「女子中学生のポッドキャスト、聴いてみたい?~『全校生徒ラジオ』~」【YA94】
『全校生徒ラジオ』有沢佳映 著 (講談社) 2025年9月24日 読了
アマプラで自分の好きな曲をいろいろと検索したり聴いたりしていますが、最近少しずつ聞き始めたのがポッドキャストです。今頃と思われるでしょうか…?
ホント、たまにですけど安住紳一郎さんのとかジェーン・スーさんとか楽しくて軽く聴けるものを、気が向いた時に聴いたりしています。
―ポッドキャスト(英語: podcast)とは、インターネットを通じて音声データを配信するソーシャルメディアのことである。
オーディオやビデオのウェブログとして位置付けられるインターネットラジオの一種である。―
果たしてどのくらいのリスナーが現在存在するのかはわかりませんが、早くから聴いている人たちもおられるようで、いったい皆さんどうやって好きなポッドキャストの存在を知るのだろう?と思っていたのですが、今回読んだYA本でだいたいのことがわかってきました。

とある山に近い田舎の中学校に通う女子生徒4人。
中2のなつみ・中1のモモ・中3のれなどん・同じく中3の橘がその学校の全校生徒なのです。過疎地域に住む中学生なのですが、彼女たちがやり始めたのがポッドキャスト「全校生徒ラジオ」なのでした。
(なるほど何故この名前なのか不思議だったのですが、そのまんまの名前でしたね。このポッドキャストの存在を教えてくれたのは彼女たちのALTの先生でした。私などはてっきりこの名前だと、学校の放送部の話かしら?と思い込んでしまいましたが…)
始めたきっかけは、前の学校で不登校だったなつみがこの村の小学校に小学生のころ転校してきて、みんなが温かく迎えてくれ絆が深まったことと、次の年にはれなどんと橘が卒業して高校生になって離れてしまうので、何か思い出を残したいと夏休み期間に始めたのでした。
(この4人の名前はもちろんラジオネームで本名ではありません。彼女らは身バレしないように、とにかく気を付けてしゃべっていますし、ポッドキャストのいいところは録音して、何か都合の悪い事をしゃべってしまった時は削除などの編集ができる点で、なつみが責任を持って編集しています。)
田舎ですので過疎とは言いながら、4人の自宅はそれぞれ意外と離れたところにありますから、集まれるときになつみの家に集合して録音しています。
女子中学生の何でもない雑談を録音してネットにのせるだけなのですが、もちろん初めは思い出にするためだけですし、少しでも他の人が聞いておもしろいと思ってくれればいいくらいの気持ちでした。
しかしこれが、彼女たちの思いも寄らずしだいにリスナーが増えていくのです。
そしてちょっとしたうねりのような小さいウェーブが起こるのです。
おたよりやDM、ツィッターなどでファンが増え、さまざまな人に軽い感動を与えていきます。
そしてそのファンの中に一人、特別影響を受けてしまった人物がいました。
彼女たちの「全校生徒ラジオ」を聴いて、わざわざ文字起こしをしてすべてを記録している男子中学生がいて、この本の体裁も恐らく彼が残している記録のままだと思われます。(そういう設定…その記録を私たち読者が読んでいるという…)
ワードで打ち込んでいるから、勿論この本も横書きでページは左から進んでいくというパターンにはじめはやや慣れませんでしたが。(一時期流行った、ケータイ小説みたいで読みにくいなと思ってしまう老年少女😅)
なぜ彼が「全校生徒ラジオ」を聴いて嵌っていったのでしょうか?
