「助けてあげて」って。

私にとっては「助けてあげる」だったけれど、
それじゃ、おじさんがまだ生きてると誤解しちゃうかも
って、思ったんです。

それに本当は、
動物を助けるためではなく、
道路の安全のための電話番号です。

でも。

電話の向こうのおじさんは、
私が思わず口にした「助けてあげてください」という言葉を、
否定しませんでした。

「わかりました。
 わざわざ、電話して、知らせてくれて、
 ありがとうございました。」

切れ切れの、その言葉は、
たぶん、用意された決まり文句ではありませんでした。

あの子のことを、
「道路の障害物」ではなく、
おじさんの心の中では一匹のたぬきとして、
受け止めてもらえた気がしました。

あの子は死んでしまったけれど、
少しだけ救われた気がしました。


* * * * *

このnoteは、
森の中の小さな家で猫のベルくんと暮らす私が、
アニマルコミュニケーションを学び、
動物たちと向き合っていく過程を
日々の気づきや暮らしの様子とともに書き留めた記録です。

はじめのお話はこちら。
町内の動物たちのちょっと不思議なお手伝いを思い立った日

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