初めは何でもない、大好きな映画「補修の魔法時間」(略して「ほしゅまほ」)のことを検索していた時にこのポッドキャストが引っかかったのでした。(これはもちろんこの本の中だけの仮想の映画のようです。)
小説からコミックになり、次に描かれた大人気の映画版アニメというよくある設定ですが、4人が第2回配信のテーマにこの映画の感想を語り合うというこのポッドキャストに彼が気づいて聴いてしまったのが最初。
なんとなく面白かったので試しに第1回目も聴いてみたら意外と面白くて、それならば続くだろう第3回配信も聴いてみたいと思ってしまいます。
自分で自分のことを「女子だけの雑談を聴いているオレって気持ち悪い」と言いながらも、もしや彼女たちが突然辞めてしまったり削除してしまわないか不安になってつい文字起こしを思いついたのでした。
比較的早い段階で彼女たちに気づき、このポッドキャストが配信されるたびに彼女たちのおしゃべりを文字起こしして、その後に自分の感想まで書いているのです。
彼もまたあまり深刻な感じではないけれど、学校に対する自分の理想と正解の思いを胸に抱きながら違和感を感じなんとなく軽い不登校となり、日々自分の部屋の中に閉じこもり(…といっても家族とはちゃんと会話もするし、不機嫌だったりするわけではないのですが)、ネットが唯一の遊びとなっていました。
そんな、時間をたっぷり持て余している彼がついに夢中になっていくのが「全校生徒ラジオ」の文字起こしだったのです。
「全校生徒ラジオ」で「ほしゅまほ」の感想を言い合う回は、まさかの原作者もそのことに気づきツィッターで彼女たちのポッドキャストのことを取り上げてくれ、リンク先も貼ってくれたおかげでリスナーが増えていきます。
彼女たちに実際におたよりを最初に出してくれたある女の子は、4人がおたよりが届いたことを大喜びしてちゃんと読み上げてくれたおかげで最古参のファンという存在として他のファンの間で知れ渡ることになり、文字起こしの彼はちょっとしたジェラシーも感じてしまうのですが、そのことも彼は「やっぱりオレ、気持ち悪い」と自虐してしまいます。
そのうち比較的深刻な内容のおたよりを出した女の子のことを読み上げた4人は「ああでもない、こうやったらどうか?」などとアドバイスをする配信を行うのですが、その影響を受けてツィッター上でもファンのみんなで慰め合ったり解決策を出し合ったりと、「全校生徒ラジオ」をめぐる周囲の雰囲気はとても暖かく、誹謗中傷もまったくなくいい感じの空気を纏っているので、リスナーの誰もその空気感を汚したくないという流れが自然と生まれ、とても素敵な空間になっているのでした。
夏休みも後半、彼女たちの何気ない言葉が引っかかり、文字起こしの彼はやや不安になりかけます。
その不安を持つ人は他のリスナーにもいてツィッターでも話題にしますが、果たしてそれは…?

ほんのたまにしかネット検索をしない私でしたので、なるほどそこにこのようなポッドキャストの存在を知るきっかけがあるのだなと理解しました。
ネットの世界ってやはりみんなが繋がっていて、この本のようにもしもある特別な(有名な)人物が一つの存在を取り上げてくれると瞬く間にそれに対する認知はもうあっという間にどこまででも広がっていくということになります。
それがこの本ではアニメ映画の原作者という存在に、その崇拝者とも呼ぶべき人たちが集まってきて原作者や原作に関することならどんな小さなことでも構わない事柄を知り得て二次関心を呼び起こします。
「全校生徒ラジオ」の4人はまさかの展開に驚きつつも、素人なりに注意する点はしっかり踏まえて配信を続け、ラジオの中のコンテンツよろしく“おたより”を寄せてくれたらいいなとか、なんでもいいからお悩み相談なども送ってださいとかラジオパーソナリティのようなことを喜んで行いますが、彼女たちのおしゃべりの内容や雰囲気も手伝ってあまり悪い流れになっていかないのは素敵だなとは思いましたが、現実問題としてはどうなのでしょう?
下手するとちょっとのことで、何でもないようなことで事態はあらぬ方向に行ってしまいがちな今のSNSの状況は恐ろしいです。
この本のように優しい温かいリスナーばかりで楽しめる居場所ができあがればいいなとは思いますが、ひとりひとりの気持ちの持ちようや行動次第でしょうか。
正しいネチケットに気を付けている人たちばかりならどんなに居心地がいいでしょう。(今では学校でもネットリテラシーを履修させるところが増えてきたようです。)
そこがこの本の言いたいことのひとつなのかなとも思いました。
この文字起こしの彼も聞き続けていくうちに、普通の4人の女子中学生たちのおしゃべりの魅力にどっぷりつかり、いい方向へと影響を受け、いずれ自分もポッドキャストを仲の良かった友人とやってみようかという思いを持つようになるのです。引きこもりの自分だけど、こうやって何か世間とつながっていたいという思いをさりげなく叶えてくれるものとして、将来に光を見つける彼でした。
この「全校生徒ラジオ」は架空のものですが、4人の彼女たちは配信の中で現実の実際存在するいくつかのポッドキャストをお気に入りで聴いているという設定で紹介もしていますよ。
いずれ私も聴いてみようかなと思っています。
なかなかに新しい読み物だなと感じました。
(ゆるい感じがいい雰囲気ですよ♪)
